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第6章 魔道実技試験

第三次試験 (野望)

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第二次試験が終わった後、俺達は数日間授業も無くのんびりと過ごした。

「ぁ~…好きなだけ昼寝出来るって天国だな」
「…余り怠けて居ると、最後の試験に影響が出てしまいますよ…?」

学校の中庭で寝転がりながらそう話す俺に、隣に居たイグナシオは直ぐさま言葉のナイフを投げてくる……

「そんなに暇なら、兄さんの所へ行ったらどうだ??」
「グレイの所か?」

アルグレッド殿下が、《暇人》と断定された俺にそう言い放つ…
まぁ確かに、第一次試験の時は随分助けて貰った…けど、グレイはちょくちょく俺の屋敷に忍び込んでるんだよな…だから会いに行く必要は無いんだけど……言える訳ねぇよな…

「…ぁ~……そうだな…今度会いに行って来る…」

曖昧な返事をする俺に、イグナシオと殿下の怪しむ視線が集まる…

(…返答しくじったかな……視線が痛い…)

俺がどう言い訳しようかと考えていると、後ろから甘い声が聞こえた。

「ひゃん!」

後ろを振り向くと、地面にベッタリと転んでいるフェリシア・エマローズが目に入る……

…すっかり忘れてたな……前世であのゲームをやってなきゃ、今頃ヒロインの名前なんて忘れてたところだ…

「……これはフェリシア嬢、足下に気を付けて下さい…ご令嬢が顔に傷でも作っては大変ですよ?」

そう言ってアルグレッド殿下がフェリシア・エマローズに手を貸す……セリフの前にチョットため息が聞こえた気がするけど…気にしないでおこう…

「!ぁ、はい!有り難う御座います!」

フェリシア・エマローズ嬢は殿下に手を貸して貰いながら立ち上がると、転んだのが嘘のように王子へと笑顔を向けた。

「………いえ、当然のことをしたまでです…俺達はこれから行くところが有るので、失礼させて頂きますね?」

……珍しい…女性相手に殿下があんな態度を取るなんて………顔にはっきり、面倒くさいって書いてある…

『では…』と別れを告げる殿下に対して、『そんな冷たいこと言わないでくださいよ~』と食い下がるフェリシア・エマローズ……
殿下に助け起こされておいて宣言……何というかまぁ………その………

「……図々しい女だ…」

こらイグナシオ、ダメだろそんなホントのこと言ったら!

「………フェリシア嬢がここに居られると言うことは…無事に第一次試験まで合格なさったのですよね…?第二次試験は受けられないのですか…?」

(…とどのつまり、早くどっか行けって言ってるんだよな……今の…)

「!……い、いえ…実はまだ…第一次試験を受けてないの……」
「……受けて居られないのですか??」

?何でだ??ゲーム内ではヒロインはかなりの秀才で、この試験イベントでは殿下に次いで2位になるはずだよな……??

「……じ、実は…「フェリシア・エマローズさん!どこに行っていたんですか?」

フェリシア・エマローズ嬢が話そうとした瞬間、フェリシア嬢の後ろから誰かが走ってくるのが見えた。

「?シルフィア・エヴァンデール先生……??」

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