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田舎道に現る真っ赤な天使
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ここは田んぼ連なる田舎道。
近くの山では蝉が狂ったように鳴いている。
一つ奥の農道では近所のじいちゃんが、とろとろと軽トラックで走っていた。
俺はそんな田舎の風景が嫌いではない。
むしろ傷を負って帰ってきた負け犬の心の癒しとさえ錯覚する。
田舎と言えどスマホも使えるし、不便なのは車がなければ移動が面倒な所だ。
それでも、近所間の距離は歩いて10分程度だし店もあり悪くない。
散歩がてら近所のばあちゃんがやってるレトロな商店にいき駄菓子をいくつかとアイスキャンディーを購入。
暑すぎて溶けるアイスを咥えながら、変わらない風景の中帰宅していた。
筈だった。
さっきまでは。
無防備な俺の目の前には、蠢いている謎の液体。
言い換えるならスライム状のものがいた。
目がある。口はない。
スライムが道端で固まっている俺を認識したようで跳び跳ねた。
「何でスライム? いやまて、漫画とかである異世界に……?!」
流行る気持ちで周囲を見渡した。
だが、変化はない。
暑さで頭やられ妄想してしまったか?
相変わらずの田んぼ道に、少しだけ距離が延びた気がする軽トラックが見える。
じいちゃん法定速度以下じゃね?
いやいや、そうではない。
今は自分の眼前に居る生物、物?この際どうだっていい。
スライムが敵なのか何なのかを知らなくてはならない。
(生憎、今の俺は戦える術を持っちゃいない)
スライムは相変わらずその場で跳ねている。
高速で。何やってるんだこいつ。
俺はこういう時の対処法を知らない。
いっそ某RPGゲームの様にその辺の木の棒で叩いてみるか?
そう思い周辺を見渡したが田んぼ道に都合よく木の棒なんて落ちていなかった。
「ヴォレこんな所にいましたの......?」
さっきまでこの周辺に人はいなかったはずだ。
それなのにスライムの背後から歩いてきた人物は真っ赤なドレスに身を包み、性格のきつそうな印象をした女性だった。
なぜこんな田舎の田んぼ道に地面すれすれのドレスで着飾った女性が居るんだ?
「あの......ヴォレがなにかしましたか?」
「へ?! いや、何も......」
話しかけられると思ってもみず声が尻すぼみになる。情けない。
「ところで、伺いたいのですがここは何処でございますか?」
「え?」
「私、お恥ずかしながら学園の卒業パーティー中に婚約者を奪われた挙句婚約破棄をいいわたされました。ところが足元に魔法陣が出現し、気付いたらこちらに立っておりました」
最近、妹に勧められて呼んだライトノベルに悪役令嬢が婚約破棄されるなんてのを見たのを思いだす。
いやいや現実でそんなこと起こらんだろう普通。
「あのー、お嬢さんどこの人?」
シルバーブロンドの髪色にオリーブ色の瞳。
それらは印象的で日本人が着飾るような色合いではない自然体の色だ。
「失礼いたしました、私はレーツェル王国のリュウール公爵家の娘で マグノーリエ・レイス・リュウールと申しますお見知りおきを」
「......俺は、日本生まれ日本育ちの大椿 実。おおつばき がファミリーネームで みのる がファーストネーム。分かる?」
「......に、ほん?私は今、母国語を話しておりますがミノルの言葉はレーツェル語ですか?」
「え?俺いま、日本語じゃなの?」
マグノーリエさんは首を左右に振る。どうやら言語変換機能が作用しているらしい。
転移先で言葉通じなかったら心細いよな。転移させた人とりあえずはGJ。
近くの山では蝉が狂ったように鳴いている。
一つ奥の農道では近所のじいちゃんが、とろとろと軽トラックで走っていた。
俺はそんな田舎の風景が嫌いではない。
むしろ傷を負って帰ってきた負け犬の心の癒しとさえ錯覚する。
田舎と言えどスマホも使えるし、不便なのは車がなければ移動が面倒な所だ。
それでも、近所間の距離は歩いて10分程度だし店もあり悪くない。
散歩がてら近所のばあちゃんがやってるレトロな商店にいき駄菓子をいくつかとアイスキャンディーを購入。
暑すぎて溶けるアイスを咥えながら、変わらない風景の中帰宅していた。
筈だった。
さっきまでは。
無防備な俺の目の前には、蠢いている謎の液体。
言い換えるならスライム状のものがいた。
目がある。口はない。
スライムが道端で固まっている俺を認識したようで跳び跳ねた。
「何でスライム? いやまて、漫画とかである異世界に……?!」
流行る気持ちで周囲を見渡した。
だが、変化はない。
暑さで頭やられ妄想してしまったか?
相変わらずの田んぼ道に、少しだけ距離が延びた気がする軽トラックが見える。
じいちゃん法定速度以下じゃね?
いやいや、そうではない。
今は自分の眼前に居る生物、物?この際どうだっていい。
スライムが敵なのか何なのかを知らなくてはならない。
(生憎、今の俺は戦える術を持っちゃいない)
スライムは相変わらずその場で跳ねている。
高速で。何やってるんだこいつ。
俺はこういう時の対処法を知らない。
いっそ某RPGゲームの様にその辺の木の棒で叩いてみるか?
そう思い周辺を見渡したが田んぼ道に都合よく木の棒なんて落ちていなかった。
「ヴォレこんな所にいましたの......?」
さっきまでこの周辺に人はいなかったはずだ。
それなのにスライムの背後から歩いてきた人物は真っ赤なドレスに身を包み、性格のきつそうな印象をした女性だった。
なぜこんな田舎の田んぼ道に地面すれすれのドレスで着飾った女性が居るんだ?
「あの......ヴォレがなにかしましたか?」
「へ?! いや、何も......」
話しかけられると思ってもみず声が尻すぼみになる。情けない。
「ところで、伺いたいのですがここは何処でございますか?」
「え?」
「私、お恥ずかしながら学園の卒業パーティー中に婚約者を奪われた挙句婚約破棄をいいわたされました。ところが足元に魔法陣が出現し、気付いたらこちらに立っておりました」
最近、妹に勧められて呼んだライトノベルに悪役令嬢が婚約破棄されるなんてのを見たのを思いだす。
いやいや現実でそんなこと起こらんだろう普通。
「あのー、お嬢さんどこの人?」
シルバーブロンドの髪色にオリーブ色の瞳。
それらは印象的で日本人が着飾るような色合いではない自然体の色だ。
「失礼いたしました、私はレーツェル王国のリュウール公爵家の娘で マグノーリエ・レイス・リュウールと申しますお見知りおきを」
「......俺は、日本生まれ日本育ちの大椿 実。おおつばき がファミリーネームで みのる がファーストネーム。分かる?」
「......に、ほん?私は今、母国語を話しておりますがミノルの言葉はレーツェル語ですか?」
「え?俺いま、日本語じゃなの?」
マグノーリエさんは首を左右に振る。どうやら言語変換機能が作用しているらしい。
転移先で言葉通じなかったら心細いよな。転移させた人とりあえずはGJ。
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