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~Event story~
バレンタインは大騒動⑤(グレイ)
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ーーー王国騎士団 本部(訓練所)ーーー
エヴァンデールに会いに行った後、俺は騎士団の訓練所へ赴いていた。
「…ん、居た……」
騎士団の訓練所はコロシアムのような外見で、天井はぶち抜かれているため、チラホラと見え始めた星が綺麗に見えている。
グレイは最近、この訓練所のベンチがお気に入りなようで…仕事終わりの自主訓練をし終わった後に、近くのベンチで星を見ている。
「グレイ、また天体観測か??」
「ん…レオか、会いに来てくれたのか?」
俺が声をかけると、ニタリと意地悪気に笑って視線を俺に合わせた。
「別に…ちょっと本部に仕事しに来ただけだ…」
「…ふぅん……お前、今日非番なのにか?」
……しまった…と言うか…何で今俺嘘ついたんだ…?
「あ、明日の仕事をチェックしに来たんだよ!」
「ほぉ~…お前がそんなに仕事熱心だったとはな~…」
完全に嘘だと分かっているにも関わらず、それを踏まえた上でからかっている…
「…意地悪すんな」
「はいはい」
俺が少し不機嫌そうにそう言うと、悪かったと笑いながら煽るのを止めてくれた。
「レオ、お前もそんなところで立ってねぇで座れよ」
「おう…じゃあ遠慮無く」
そう言って俺はグレイから見て右側のベンチへと腰を下ろした。
「…レオ」
「ん?」
「お前はこっち…」
「……ぇ?…うぉ!」
グイッと勢い良く腕を引かれてグレイに抱き込まれる体勢になった。
膝の上でお姫さま抱っこの様な格好にされ、思わず固まってしまう。
「…っ…な…!」
「ははっ…そんな照れるなって、誰も居ねぇよ」
「き、急になに恥ずかしいことしてんだ!俺は女じゃねぇっての!」
耳元まで真っ赤に逆上せ上がった俺は、このまま大人しく膝の上に留まるまいと抵抗してみる。
「こら、暴れんなって…良い子だから」
「っ…子供扱いすんなよ…」
「子供扱いじゃねぇよ、大切だから丁寧に扱ってるんだよ」
「っ!!…」
相変わらずグレイには敵わない…整った顔立ちもそうだが、こんな風に恥ずかしげも無くキザなセリフを吐いてくる所は何時になっても慣れない…
「…レオ、うなじまで真っ赤だな」
「っ…触るな…くすぐってぇだろ…」
クスクスと笑いながら俺で遊ぶグレイは随分と楽しそうで、弄られている俺はと言うと…最早これ以上抵抗する気力も無く、口では止めろと言うものの…大人しくグレイのなすがままになっている。
「……グレイ…」
「ん?…嫌だったか??」
グレイは何だかんだ俺が本当に嫌がれば止めてくれる…こう言う線引きがハッキリしてくれる所も、グレイの良いところだ…
「そうじゃねぇけど…」
「…なんだ?どうした…?」
グレイの手がフワリと俺の頭を撫でてくれる…何時ものキリッとした声音じゃなく、ほんのり甘い声…何時も気遣って甘やかしてくれるときの声音だ……
「…今日、バレンタインだろ?……だから…ほら…チョコ渡そうと思って…お前には世話になったし」
「わざわざ持ってきてくれたのか?」
「……ついでに決まってるだろバカ…」
「ついで…ねぇ…」
「んだよ…」
「別に?」
…気遣っていた表情が、一転して意地悪な表情になっている…
俺は少しだけ怪訝な顔をしつつ、ポケットからチョコレートを取り出してグレイに渡した。
「ん、有り難うなレオ…大切に食うよ」
「別にそこまで気遣わなくて良いっての、お前のことだ…どうせ他からも大量に貰ったんだろ?」
「まぁな…けど、流石に毎年1人で食い切れなくてな…何時も大半は部下に配っちまうんだよ」
「心込めて作ってる奴も居るだろうに…ちゃんと食ってやったらどうだ?」
「食ってるよ、出来る限りは…な?」
可哀相に…本気で渡してる女の子がいたたまれないな…
