お前らの相手は俺じゃない!

くろさき

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第6章 魔道実技試験

第二次試験(素質)

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……さて、どうしたものか…
俺は嬉しそうに部屋の中を飛び回るドラゴンの赤ちゃんに目をやると、腕組みをしながら何か打開策を考えてみる。

(…そもそも、俺の荷物を背負っていたのはグレイだ…けどドラゴンと遭遇してからの帰り道だと思うと、まだ動揺していてもおかしくない……)

問題は、この赤ちゃんが原因であのドラゴンが攻めてこないかだ……

「それにしても、大切な赤ちゃんを見てないってどうなんだ?…攫われて帰って来た直後だぞ…」
「キュイキュイッ!」

ふと赤ちゃんの方へ目をやると、何やらキラキラ光る石で遊んでいる…

――…ジジッ……や…めぬか……ジジジッ……―――

…ん?今何か……

――ジ…ジッ……っやめぬか!話しが出来ぬわ!!――

電波が合ったラジオのように、声が突如としてクリアになる…その声は、洞窟で聞いたドラゴンのそれだった…

――…ふむ、ようやく話せる……担当直入に話そう…実は我が子が其方を気に入ってしまってな、暫く共に居たいらしい……迷惑なようなら連れ戻すが、どうだ?…――

「…どうだと言われても……こっちは別に…」

俺はドラゴンへと答えを返すと、話しやすいように赤ちゃんから石を取り上げる。

「キュウッ!!」
「ん、ごめんな?直ぐ返すから…」

――そうか、有り難う…重ね重ね済まないな……我が子を頼んだぞ…―――

…暫くすると声はもう聞こえなくなった、俺はその石を赤ちゃんに返してやると…イグナシオや親父達にどう説明しようかと、また考えを巡らせ始めた。

「キュゥ~!」

石を帰して貰えた赤ちゃんはまたその石で遊び始めたようで、見ていて微笑ましい。

「…先ずはイグナシオに話すか……」

ボソリと俺が呟くのと殆ど同時に、ドアがノックされる…
   ―――コンコン―――

「どうぞ」
「…失礼致します、レオンハルト様」

部屋に入ってきたのはイグナシオだった、なんてタイミング………

「イグナシオ、お前も1次試験終わったのか?」
「はい、少々時間はかかりましたが…問題は御座いません…レオンハルト様がご無事で良かったです、あの騎士団長と旅に出た……と聞いたものでしたから………」
「そうか、それは良かっ「キュゥウッ!!」
「…………レオンハルト様…そちらは魔道具…で御座いますか??随分と精巧なドラゴンですね…」

…成る程、初めから見てるのに驚いたり突っ込まなかったのはそう思ってたからか……残念ながら本物なんだな…これが……

「いや、本物のドラゴンだ」
「キュイッ!」
「……っ!!?」
「ま、その話しは後でするとして…何か用があったんだろ?」
「……はい」

動揺をしていたが、流石一流の執事…直ぐに平静を取り戻した。

「レオンハルト様へ、第二次試験についての知らせが届いております」

そう言って懐から綺麗に装飾された便せんを取り出す……

………第二次試験…次は無茶な奴じゃないと良いけどな…
便せんを見つめながら、密かに嫌な予感を感じ取る………
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