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第14話 ふりがな多くて分からない(4)
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私は青い髪のお兄ちゃんに全て話した。
神様に間違えて殺されたこと。チーズをつけて転生させると言われたこと。間違えて犬にされたこと。間違えを正すために、この世界に移動させられたこと。そしてそこに紗枝ちゃんもいたこと。
その全てを話してみた。山根君似の神様のおっちょこちょいなところも、6割程度しか話さなかった。あんなでも一応神だ。恥は晒さない方が良いだろう。
「チーズをつけた……ですか?チーズとは動物のミルクを発酵させて作る保存食ですが、何の関係が?」
おお、この世界にもチーズはあるのか!ではなく、たぶんそれじゃない。
「特別な力みたいな事を、私の前世の部下が言ってました」
「チーズではなく、チートですね」
「………………だった気がします」
犬だから赤くならない筈なのに、赤くなる。恥ずかしい!だからカタカタは苦手なんだ!
そもそも日本人はなぜあんなにカタカタが好きなのか。外国語がかっこいいと思っているのが分からない。同じ言語じゃないか!
会社の用語も英語が増えた。ウィンウィン、リスケ、アジェンダ、エビデンス、いっぱい、いっぱい!
しかもすぐ略す。FYI、TYT、OJT、CHO、AP、AR意味が分からない!日本人なら日本語で勝負して欲しいものだ!と心の中でしか言えない小心者だった。それは今も同じだ。せっかく生まれ変わっても記憶があると人は変われないし、変わらない。
「お話を聞く限り、やはり貴方様が大神王フェンリル様の後任ですね」
「狼?」
「大神です。神の化身。この世界を魔の手から守る偉大なお方です」
「………………」
どうやら動物の狼ではなかったらしい。
しかし、大神?犬なのに?
「私は神様になったのですか?」
「神とは違います。神は様々な世界の秩序を守り、世界を生み出す方々の事です。大神様はこの世界を守るために神から遣わされた神の使いです」
大神なんて神より偉そうだけど、違うらしい。なんだかややこしいな。
「はぁ、そう言えばそんなことを言っていた気がします。それで私は何をすれば良いんですか?そしてこの子を帰すことができますか?」
「そうですね――まずはあなたの役割ですが、下層世界を支配する魔王を頂点とした魔族と戦う事です」
「…………戦う……」
なんて物騒なことを言うんだろう。いや、さっき私を狙ってくる魔物たちは倒したけど、それだって死体のグロテスクさにドン引きしているのに!
そもそも魔王って何だろう。魔物の王様だから魔王?あ、そう言えば山根君に借りた漫画に載っていたな。魔王。
人類を襲う恐ろしい魔物の主人だったり、人類に虐げられる魔物の王だったり、話によって役割はバラバラだったけど、強くて角の生えた人が多かった。どうやって寝るんだろうなぁ、服を着るとき角が引っかからないかなぁって思っていた。
いやいや、違う、違う、そんな無駄なことを考えている場合じゃない。
そもそも、なぜ争うのだろう。
「どうして魔王と戦う必要があるのですか?」
「そういうものだからです」
そういうものらしい…………。
「いや!待ってください。それは理屈が通らないですよ?土地をめぐっての侵略戦争とか、宗教間戦争とか、なんか理由があるでしょう?」
「どうでしょうか……理由を考えたことはなかったです。そう言うものだと思っていたので……」
「…………ソウデスカ」
そうだな。山根君似の神様が私を送るところだ。そういうものかもしれない。
「あなたは実に興味深いことを仰いますね……確かに我々と魔物はなぜ争うのでしょうか。魔物は襲ってくるものだと私は思っていました。だがその理由など考えたこともありません」
「私を襲ってきた魔物は、私を食べたいって言ってましたけどね……」
「ああ、あなたの見た目は犬ですからね。美味しそうに見えたのでしょう」
「その言い方ですと、人は食べないと言っているようですが?」
「あなたは会話が通じるものを食せますか?」
「ムリデスネ…………」
うん、たぶん、無理だと思う。今の私は犬だけど、そこは無理だと思う。
しかし不思議な世界だ。なぜ争うのかを考えず争っているとは。私の常識は通じないようだ。こういう世界にふさわしいのは山根君のような常識から少し外れた人間だろう。私のように頭も固く、漫画も読まない、ゲームもしない人間はふさわしくない。
「その子供を還す方法ですが、今現在この世界を守る大神王フェンリル様にお会いするのが一番の近道だと思われます。大神王が前任者から引継ぎをする際に、神が祝福をするために現れると聞いております。その際に神へと依頼すれば良いでしょう」
「ありがとうございます!」
やった、それは朗報だ。
だがそのためには、魔王と戦うという意味の分からない仕事を引き継ぐことになるのか……。紗枝ちゃんの幸せと、私の不幸せ。どちらが良いかと言えば、紗枝ちゃんの幸せに決まっている。
そもそも理由も分からない争いに身を投じる必要があるのだろうか。いや、ない!つまり戦争しなきゃ良いのだ。
君子危うきに近寄らず!危ない事には近づかないに限る!私のモットーはラブ&ピース!平和が一番!