「それに…目を見て渡して来る奴は1人も居ないからな……」
「……そっか…」
…グレイは容姿が整っている…赤い瞳も、黒い艶やかな髪も格好いい……でも、人に目を合わせて貰えることは少ない…その理由は、グレイの顔にある…
……スリッ…
「…火傷…まだ痛んだりするのか…?」
「……たまに疼くことはあるかな…」
俺はそっとグレイの右半分を覆う火傷跡を撫でた……美しい容姿にえぐり付いた火傷跡……周りの奴が言うには…痛々しくて気持ち悪く…怖い…
「……お前は…こんなに綺麗で格好いいのにな…」
「…レオにそんなことを言って貰えるとはな、これなら…この火傷跡もまんざら悪くない」
グレイは…火傷跡を撫でて居る俺の手を包み込むように自分の手を重ねてきた。
「…でも…この跡が無けりゃ…他の奴らもお前を避けたりしないだろ……」
「…良いんだよ、お前がそんなこと気にしなくても……それに、レオだけがそう言ってくれてるだけで…充分だ」
そう言うグレイは随分と満足そうで…嬉しそうだ…
「…グレイ、そろそろ俺屋敷に戻るよ」
「そっか…じゃあ送って行ってやるよ」
「…サンキュ」
俺は、グレイに夜道を送って貰い屋敷へと帰った。
「じゃあなグレイ、お休み」
「あぁ、お休み…レオ」
俺達はイグナシオに見つかったらややこしくなりそうだなと思い、門の前で密やかに別れを交わした……
グレイと別れた俺は屋敷の自室へと向かった…何が待ち構えているとも知らずに……
ーーガチャッ…ーー
「あ!お兄ちゃん!!」
「?…薫??何でここに……」
「だって、バレンタインだよ??だから……私からも!はい!!」
「……ぇ…」
「大好きだよ!お兄ちゃん!」
……笑顔な妹…手には黒々とした謎のアメーバ………
「……?食べないの…お兄ちゃん…」
「…く……食うよ……」
ションボリとした薫を見て…腹を決める……
「……い、頂きます……」
ーーーハグッ…ーーー
「…どうかな?お兄ちゃん」
「…………っ…」
ーーードサッ…ーーー
「……お兄ちゃん…??………お兄ちゃーーん!!?」
ーーーENDーーー
エヴァンデールに会いに行った後、俺は騎士団の訓練所へ赴いていた。
「…ん、居た……」
騎士団の訓練所はコロシアムのような外見で、天井はぶち抜かれているため、チラホラと見え始めた星が綺麗に見えている。
グレイは最近、この訓練所のベンチがお気に入りなようで…仕事終わりの自主訓練をし終わった後に、近くのベンチで星を見ている。
「グレイ、また天体観測か??」
「ん…レオか、会いに来てくれたのか?」
俺が声をかけると、ニタリと意地悪気に笑って視線を俺に合わせた。
「別に…ちょっと本部に仕事しに来ただけだ…」
「…ふぅん……お前、今日非番なのにか?」
……しまった…と言うか…何で今俺嘘ついたんだ…?
「あ、明日の仕事をチェックしに来たんだよ!」
「ほぉ~…お前がそんなに仕事熱心だったとはな~…」
完全に嘘だと分かっているにも関わらず、それを踏まえた上でからかっている…
「…意地悪すんな」
「はいはい」
俺が少し不機嫌そうにそう言うと、悪かったと笑いながら煽るのを止めてくれた。
「レオ、お前もそんなところで立ってねぇで座れよ」
「おう…じゃあ遠慮無く」
そう言って俺はグレイから見て右側のベンチへと腰を下ろした。
「…レオ」
「ん?」
「お前はこっち…」
「……ぇ?…うぉ!」
グイッと勢い良く腕を引かれてグレイに抱き込まれる体勢になった。
膝の上でお姫さま抱っこの様な格好にされ、思わず固まってしまう。
「…っ…な…!」
「ははっ…そんな照れるなって、誰も居ねぇよ」
「き、急になに恥ずかしいことしてんだ!俺は女じゃねぇっての!」
耳元まで真っ赤に逆上せ上がった俺は、このまま大人しく膝の上に留まるまいと抵抗してみる。
「こら、暴れんなって…良い子だから」
「っ…子供扱いすんなよ…」
「子供扱いじゃねぇよ、大切だから丁寧に扱ってるんだよ」
「っ!!…」
