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最恐ドラゴンが出会いを演出する時。(1)
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アストリッド様と一緒にレイヴォネン王国の通りを歩く。街並みは整えられ、行き交う人々が清潔なのは、大通りだからだろう。
そして行き交う人々がチラリチラリとアストリッド様を見ている。目を合わせなようにチラッと見るのは、怖いからだろう。アストリッド様が【最強賢者】と言うことは知れ渡っている。威圧を抑えることに成功したとは言え、やはり存在そのものが怖いのだろう。
それとは別に男の人が、ぽ~っとしながらこちらを見ているのは、アストリッド様に見惚れているからだろう。
今日のアストリッド様の衣装は水色のワンピース!ヒラヒラしたスカートが似合うタイプではないので、すっとした細身のミニワンピにしてやった。綺麗なお足がすらっと出てるよ。
化粧は控えめにしたし、髪は男性が大好きなポニーテール!歩くたびにゆらりと揺れる髪が最高に良い。
これらの知識の全てが女性向けの恋愛小説からきている。
化粧の仕方も、ヘアアレンジの方法も、タイプ別の洋服の選び方も、それら全てが恋愛小説には書かれている。そして男性向けの恋愛小説には、男性が好む女性の特徴が書かれている。全て知識を総動員してアストリッド様の恋愛成就の成功率を上げる。完璧だ!人類の全ての知識が恋愛小説には詰まっていると言っても過言ではないだろう。
「アストリッド様、今日はその喋り方をやめませんか?貴族の女性の話し方をして欲しいんですが」
「これが我が国の貴族の話し方だが?母もこの話し方だぞ?」
「『わたくし』とか『ですわ』とかじゃないんですか?そもそもアストリッド様の出生国はどこですか?」
アストリッド様の祖国を俺はまだ知らない。聞かないようにしようと思っていたが、ここで聞いておこう。そうしないと逃亡した先で出くわしては堪らない。
まぁ、貴族の端くれだと言ってるし、ミドルネームも苗字もあるのだから貴族だろう。
「私の国か?あまり知られてない国なんだが、クルクリと言う国を知っているか?」
「……戦闘民族の?」
「良く知ってるな?」
「魔物界の常識です。自殺志願者以外はクルクリに近づくなって」
「……そうか、だから我が国には魔物が少ないのか…」
アストリッド様の強さに納得した。
クルクリ国。少数民族だが一人一人が極端に強く、クルクリの戦士は一人で百の敵を相手にすると言われている。国民全員が竜と渡り合える国…。滅多に外に出る事はないとも聞いた。祖先が戦いの神だ、とか悪魔の血が混ざっているとか噂されている国。
俺が近づきたくないと思っている国。
魔物新聞で透明人間ガルアが潜入している国。そういえばガルアは無事だろうか。最近、新聞に載っていない。
だけど新聞で得た知識がある。
「あの国の貴族って王族ですよね?」
「本当に良く知っているな。クルクリは一番目に生まれた子が跡継ぎなんだ。そして二番目が跡継ぎになにかあった際のスペアになって、以降は貴族となる。私は貰い手が決まるまでの間は好きに生きろと言われたので、国を出て冒険者になったんだ」
「そう言えば初めに会った時に言ってましたね。結婚相手が決まるまで自由にしろと言われたとか……良いんですか?アストリッド様は恋愛しようとしてますが……」
「恋愛であって結婚ではないから良いだろう……。それに最終的にはなんとかなるだろう」
なんだか結婚までの火遊びみたいで、あまり気分は良くない。でも言ったら怒られるから、黙っておこう。俺も命は惜しい。
そんな話をしていたらアストリッド様の意中の人、レオン様が働く『ひまわり』に着いた。大衆食堂といった感じだろうか。中が少し騒がしい。そもそも通りから離れた所にある店だ。ロマンチックとはほど遠い。
周囲の雰囲気も良くはない。アストリッド様のマンションは大通りにあるせいか道も開けていて、清潔感がある。しかしここは違う。雑多に建てられた建物と建物の間には、鋭い視線を送る怖い人たちがいる。なんだか平和じゃない。