「それで、そのふぇんりるさんはどこにいますか?」
「フェンリル様は世界の中心にある偉大な山にいらっしゃいます」
またカタカナ出てきた……。ちょこちょこ出てくるな……。
「ぐれーと、まうんてん??」
「はい、フェンリル様は4か月前に魔王との戦いで傷つき、体を休めていると聞いております。フェンリル様はもう千歳。そろそろ代替わりの時期でしょう」
「ほう……千歳」と言うことは私もそんなに生きるのだろうか。14、5歳で死ぬと思っていたのに。
「わが祖国妖精国が魔王に封印され100年が経ちました。気力、神力ともに満ちたあなた様が大神様となれば、封印が解けるかも知れません」
またカタカナ出てきた。しかもこれは英語ではない気がする。
しかし祖国が封印?封印は山根君が貸してくれた漫画に描いてあった。つまり封じることだと。
そう言えばこの人なんかを探してるって初めに挨拶してくれたかな?
「あるふふぇるむ?を探してるって言ってませんでしたか?」
「ええ、私の名は100年の時を彷徨うものですので、使命により光のエルフに属するものであっても妖精国より出奔しておりました。ですから魔王が妖精国を封印した際にも封印より免れました。私の名は私を救うためにあり、また故国を救うためにあったのだと思いました」
うん、良く分からなかった!私は犬だけど乾いた笑いで誤魔化す。
神様に間違えて殺されたこと。チーズをつけて転生させると言われたこと。間違えて犬にされたこと。間違えを正すために、この世界に移動させられたこと。そしてそこに紗枝ちゃんもいたこと。
その全てを話してみた。山根君似の神様のおっちょこちょいなところも、6割程度しか話さなかった。あんなでも一応神だ。恥は晒さない方が良いだろう。
「チーズをつけた……ですか?チーズとは動物のミルクを発酵させて作る保存食ですが、何の関係が?」
おお、この世界にもチーズはあるのか!ではなく、たぶんそれじゃない。
「特別な力みたいな事を、私の前世の部下が言ってました」
「チーズではなく、チートですね」
「………………だった気がします」
犬だから赤くならない筈なのに、赤くなる。恥ずかしい!だからカタカタは苦手なんだ!
そもそも日本人はなぜあんなにカタカタが好きなのか。外国語がかっこいいと思っているのが分からない。同じ言語じゃないか!
会社の用語も英語が増えた。ウィンウィン、リスケ、アジェンダ、エビデンス、いっぱい、いっぱい!
しかもすぐ略す。FYI、TYT、OJT、CHO、AP、AR意味が分からない!日本人なら日本語で勝負して欲しいものだ!と心の中でしか言えない小心者だった。それは今も同じだ。せっかく生まれ変わっても記憶があると人は変われないし、変わらない。
「お話を聞く限り、やはり貴方様が大神王フェンリル様の後任ですね」
「狼?」
「大神です。神の化身。この世界を魔の手から守る偉大なお方です」
「………………」
どうやら動物の狼ではなかったらしい。
しかし、大神?犬なのに?
「私は神様になったのですか?」
「神とは違います。神は様々な世界の秩序を守り、世界を生み出す方々の事です。大神様はこの世界を守るために神から遣わされた神の使いです」
大神なんて神より偉そうだけど、違うらしい。なんだかややこしいな。
「はぁ、そう言えばそんなことを言っていた気がします。それで私は何をすれば良いんですか?そしてこの子を帰すことができますか?」
「そうですね――まずはあなたの役割ですが、下層世界を支配する魔王を頂点とした魔族と戦う事です」
「…………戦う……」
なんて物騒なことを言うんだろう。いや、さっき私を狙ってくる魔物たちは倒したけど、それだって死体のグロテスクさにドン引きしているのに!