相変わらずグレイには敵わない…整った顔立ちもそうだが、こんな風に恥ずかしげも無くキザなセリフを吐いてくる所は何時になっても慣れない…
「…レオ、うなじまで真っ赤だな」
「っ…触るな…くすぐってぇだろ…」
クスクスと笑いながら俺で遊ぶグレイは随分と楽しそうで、弄られている俺はと言うと…最早これ以上抵抗する気力も無く、口では止めろと言うものの…大人しくグレイのなすがままになっている。
「……グレイ…」
「ん?…嫌だったか??」
グレイは何だかんだ俺が本当に嫌がれば止めてくれる…こう言う線引きがハッキリしてくれる所も、グレイの良いところだ…
「そうじゃねぇけど…」
「…なんだ?どうした…?」
グレイの手がフワリと俺の頭を撫でてくれる…何時ものキリッとした声音じゃなく、ほんのり甘い声…何時も気遣って甘やかしてくれるときの声音だ……
「…今日、バレンタインだろ?……だから…ほら…チョコ渡そうと思って…お前には世話になったし」
「わざわざ持ってきてくれたのか?」
「……ついでに決まってるだろバカ…」
「ついで…ねぇ…」
「んだよ…」
「別に?」
…気遣っていた表情が、一転して意地悪な表情になっている…
俺は少しだけ怪訝な顔をしつつ、ポケットからチョコレートを取り出してグレイに渡した。
「ん、有り難うなレオ…大切に食うよ」
「別にそこまで気遣わなくて良いっての、お前のことだ…どうせ他からも大量に貰ったんだろ?」
「まぁな…けど、流石に毎年1人で食い切れなくてな…何時も大半は部下に配っちまうんだよ」
「心込めて作ってる奴も居るだろうに…ちゃんと食ってやったらどうだ?」
「食ってるよ、出来る限りは…な?」
可哀相に…本気で渡してる女の子がいたたまれないな…
「それに…目を見て渡して来る奴は1人も居ないからな……」
「……そっか…」
…グレイは容姿が整っている…赤い瞳も、黒い艶やかな髪も格好いい……でも、人に目を合わせて貰えることは少ない…その理由は、グレイの顔にある…
……スリッ…
「…火傷…まだ痛んだりするのか…?」
「……たまに疼くことはあるかな…」
俺はそっとグレイの右半分を覆う火傷跡を撫でた……美しい容姿にえぐり付いた火傷跡……周りの奴が言うには…痛々しくて気持ち悪く…怖い…
「……お前は…こんなに綺麗で格好いいのにな…」
「…レオにそんなことを言って貰えるとはな、これなら…この火傷跡もまんざら悪くない」
グレイは…火傷跡を撫でて居る俺の手を包み込むように自分の手を重ねてきた。
「…でも…この跡が無けりゃ…他の奴らもお前を避けたりしないだろ……」
「…良いんだよ、お前がそんなこと気にしなくても……それに、レオだけがそう言ってくれてるだけで…充分だ」
そう言うグレイは随分と満足そうで…嬉しそうだ…
「…グレイ、そろそろ俺屋敷に戻るよ」
「そっか…じゃあ送って行ってやるよ」
「…サンキュ」
俺は、グレイに夜道を送って貰い屋敷へと帰った。
「じゃあなグレイ、お休み」
「あぁ、お休み…レオ」
俺達はイグナシオに見つかったらややこしくなりそうだなと思い、門の前で密やかに別れを交わした……
グレイと別れた俺は屋敷の自室へと向かった…何が待ち構えているとも知らずに……
ーーガチャッ…ーー
「あ!お兄ちゃん!!」
「?…薫??何でここに……」
「だって、バレンタインだよ??だから……私からも!はい!!」
「……ぇ…」
「大好きだよ!お兄ちゃん!」
……笑顔な妹…手には黒々とした謎のアメーバ………
「……?食べないの…お兄ちゃん…」
「…く……食うよ……」
ションボリとした薫を見て…腹を決める……
「……い、頂きます……」
ーーーハグッ…ーーー
「…どうかな?お兄ちゃん」
「…………っ…」
ーーードサッ…ーーー
「……お兄ちゃん…??………お兄ちゃーーん!!?」
ーーーENDーーー
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