俺は先行きに不安を覚えながら店の扉を開いた。
そして行き交う人々がチラリチラリとアストリッド様を見ている。目を合わせなようにチラッと見るのは、怖いからだろう。アストリッド様が【最強賢者】と言うことは知れ渡っている。威圧を抑えることに成功したとは言え、やはり存在そのものが怖いのだろう。
それとは別に男の人が、ぽ~っとしながらこちらを見ているのは、アストリッド様に見惚れているからだろう。
今日のアストリッド様の衣装は水色のワンピース!ヒラヒラしたスカートが似合うタイプではないので、すっとした細身のミニワンピにしてやった。綺麗なお足がすらっと出てるよ。
化粧は控えめにしたし、髪は男性が大好きなポニーテール!歩くたびにゆらりと揺れる髪が最高に良い。
これらの知識の全てが女性向けの恋愛小説からきている。
化粧の仕方も、ヘアアレンジの方法も、タイプ別の洋服の選び方も、それら全てが恋愛小説には書かれている。そして男性向けの恋愛小説には、男性が好む女性の特徴が書かれている。全て知識を総動員してアストリッド様の恋愛成就の成功率を上げる。完璧だ!人類の全ての知識が恋愛小説には詰まっていると言っても過言ではないだろう。
「アストリッド様、今日はその喋り方をやめませんか?貴族の女性の話し方をして欲しいんですが」
「これが我が国の貴族の話し方だが?母もこの話し方だぞ?」
「『わたくし』とか『ですわ』とかじゃないんですか?そもそもアストリッド様の出生国はどこですか?」
アストリッド様の祖国を俺はまだ知らない。聞かないようにしようと思っていたが、ここで聞いておこう。そうしないと逃亡した先で出くわしては堪らない。
まぁ、貴族の端くれだと言ってるし、ミドルネームも苗字もあるのだから貴族だろう。
「私の国か?あまり知られてない国なんだが、クルクリと言う国を知っているか?」
「……戦闘民族の?」
「良く知ってるな?」
「魔物界の常識です。自殺志願者以外はクルクリに近づくなって」
「……そうか、だから我が国には魔物が少ないのか…」
アストリッド様の強さに納得した。
クルクリ国。少数民族だが一人一人が極端に強く、クルクリの戦士は一人で百の敵を相手にすると言われている。国民全員が竜と渡り合える国…。滅多に外に出る事はないとも聞いた。祖先が戦いの神だ、とか悪魔の血が混ざっているとか噂されている国。
俺が近づきたくないと思っている国。
魔物新聞で透明人間ガルアが潜入している国。そういえばガルアは無事だろうか。最近、新聞に載っていない。
だけど新聞で得た知識がある。
「あの国の貴族って王族ですよね?」
「本当に良く知っているな。クルクリは一番目に生まれた子が跡継ぎなんだ。そして二番目が跡継ぎになにかあった際のスペアになって、以降は貴族となる。私は貰い手が決まるまでの間は好きに生きろと言われたので、国を出て冒険者になったんだ」
「そう言えば初めに会った時に言ってましたね。結婚相手が決まるまで自由にしろと言われたとか……良いんですか?アストリッド様は恋愛しようとしてますが……」
「恋愛であって結婚ではないから良いだろう……。それに最終的にはなんとかなるだろう」
なんだか結婚までの火遊びみたいで、あまり気分は良くない。でも言ったら怒られるから、黙っておこう。俺も命は惜しい。
そんな話をしていたらアストリッド様の意中の人、レオン様が働く『ひまわり』に着いた。大衆食堂といった感じだろうか。中が少し騒がしい。そもそも通りから離れた所にある店だ。ロマンチックとはほど遠い。
周囲の雰囲気も良くはない。アストリッド様のマンションは大通りにあるせいか道も開けていて、清潔感がある。しかしここは違う。雑多に建てられた建物と建物の間には、鋭い視線を送る怖い人たちがいる。なんだか平和じゃない。
俺は先行きに不安を覚えながら店の扉を開いた。
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