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第二話 心星を回る
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○
「えらく参ってるな。ご苦労」
「うるせー。永遠に暇なやつが話しかけんな」
図書館の机に伏せて完全にダウンする私。傍らからやにわに降ってきたテノールに気力ゼロの返事をする。声の主なんて確かめるまでもない。いつもと同じ、極力気配を殺して私の前に現れる面倒くさい癖。
「仕事か? 職務中に共有スペースの机に伏すくらい疲れてるなら、休みを貰えばいいものを」
「もうあがった。しんどいから」
「……そうか。しかし君ほどの人間がこうなるとは。理由が知りたいところではあるが」
4人掛けの机の冷たい天板につっ伏した姿勢から、ずきずきと脈打つ頭部だけを起こして声のした方角を睨む。予想通り銀髪白服の立ち姿が目に入ってきて、あーともうーとも知れない声が漏れてしまった。こめかみを押さえつつ、冷やかしなら帰れと唸る。
すると、彼は何故か向かいの席の椅子を引き優雅に着席した。右手で頬杖をつきながら、いつもの蒼い眼差しでなんでもないように私を観察してくる。
「なによ。見んなよ」
「君が草臥れてるのは中々珍しいから、見もするだろう」
「最低、外道。人を労る心とかないの?」
「はは、言ってろ」
「うわぁもう腹立つ。ただでさえ疲れてんのに。あんたなんかと喧嘩する元気もうねぇよ」
「なんだ、挑発しがいが無いな」
「ちょっと黙ってろ、頭いたい……」
沈黙。束の間のそれを、彼の声が打ち破る。
「なんでもいい、愚痴をぶつけてみろ。気が楽になるんじゃないか?」
「へっ。あんたに対する文句なら尽きないけどね」
「じゃあそれでも構わない」
歌うように答えた声にあっけにとられる。でも、いざ本人に愚痴を浴びせるのも気乗りしない。焦げ茶色からグラデーションした紫の髪先を少しいじっていると、正面の彼が二、三度瞬きをした。
私は椅子を引いて行儀よく座り直すけど、目を丸くした幼い表情の彼を見るのが嫌で、ガン! と鈍い音を鳴らして再び机と対面した。もともとの頭痛に額を打った痛みがプラスされる。痛いと呻く。
「何してるんだ?」
「……黙ってろ」
「大丈夫か、とんでもない音がしたが」
「うるさ~い」
少し待って、やっと額の痛みが引いてきた。痕が残らなければいいけど。
私は腕で作った壁に頭をうずめ、真っ暗な視界に波打つモザイクを睨み付けながら、ぼそぼそとくぐもった声で語り出す。
「つい一時間くらい前よ。フード被った赤髪の女の人がね、図書館の入り口でめちゃくちゃ暴れて……ナイフで何人か怪我させられたのよ」
「それは……大事だったな」
「知らなかったの?」
「丁度でくわさなかった」
「そう。あれ、旅の人だわ。月鏡の外から来た人は図書館有料っての知らなくてキレちゃったみたい。私は遠くで見てたんだけど、やっぱり騒然として。あっちの方で少量だけど血が飛び散ってるの見て……」
「血は苦手か?」
短い問いに意外に思いながらも、うんと肯定する。なんだからしくない声色だと思った。妙な疑念が渦巻く。次いで、ぽつりと沸き上がった疑問が口を衝いて出た。
「なんでそう思ったの?」
「……直感だ。君は頭痛がどうとか言うが、顔色が悪い事の方が余程目についたよ。僕も血は好きじゃないし、普通の人間ならそうだろう」
「ふーん。でね、話戻るんだけど」
「ああ」
「まだ捕まってないの、そいつ。びっくりするくらい逃げ足早くて、誰も追い付けなかった」
「物騒だな」
「……早く捕まればいいのに」
ああ、他人の心配くらいしてほしいな。実際大丈夫じゃないけど、『大丈夫だったか?』って。
私の感情なんて毛頭わからないであろう彼が、一層抑えた声で問いかけてくる。
「……何か言っていなかったか、そいつは」
「はあ、死神がどうってさ。なんか恨んでるみたいだったけど、言動は支離滅裂に聞こえたわ……」
彼が口を閉ざした。どうしたのだろう。疼く頭で不審に思ったら、また言葉が耳に入ってくる。
「相当参ったろう、君も。そんな惨事を目の当たりにして」
「ほんとよ。思い出したら吐きそう」
「……話をさせなかったほうが、賢明だったかな」
「その通り……」
はあ~~~と、肺の空気全部を吐き出す。
もう疲れてしまった。今日は帰って休もうかな。倒れ込むのに近い形で机につっ伏していたけど、図書館にはもう居たくない。気分転換に遠くへ出掛けようか。どうすればいいだろう?