そもそも魔王って何だろう。魔物の王様だから魔王?あ、そう言えば山根君に借りた漫画に載っていたな。魔王。
人類を襲う恐ろしい魔物の主人だったり、人類に虐げられる魔物の王だったり、話によって役割はバラバラだったけど、強くて角の生えた人が多かった。どうやって寝るんだろうなぁ、服を着るとき角が引っかからないかなぁって思っていた。
いやいや、違う、違う、そんな無駄なことを考えている場合じゃない。
そもそも、なぜ争うのだろう。
「どうして魔王と戦う必要があるのですか?」
「そういうものだからです」
そういうものらしい…………。
「いや!待ってください。それは理屈が通らないですよ?土地をめぐっての侵略戦争とか、宗教間戦争とか、なんか理由があるでしょう?」
「どうでしょうか……理由を考えたことはなかったです。そう言うものだと思っていたので……」
「…………ソウデスカ」
そうだな。山根君似の神様が私を送るところだ。そういうものかもしれない。
「あなたは実に興味深いことを仰いますね……確かに我々と魔物はなぜ争うのでしょうか。魔物は襲ってくるものだと私は思っていました。だがその理由など考えたこともありません」
「私を襲ってきた魔物は、私を食べたいって言ってましたけどね……」
「ああ、あなたの見た目は犬ですからね。美味しそうに見えたのでしょう」
「その言い方ですと、人は食べないと言っているようですが?」
「あなたは会話が通じるものを食せますか?」
「ムリデスネ…………」
うん、たぶん、無理だと思う。今の私は犬だけど、そこは無理だと思う。
しかし不思議な世界だ。なぜ争うのかを考えず争っているとは。私の常識は通じないようだ。こういう世界にふさわしいのは山根君のような常識から少し外れた人間だろう。私のように頭も固く、漫画も読まない、ゲームもしない人間はふさわしくない。
「その子供を還す方法ですが、今現在この世界を守る大神王フェンリル様にお会いするのが一番の近道だと思われます。大神王が前任者から引継ぎをする際に、神が祝福をするために現れると聞いております。その際に神へと依頼すれば良いでしょう」
「ありがとうございます!」
やった、それは朗報だ。
だがそのためには、魔王と戦うという意味の分からない仕事を引き継ぐことになるのか……。紗枝ちゃんの幸せと、私の不幸せ。どちらが良いかと言えば、紗枝ちゃんの幸せに決まっている。
そもそも理由も分からない争いに身を投じる必要があるのだろうか。いや、ない!つまり戦争しなきゃ良いのだ。
君子危うきに近寄らず!危ない事には近づかないに限る!私のモットーはラブ&ピース!平和が一番!
「それで、そのふぇんりるさんはどこにいますか?」
「フェンリル様は世界の中心にある偉大な山にいらっしゃいます」
またカタカナ出てきた……。ちょこちょこ出てくるな……。
「ぐれーと、まうんてん??」
「はい、フェンリル様は4か月前に魔王との戦いで傷つき、体を休めていると聞いております。フェンリル様はもう千歳。そろそろ代替わりの時期でしょう」
「ほう……千歳」と言うことは私もそんなに生きるのだろうか。14、5歳で死ぬと思っていたのに。
「わが祖国妖精国が魔王に封印され100年が経ちました。気力、神力ともに満ちたあなた様が大神様となれば、封印が解けるかも知れません」
またカタカナ出てきた。しかもこれは英語ではない気がする。
しかし祖国が封印?封印は山根君が貸してくれた漫画に描いてあった。つまり封じることだと。
そう言えばこの人なんかを探してるって初めに挨拶してくれたかな?
「あるふふぇるむ?を探してるって言ってませんでしたか?」
「ええ、私の名は100年の時を彷徨うものですので、使命により光のエルフに属するものであっても妖精国より出奔しておりました。ですから魔王が妖精国を封印した際にも封印より免れました。私の名は私を救うためにあり、また故国を救うためにあったのだと思いました」
うん、良く分からなかった!私は犬だけど乾いた笑いで誤魔化す。
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