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第50話 シェリルの提案
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瘴気の沼から光が生じ、一瞬で沼は消えた。それと同時に魔物も姿を消し、皆で何が起こったかと話し合っていたら、アーマンディ様を縦抱っこしたシェリル姉が姿を現した。いつまでも続くキスの嵐を止めるために、誰が声をかけるか目配せし合い、ルーベンスは頑張って二人に声をかけた。
「アーマンディ様、シェリル姉・・お帰り」
「ルーベンス⁉︎ここは・・・。戻って来たのか?」
「うん、そうだよ。今は状況の擦り合わせをしてる所だから、まずアーマンディ様を下ろしてくれる?」
「僕はこのままでも良いよ?」
「いや・・そうだな。アーマンディ様、下りてください」
不満顔のアーマンディを無視し、シェリルは縦抱っこをやめて、アーマンディを下ろした。
珍しい事だとルーベンスはシェリルを改めて見る。シェリルの頬をが少し赤い気がする。
ケイノリサは話を進める為に、シェリルに話しかけた。
「アジタート様がメイリーンを連れて行った。どんな思惑があるか分からないが、追いかけないと」
「分かりました。ですがその前にこの城にかかった結界をなんとかしないと、力が半減しています」
「これだけの規模の結界は私では無理だ。君達を入れるために解除した扉の結界も、もう新たに復元している。メイリーンであれば可能だと思う」
「やはりメイリーンですね。ではケイノリサ様はこちらで待機して頂けますか?私はアーマンディ様とルーベンスと共にアジタート様を追いかけます」
シェリルは後方にいるアーマンディに手を差し出す。
「アーマンディ様、剣をくだ・・・。何をしてるんですか?」
「着替えようと思って。動きにくいし」
アーマンディは頑張って詰襟のフックを外そうとしている。
「アーマンディ様⁉︎ここには騎士達もいますし、ケイノリサ様もいます。違う部屋で着替えましょう」
「ルーベンス?なんで?男同士だし良いでしょ?それより詰襟のフックを外してよ。なんか難しいんだよ」
「・・・。ケイノリサ様、部屋を出て打ち合わせしましょう。ルーベンス、アーマンディ様の着替えを頼む」
「シェリル姉⁉︎なんで俺⁉︎」
「ルーベンス君、いくらアーマンディの騎士で婚約者とは言えど、シェリル嬢は女性だ。淑女に男性の着替えをさせるのは、どうかと思う。我々は外に出るから、お願いする」
ケイノリサの言い分はもっともなので、ルーベンスは黙って、皆が部屋から出て行くのを見送る。
部屋から全員が出て行き、ルーベンスは改めてアーマンディに向き合った。
「着替えはあるんですよね?アーマンディ様」
「あるよ。念のために持って来たから」
「シェリル姉、変じゃないですか?」
「シェリルは最近は、恥ずかしがり屋になっちゃったの。大人になったんだって」
「それは・・良い事ですね?」
ルーベンスがアーマンディの着替えを手伝っている頃、扉から出たシェリルはケイノリサと廊下で現状確認をしていた。騎士達は周囲の確認をしている。
「城内の人間はどうしました?随分と静かですが」
「元々何か起こる可能性があると思っていたので、事前に通知はしておいた。お陰でスムーズに避難できた。だがここまでの事が起こるとは思っていなかった」
「何か起こる可能性があったにも関わらず、式典を行おうとしていたのですね。これでメイリーンやアーマンディ様に何かあったら、ケイノリサ様を軽蔑しますよ」
睨むシェリルを正面から受けて、ケイノリサは渋面を浮かべた。
「戦力の一つであったシェリル嬢が消えたのは誤算だった。カエンも来れなくなり、ヴルカン公爵家のレオニダスも足止めを食った。こちらとしても精一杯やったつもりだ」
「私が消えたのは、スピカ様の意志です。仕方がないでしょう。だが得るものも多かったのも事実ですよ。ここからは私に任せてください。代わりにお願いがあります」
「私ができる事ならやるが・・国家の危機で取引するのはどうかと思うが」
更に渋面を浮かべるケイノリサに対し、シェリルはしたり顔で告げる。
「大した事ではありませんよ。男でも女でも貴族であってもそうでなくても、資格があれば聖女になれると言う法案さえ通してくれれば良いのです」
「それは険しい道だな。だが必要だろう。となると、聖女以外の言葉も作らなけれいけないな」
「そこはお任せしますよ」
話がついた所で扉が開き、アーマンディとルーベンスが部屋から出てきた。いつもの聖女のドレスに身を包み穏やかに微笑むアーマンディに、シェリルは手を差し出した。
「やはり似合いますね」
「うん、こっちの方がしっくりくるね」
「アーマンディ、すまない」
ケイノリサの謝罪を受け、アーマンディは柔らかく微笑んだ。