少し考える。
「……元気出るごはんとか、食べさせてくんない?」
何言ってるんだ、自分は。私のことなんてちっとも心配していない、この男とまた食事なんて。
あ、そうか。ダメ元か、私。
こんな雑に誘ったところで、はね付けられるのが落ちだろう。両目を閉じた。変わらない暗闇が眼前を塗り潰している。ふうと息をついた、数拍後。
「いいぞ」
え、
なんて?
「は!? どういう心変わりよ!」
思わず顔を上げる。明るくなった視界に目がついて行けなくて、少し眩む。頭の横部分がこれでもかというほど痛むので、私はそれを抑えようと机に肘をついたまま両手をこめかみに添える。
彼は頬杖の姿勢のまま微動だにしていなかったが、顔は分かりやすく不服を訴えていた。
「従ってやってるのになんだその言い種は。それで君が満足なら……」
「わけわかんねぇ、二つ返事とか」
「君の提案に乗っただけだ。今日は予定が無いからな」
「万年そうでしょ、あんたって」
「そう思い込める限り、君は幸せだよ」
「……じゃあ、なんで」
彼は瞼を閉じ、さあなと首を傾げる。あんたの事だろ。白々しい。
「こないだのアレなんだったの。『これきり』とか念押ししてたくせに」
「そんなに嫌なら止しておくか?」
そう喋りながら、彼はゆったりとした動きで起立した。彼の顔と上半身の大部分が視界の外に出るけど、体を起こす元気はなくて諦める。
と、椅子の背凭れと机の端がぶつかる小さな音。それを耳にした私の中に、彼はまた逃げようとしてるんじゃないかという考えが降りてきて。私はのぼせあがる。
待てよと声を枯らし、正面――彼の方へ最大限手を伸ばす。彼は席を離れて一瞬立ち去るそぶりを見せたかと思うと、机の横を通って私のすぐ側へ歩み寄って来た。私は不可解な行動をする白い服を視線で追う。
なに、と文句を言おうとしてほんの少しだけ顎を上げると。
頭を撫でられた。
!?
な……
「何したお前!?」
「君の考えてる通りだ。心をなだめるのに効果的だと、どこかの本で……」
「あああその手をどけろォ!!」
ザ・悲鳴。
頭痛のことはすっかり忘れて頭をぶんぶん振り、両手をあちらこちらにやって精一杯彼の手を払って。ガタンという大きな音と共に、椅子から立ち上がる。
頭の中は絶賛混乱中。もう目の前は見えていない。周りの音さえも。訳がわからない、処理しきれない。だって頭痛どころじゃなくて、頭に血がのぼって、心臓はいつもの倍以上に仕事をしている。
なにこれ、なにこれ。私は怒ってる? びっくりしてる? それとも……
なりふり構わず飛び出す。彼本人がどうしてるかなんて、もう考えてられなかった。
言葉にならない声を上げながら、走って、走って、階段を駆け降りて。件の入り口さえあっという間に通り過ぎて。ひたすら足を回して、広がる湖の際で急ブレーキ。
ぜえ、はあ、と肩で息をして、なんとか呼吸を整えようとする。体の熱さに火傷しそうだ。首筋を汗が流れ落ちる。異常に速い拍動の音、耳の奥を行ったり来たりする呼吸音。視界がうるみ、滲んでいる。
ああ馬鹿。
この凪いだ水面に自分の顔を映したくないのに。なんで、なんでここまで来たんだ。景色でも見て落ち着こうとしたのか、何なのか……もうわからない。ぐちゃぐちゃだ。
何かに胸が締め付けられているその事実に、ようやく気付いたところで。
「うわ!! 嫌い! だいっきらい!!」
そう叫んでいた。
続
「えらく参ってるな。ご苦労」
「うるせー。永遠に暇なやつが話しかけんな」
図書館の机に伏せて完全にダウンする私。傍らからやにわに降ってきたテノールに気力ゼロの返事をする。声の主なんて確かめるまでもない。いつもと同じ、極力気配を殺して私の前に現れる面倒くさい癖。
「仕事か? 職務中に共有スペースの机に伏すくらい疲れてるなら、休みを貰えばいいものを」
「もうあがった。しんどいから」
