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第17話 グノーム公爵本邸(3)
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「見つかった?」
「いいえ、見つかりませんでした」
ルーベンスの答えに、アーマンディはあからさまに落胆する。それを慰める事なく、ルーベンスは部屋を見回す。
「シェリル姉もまだ帰ってないんですね。もうすぐ晩餐会なのに、メイリーン嬢が戻って来ないなんて変ですよ。絶対何かに巻き込まれたんです」
「僕もそう思う。メイリーンは責任感が強い子だから、この時間まで帰って来ないのはおかしいもの」
アーマンディを責めたてたい気持ちを抑え、ルーベンスは天井を見上げる。
メイリーンが転移の魔法を使い、消えてから4時間経った。あと1時間で晩餐会だ。戻って来ないメイリーンを30分前に探しに行って、もしかしたらアーマンディの部屋に戻っているかと思い帰って来たが、まだ戻ってないとは。
事がことだけに、周りにも言えずシェリルと2人で探しに行ったが、そろそろ騎士団を動かすべきか、悩むルーベンスは外に気配を感じ咄嗟にアーマンディの前に立つ。
ノックもせずに入って来たのは、アトス公爵とその一族。そしてトゥール小公爵の片手に抱き抱えられたメイリーン。腕は縛られ、目から涙が溢れている。嗚咽混じりに必死に言葉を出した。
「・・姉様、ごめんなさい」
「貴様!!」
ルーベンスがその魔力を持って、攻撃に転じようとすると、トゥールはメイリーンの髪を引っ張る。
必死に悲鳴を堪えるメイリーンを見て、ルーベンスは自身の力を抑えた。冷静になる様自分に言い聞かせる。
「人質とは、頭が悪い作戦だ。婦女子を痛めつけて、何が楽しいんだか理解できないね」
「相変わらず生意気な小僧だ。年長者を敬う気持ちもないらしい。だが儂は寛大だ。だから教えてやろう。人質はな、古来から一番よく効く手段なんだよ。こんな所まで来てのこのこ1人で歩くこの馬鹿女が悪いんだ!」
アトスはメイリーンを殴ろうと手を振り上げた。
「やめて!メイリーンに乱暴しないで!」
アーマンディが叫ぶ。前に出ようとするアーマンディを背中でルーベンスが抑える。
アーマンディの言葉に、アトスが笑う。
「聖女様、妹を助けたければ、このトゥールと結婚して頂こう」
「結婚?」
「そうだ。そして子を産め!そうすれば妹は助けてやる」
「あなたの孫はどうするの?聖属性の力の持ち主なんでしょう?」
「は!あんなのを信じてるとは、お人好しだな。何人子供をもうけても、孫ができても聖属性の力の持ち主など産まれもしない。なのにウンディーネ公爵家ではあっさり出来やがる!この家から聖女を出す為にも、嫁になって子を産め!アーマンディ‼︎」
アーマンディは守ろうとするするルーベンスの肩を叩き、前に出た。一歩一歩、歩きアトスの前に立つ。
「それは無理だよ。だって僕は男だから」
その声は、紛れもなく変声期を終えた男の声。
アトスとトゥールが衝撃を受けている隙にアーマンディは、トゥールからメイリーンを助け出す。ルーベンスはアーマンディの前に出て、剣を抜く。
「形成逆転だな?」
「まだそう思うには早いな」
続き間の扉が開き、メイドのネリーと公国王フェランが現れる。ネリーは男に羽交締めにされ、フェランの手には護国水晶玉。
「また人質なんだね。そのやり口しか知らないのかな?その護国水晶玉はこの国を守る物だ。僕に返した方が利口だよ?」
片手を差し伸べるアーマンディ。それを見て大公王は笑った。
「とんだ食わせ物だ。男だとはな。ウンディーネもシルヴェストルもやってくれるわ!」
「君達が勘違いしてるだけだ。『聖女』は聖属性の力を持ち、女神スピカ様の御力を借り使える者だ。女じゃなきゃいけない訳じゃない。ただ、今までは女性の方が多かっただけだよ。だから僕は間違いなく聖女だ。その護国水晶玉を返しなさい。今なら許してあげるから」
「返すつもりはない。そして男であれば都合がいい」
「種馬にでもする気?」