「ケイノリサ様、戻ってきたら改めて公国王就任式とその祝いの夜会をしましょう」
「承知致しました」
ケイノリサが膝を深く折り、お辞儀をする。
それを見て、3人はかけ出した。メイリーンとアジタートの元へ。
「アーマンディ様、シェリル姉・・お帰り」
「ルーベンス⁉︎ここは・・・。戻って来たのか?」
「うん、そうだよ。今は状況の擦り合わせをしてる所だから、まずアーマンディ様を下ろしてくれる?」
「僕はこのままでも良いよ?」
「いや・・そうだな。アーマンディ様、下りてください」
不満顔のアーマンディを無視し、シェリルは縦抱っこをやめて、アーマンディを下ろした。
珍しい事だとルーベンスはシェリルを改めて見る。シェリルの頬をが少し赤い気がする。
ケイノリサは話を進める為に、シェリルに話しかけた。
「アジタート様がメイリーンを連れて行った。どんな思惑があるか分からないが、追いかけないと」
「分かりました。ですがその前にこの城にかかった結界をなんとかしないと、力が半減しています」
「これだけの規模の結界は私では無理だ。君達を入れるために解除した扉の結界も、もう新たに復元している。メイリーンであれば可能だと思う」
「やはりメイリーンですね。ではケイノリサ様はこちらで待機して頂けますか?私はアーマンディ様とルーベンスと共にアジタート様を追いかけます」
シェリルは後方にいるアーマンディに手を差し出す。
「アーマンディ様、剣をくだ・・・。何をしてるんですか?」
「着替えようと思って。動きにくいし」
アーマンディは頑張って詰襟のフックを外そうとしている。
「アーマンディ様⁉︎ここには騎士達もいますし、ケイノリサ様もいます。違う部屋で着替えましょう」
「ルーベンス?なんで?男同士だし良いでしょ?それより詰襟のフックを外してよ。なんか難しいんだよ」
「・・・。ケイノリサ様、部屋を出て打ち合わせしましょう。ルーベンス、アーマンディ様の着替えを頼む」
「シェリル姉⁉︎なんで俺⁉︎」
「ルーベンス君、いくらアーマンディの騎士で婚約者とは言えど、シェリル嬢は女性だ。淑女に男性の着替えをさせるのは、どうかと思う。我々は外に出るから、お願いする」
ケイノリサの言い分はもっともなので、ルーベンスは黙って、皆が部屋から出て行くのを見送る。
部屋から全員が出て行き、ルーベンスは改めてアーマンディに向き合った。
「着替えはあるんですよね?アーマンディ様」
「あるよ。念のために持って来たから」
「シェリル姉、変じゃないですか?」
「シェリルは最近は、恥ずかしがり屋になっちゃったの。大人になったんだって」
「それは・・良い事ですね?」
ルーベンスがアーマンディの着替えを手伝っている頃、扉から出たシェリルはケイノリサと廊下で現状確認をしていた。騎士達は周囲の確認をしている。
「城内の人間はどうしました?随分と静かですが」
「元々何か起こる可能性があると思っていたので、事前に通知はしておいた。お陰でスムーズに避難できた。だがここまでの事が起こるとは思っていなかった」
「何か起こる可能性があったにも関わらず、式典を行おうとしていたのですね。これでメイリーンやアーマンディ様に何かあったら、ケイノリサ様を軽蔑しますよ」
睨むシェリルを正面から受けて、ケイノリサは渋面を浮かべた。
「戦力の一つであったシェリル嬢が消えたのは誤算だった。カエンも来れなくなり、ヴルカン公爵家のレオニダスも足止めを食った。こちらとしても精一杯やったつもりだ」
「私が消えたのは、スピカ様の意志です。仕方がないでしょう。だが得るものも多かったのも事実ですよ。ここからは私に任せてください。代わりにお願いがあります」
「私ができる事ならやるが・・国家の危機で取引するのはどうかと思うが」
更に渋面を浮かべるケイノリサに対し、シェリルはしたり顔で告げる。
「大した事ではありませんよ。男でも女でも貴族であってもそうでなくても、資格があれば聖女になれると言う法案さえ通してくれれば良いのです」
「それは険しい道だな。だが必要だろう。となると、聖女以外の言葉も作らなけれいけないな」
「そこはお任せしますよ」
話がついた所で扉が開き、アーマンディとルーベンスが部屋から出てきた。いつもの聖女のドレスに身を包み穏やかに微笑むアーマンディに、シェリルは手を差し出した。
「やはり似合いますね」
「うん、こっちの方がしっくりくるね」
「アーマンディ、すまない」
ケイノリサの謝罪を受け、アーマンディは柔らかく微笑んだ。
「ケイノリサ様、戻ってきたら改めて公国王就任式とその祝いの夜会をしましょう」
「承知致しました」
ケイノリサが膝を深く折り、お辞儀をする。
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