「……そうか。しかし君ほどの人間がこうなるとは。理由が知りたいところではあるが」
4人掛けの机の冷たい天板につっ伏した姿勢から、ずきずきと脈打つ頭部だけを起こして声のした方角を睨む。予想通り銀髪白服の立ち姿が目に入ってきて、あーともうーとも知れない声が漏れてしまった。こめかみを押さえつつ、冷やかしなら帰れと唸る。
すると、彼は何故か向かいの席の椅子を引き優雅に着席した。右手で頬杖をつきながら、いつもの蒼い眼差しでなんでもないように私を観察してくる。
「なによ。見んなよ」
「君が草臥れてるのは中々珍しいから、見もするだろう」
「最低、外道。人を労る心とかないの?」
「はは、言ってろ」
「うわぁもう腹立つ。ただでさえ疲れてんのに。あんたなんかと喧嘩する元気もうねぇよ」
「なんだ、挑発しがいが無いな」
「ちょっと黙ってろ、頭いたい……」
沈黙。束の間のそれを、彼の声が打ち破る。
「なんでもいい、愚痴をぶつけてみろ。気が楽になるんじゃないか?」
「へっ。あんたに対する文句なら尽きないけどね」
「じゃあそれでも構わない」
歌うように答えた声にあっけにとられる。でも、いざ本人に愚痴を浴びせるのも気乗りしない。焦げ茶色からグラデーションした紫の髪先を少しいじっていると、正面の彼が二、三度瞬きをした。
私は椅子を引いて行儀よく座り直すけど、目を丸くした幼い表情の彼を見るのが嫌で、ガン! と鈍い音を鳴らして再び机と対面した。もともとの頭痛に額を打った痛みがプラスされる。痛いと呻く。
「何してるんだ?」
「……黙ってろ」
「大丈夫か、とんでもない音がしたが」
「うるさ~い」
少し待って、やっと額の痛みが引いてきた。痕が残らなければいいけど。
私は腕で作った壁に頭をうずめ、真っ暗な視界に波打つモザイクを睨み付けながら、ぼそぼそとくぐもった声で語り出す。
「つい一時間くらい前よ。フード被った赤髪の女の人がね、図書館の入り口でめちゃくちゃ暴れて……ナイフで何人か怪我させられたのよ」
「それは……大事だったな」
「知らなかったの?」
「丁度でくわさなかった」
「そう。あれ、旅の人だわ。月鏡の外から来た人は図書館有料っての知らなくてキレちゃったみたい。私は遠くで見てたんだけど、やっぱり騒然として。あっちの方で少量だけど血が飛び散ってるの見て……」
「血は苦手か?」
短い問いに意外に思いながらも、うんと肯定する。なんだからしくない声色だと思った。妙な疑念が渦巻く。次いで、ぽつりと沸き上がった疑問が口を衝いて出た。
「なんでそう思ったの?」
「……直感だ。君は頭痛がどうとか言うが、顔色が悪い事の方が余程目についたよ。僕も血は好きじゃないし、普通の人間ならそうだろう」
「ふーん。でね、話戻るんだけど」
「ああ」
「まだ捕まってないの、そいつ。びっくりするくらい逃げ足早くて、誰も追い付けなかった」
「物騒だな」
「……早く捕まればいいのに」
ああ、他人の心配くらいしてほしいな。実際大丈夫じゃないけど、『大丈夫だったか?』って。
私の感情なんて毛頭わからないであろう彼が、一層抑えた声で問いかけてくる。
「……何か言っていなかったか、そいつは」
「はあ、死神がどうってさ。なんか恨んでるみたいだったけど、言動は支離滅裂に聞こえたわ……」
彼が口を閉ざした。どうしたのだろう。疼く頭で不審に思ったら、また言葉が耳に入ってくる。
「相当参ったろう、君も。そんな惨事を目の当たりにして」
「ほんとよ。思い出したら吐きそう」
「……話をさせなかったほうが、賢明だったかな」
「その通り……」
はあ~~~と、肺の空気全部を吐き出す。
もう疲れてしまった。今日は帰って休もうかな。倒れ込むのに近い形で机につっ伏していたけど、図書館にはもう居たくない。気分転換に遠くへ出掛けようか。どうすればいいだろう?