「頭の回転が早くて助かるな」
アーマンディはルーベンスの肩に手を置き、軽く引く。それに気付き、ルーベンスは2人を背に少しずつ下がる。
男の様に怜悧な微笑みを見せていたアーマンディは、表情を変え聖女の微笑みを見せる。
「それは残念ながら無理ね。わたくしには優秀な騎士がいるもの」
アーマンディの言葉と共に、部屋に炎の壁が舞い上がる。グノーム公爵達とアーマンディ達は完全に炎の壁によって遮られる。壁の上からネリーが飛んできて、見事な着地をこなす。
「護国水晶玉は無理でした。奴め、自分毎結界に閉じ込めてます」
炎の壁の向こうから、シェリルの声が聞こえ、ルーベンスは安堵した声を上げた。
「シェリル姉!遅いよ!」
「修行不足だぞ、ルーベンス。後で鍛錬だ!」
その声を聞き、ほっとする。炎の壁で分けたと言う事は、今の間に逃げろと言う事だと理解し、メイリーンに合図を送る。メイリーンは転移の魔法を発動する。
「シェリル、また後でね」
アーマンディが声をかける。
「ええ、また後で」
4人の気配が消えたのを感じ、炎の壁を無くす。
1対多数、実に良い。笑う自分に気付いて、シェリルは顔を引き締める。
「分かっているのか?あれは男だそうだぞ?シェリル嬢」
フェランが護国水晶玉をその厚いマントに隠しながら、シェリルを睨む。
「ああ、そうだな。知らなかったよ。あんなに近くにいて気付かないとは私は馬鹿だ」
シェリルは剣についた血を拭う。切った男はフェランの横で倒れている。本当は一緒にフェランも切るつもりだったのに、弾かれた。さすが大公王と言うべきか。中々強い結界だ。
「だが、良かった。これでも私は結婚式も挙げたかったし、子供も産みたかったんだ。アーマンディ様のウエディングドレス姿はとても美しいだろう。これで全ての願いが叶う」
グノーム公爵一族の魔法の発動を感じる。そして集まってくる騎士の気配も感じる。敵の数は100を超えそうだ。だが、負ける気がしない!
「私の魔物討伐の最高記録は100だ。人ごときが私を止められると思うなよ?」
シェリルは魔法を発動させる。
グノーム公爵邸から爆発音が響いた。
「いいえ、見つかりませんでした」
ルーベンスの答えに、アーマンディはあからさまに落胆する。それを慰める事なく、ルーベンスは部屋を見回す。
「シェリル姉もまだ帰ってないんですね。もうすぐ晩餐会なのに、メイリーン嬢が戻って来ないなんて変ですよ。絶対何かに巻き込まれたんです」
「僕もそう思う。メイリーンは責任感が強い子だから、この時間まで帰って来ないのはおかしいもの」
アーマンディを責めたてたい気持ちを抑え、ルーベンスは天井を見上げる。
メイリーンが転移の魔法を使い、消えてから4時間経った。あと1時間で晩餐会だ。戻って来ないメイリーンを30分前に探しに行って、もしかしたらアーマンディの部屋に戻っているかと思い帰って来たが、まだ戻ってないとは。
事がことだけに、周りにも言えずシェリルと2人で探しに行ったが、そろそろ騎士団を動かすべきか、悩むルーベンスは外に気配を感じ咄嗟にアーマンディの前に立つ。
ノックもせずに入って来たのは、アトス公爵とその一族。そしてトゥール小公爵の片手に抱き抱えられたメイリーン。腕は縛られ、目から涙が溢れている。嗚咽混じりに必死に言葉を出した。
「・・姉様、ごめんなさい」
「貴様!!」
ルーベンスがその魔力を持って、攻撃に転じようとすると、トゥールはメイリーンの髪を引っ張る。
必死に悲鳴を堪えるメイリーンを見て、ルーベンスは自身の力を抑えた。冷静になる様自分に言い聞かせる。
「人質とは、頭が悪い作戦だ。婦女子を痛めつけて、何が楽しいんだか理解できないね」
「相変わらず生意気な小僧だ。年長者を敬う気持ちもないらしい。だが儂は寛大だ。だから教えてやろう。人質はな、古来から一番よく効く手段なんだよ。こんな所まで来てのこのこ1人で歩くこの馬鹿女が悪いんだ!」
アトスはメイリーンを殴ろうと手を振り上げた。
「やめて!メイリーンに乱暴しないで!」
アーマンディが叫ぶ。前に出ようとするアーマンディを背中でルーベンスが抑える。