少し考える。
「……元気出るごはんとか、食べさせてくんない?」
何言ってるんだ、自分は。私のことなんてちっとも心配していない、この男とまた食事なんて。
あ、そうか。ダメ元か、私。
こんな雑に誘ったところで、はね付けられるのが落ちだろう。両目を閉じた。変わらない暗闇が眼前を塗り潰している。ふうと息をついた、数拍後。
「いいぞ」
え、
なんて?
「は!? どういう心変わりよ!」
思わず顔を上げる。明るくなった視界に目がついて行けなくて、少し眩む。頭の横部分がこれでもかというほど痛むので、私はそれを抑えようと机に肘をついたまま両手をこめかみに添える。
彼は頬杖の姿勢のまま微動だにしていなかったが、顔は分かりやすく不服を訴えていた。
「従ってやってるのになんだその言い種は。それで君が満足なら……」
「わけわかんねぇ、二つ返事とか」
「君の提案に乗っただけだ。今日は予定が無いからな」
「万年そうでしょ、あんたって」
「そう思い込める限り、君は幸せだよ」
「……じゃあ、なんで」
彼は瞼を閉じ、さあなと首を傾げる。あんたの事だろ。白々しい。
「こないだのアレなんだったの。『これきり』とか念押ししてたくせに」
「そんなに嫌なら止しておくか?」
そう喋りながら、彼はゆったりとした動きで起立した。彼の顔と上半身の大部分が視界の外に出るけど、体を起こす元気はなくて諦める。
と、椅子の背凭れと机の端がぶつかる小さな音。それを耳にした私の中に、彼はまた逃げようとしてるんじゃないかという考えが降りてきて。私はのぼせあがる。
待てよと声を枯らし、正面――彼の方へ最大限手を伸ばす。彼は席を離れて一瞬立ち去るそぶりを見せたかと思うと、机の横を通って私のすぐ側へ歩み寄って来た。私は不可解な行動をする白い服を視線で追う。
なに、と文句を言おうとしてほんの少しだけ顎を上げると。
頭を撫でられた。
!?
な……
「何したお前!?」
「君の考えてる通りだ。心をなだめるのに効果的だと、どこかの本で……」
「あああその手をどけろォ!!」
ザ・悲鳴。
頭痛のことはすっかり忘れて頭をぶんぶん振り、両手をあちらこちらにやって精一杯彼の手を払って。ガタンという大きな音と共に、椅子から立ち上がる。
頭の中は絶賛混乱中。もう目の前は見えていない。周りの音さえも。訳がわからない、処理しきれない。だって頭痛どころじゃなくて、頭に血がのぼって、心臓はいつもの倍以上に仕事をしている。
なにこれ、なにこれ。私は怒ってる? びっくりしてる? それとも……
なりふり構わず飛び出す。彼本人がどうしてるかなんて、もう考えてられなかった。
言葉にならない声を上げながら、走って、走って、階段を駆け降りて。件の入り口さえあっという間に通り過ぎて。ひたすら足を回して、広がる湖の際で急ブレーキ。
ぜえ、はあ、と肩で息をして、なんとか呼吸を整えようとする。体の熱さに火傷しそうだ。首筋を汗が流れ落ちる。異常に速い拍動の音、耳の奥を行ったり来たりする呼吸音。視界がうるみ、滲んでいる。
ああ馬鹿。
この凪いだ水面に自分の顔を映したくないのに。なんで、なんでここまで来たんだ。景色でも見て落ち着こうとしたのか、何なのか……もうわからない。ぐちゃぐちゃだ。
何かに胸が締め付けられているその事実に、ようやく気付いたところで。
「うわ!! 嫌い! だいっきらい!!」
そう叫んでいた。
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