アーマンディの言葉に、アトスが笑う。
「聖女様、妹を助けたければ、このトゥールと結婚して頂こう」
「結婚?」
「そうだ。そして子を産め!そうすれば妹は助けてやる」
「あなたの孫はどうするの?聖属性の力の持ち主なんでしょう?」
「は!あんなのを信じてるとは、お人好しだな。何人子供をもうけても、孫ができても聖属性の力の持ち主など産まれもしない。なのにウンディーネ公爵家ではあっさり出来やがる!この家から聖女を出す為にも、嫁になって子を産め!アーマンディ‼︎」
アーマンディは守ろうとするするルーベンスの肩を叩き、前に出た。一歩一歩、歩きアトスの前に立つ。
「それは無理だよ。だって僕は男だから」
その声は、紛れもなく変声期を終えた男の声。
アトスとトゥールが衝撃を受けている隙にアーマンディは、トゥールからメイリーンを助け出す。ルーベンスはアーマンディの前に出て、剣を抜く。
「形成逆転だな?」
「まだそう思うには早いな」
続き間の扉が開き、メイドのネリーと公国王フェランが現れる。ネリーは男に羽交締めにされ、フェランの手には護国水晶玉。
「また人質なんだね。そのやり口しか知らないのかな?その護国水晶玉はこの国を守る物だ。僕に返した方が利口だよ?」
片手を差し伸べるアーマンディ。それを見て大公王は笑った。
「とんだ食わせ物だ。男だとはな。ウンディーネもシルヴェストルもやってくれるわ!」
「君達が勘違いしてるだけだ。『聖女』は聖属性の力を持ち、女神スピカ様の御力を借り使える者だ。女じゃなきゃいけない訳じゃない。ただ、今までは女性の方が多かっただけだよ。だから僕は間違いなく聖女だ。その護国水晶玉を返しなさい。今なら許してあげるから」
「返すつもりはない。そして男であれば都合がいい」
「種馬にでもする気?」
「頭の回転が早くて助かるな」
アーマンディはルーベンスの肩に手を置き、軽く引く。それに気付き、ルーベンスは2人を背に少しずつ下がる。
男の様に怜悧な微笑みを見せていたアーマンディは、表情を変え聖女の微笑みを見せる。
「それは残念ながら無理ね。わたくしには優秀な騎士がいるもの」
アーマンディの言葉と共に、部屋に炎の壁が舞い上がる。グノーム公爵達とアーマンディ達は完全に炎の壁によって遮られる。壁の上からネリーが飛んできて、見事な着地をこなす。
「護国水晶玉は無理でした。奴め、自分毎結界に閉じ込めてます」
炎の壁の向こうから、シェリルの声が聞こえ、ルーベンスは安堵した声を上げた。
「シェリル姉!遅いよ!」
「修行不足だぞ、ルーベンス。後で鍛錬だ!」
その声を聞き、ほっとする。炎の壁で分けたと言う事は、今の間に逃げろと言う事だと理解し、メイリーンに合図を送る。メイリーンは転移の魔法を発動する。
「シェリル、また後でね」
アーマンディが声をかける。
「ええ、また後で」
4人の気配が消えたのを感じ、炎の壁を無くす。
1対多数、実に良い。笑う自分に気付いて、シェリルは顔を引き締める。
「分かっているのか?あれは男だそうだぞ?シェリル嬢」
フェランが護国水晶玉をその厚いマントに隠しながら、シェリルを睨む。
「ああ、そうだな。知らなかったよ。あんなに近くにいて気付かないとは私は馬鹿だ」
シェリルは剣についた血を拭う。切った男はフェランの横で倒れている。本当は一緒にフェランも切るつもりだったのに、弾かれた。さすが大公王と言うべきか。中々強い結界だ。
「だが、良かった。これでも私は結婚式も挙げたかったし、子供も産みたかったんだ。アーマンディ様のウエディングドレス姿はとても美しいだろう。これで全ての願いが叶う」
グノーム公爵一族の魔法の発動を感じる。そして集まってくる騎士の気配も感じる。敵の数は100を超えそうだ。だが、負ける気がしない!
「私の魔物討伐の最高記録は100だ。人ごときが私を止められると思うなよ?」
シェリルは魔法を発動させる。
グノーム公爵邸から爆発音が響いた。
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