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オカン公爵令嬢は潜入する。
32話 決戦(2)
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「このゲームのことを知ってるんですか⁉︎『ムーンバタフライ』?やっぱり聞いたことがないゲームだわ!」
いきなり女性言葉になった上に、オカンに近寄り肩を掴もうとしていたレオポルドの肩を掴み、ふたりの間に割り込んで入る。危ない!レオポルドが!
オカンの肩を掴んだが最後、オカンはセクハラ(?)だと怒るだろうし、オヤジは嫉妬から憤怒の表情に変わるだろう。いや、レオポルドは女だけどさ。
そしてそんな俺の焦りを知らないオカンは、エヴァンジェリーナの仮面も忘れて普通に相手をする。
「知らないの?正式名称は『月に集う蝶の宴』は略して『月蝶』、別名『ムーンバタフライ』よ。くそBLゲーム」
「『月に集う蝶の宴』? 知らないわ。BLゲームなのとクソゲーだってのは納得だけど。それでこのゲームの媒体は?」
「媒体……ああ、ゲーム機はね……なんだっけ?PCかしら?」
「PC……え?何年代のゲーム?えーっと西暦で!」
「西暦?懐かしいわね。転生者同士だと楽ね……えっと、いつやったかしら、年をとると昨日のことも10年前のことも一緒に感じるから……確か……えーっと」
オカンとレオポルドはなんか問題ないくらい普通の会話だ。レオポルドもオヤジの時と違って悪意も敵意もない。こちらの方が本当のレオポルドみたいだ。だってイキイキしてる。
「燈子さん、この国がゲームの世界観で作られていた時、外の世界ではアッフォガートが流行ってるって言ってましたよ。それが流行ってた時期とか?」
「麗ちゃんナイス!そうね、アッフォガードと言えば……咲夜が小学校6年生くらいの時だったわね。ひたすら食べてたわ……咲夜が。かわいかったわ~、咲夜が。じゃなくてだから、そして私達が死んだのが……」
引き算したオカンがレオポルドに答えを教えた。レオポルドはまだ、未成年だったと騒いでる。なんだか平和だ。こんな形で一件落着するなら、それで良いかもしれない。
オカンが俺を睨んで、顎をクイっとする。俺がレオポルドの肩を掴んでいるから離せと言いたいのだろう。手を離すと、3人でキャッキャッと話し出した。
「やっぱりクソゲーだったんですね!しかもPCかぁ、私そっちの媒体ではやってないから分らなかったです。『アイタソ』は知ってたんですけど……」
「ああ、『アイタソ』は違うもんね。クソゲーだったけど」
「クソゲーじゃないですよ!人気作品ですよ‼︎」
「嘘でしょう?『アイタソ』が?」
「あ……でも攻略サイトとかいっぱいあったし、攻略本もあったから人気な方じゃないですか?」
会話が平和だ。
ただ、俺が拐われて、俺がヘンテコなゲームのキャラをさせられて、そして俺が死にかけて、そしてそしてオカンとオヤジに振り回されただけだ。いつものことだ。満足したかな?試練の神は。
満足したならもう当面試練とか与えないで頂きたいです‼︎
だれ推しだなんだ言い出した3人から離れようと俺は一歩二歩と下がる。すると呆然としているオヤジとぶつかった。
「オヤジ?どうしたの?」
「睨み合いをしていた相手がいきなり消えて、普通に会話をしているんだよ?その豹変振りに驚かない人はいないだろう?」
「ああ、まぁ、そうだね。でもそれは俺たちと一緒じゃないかな?レオポルドの時は国を背負っているからああいった強気な態度だけど、それがなくなれば普通の人なんだよ。見てよ、今はレオポルドもオカンも麗も楽しそうに話ているよ。平和が一番だから良いんじゃない?」
「…………咲夜がなぜPTSDにならないか分かった気がするよ。どうして僕達の子供なのにそんなにお人好しなんだろうね。不思議で仕方ないよ」
「なんだろう……遠回しに悩みがない人認定された気がするけど?」
「そう……良かったよ。この程度の嫌味が分かるようになっただけ成長したと言うことだね。転生前にも僕は咲夜にこの手の言葉を言ってたけど、大抵『褒められた~』って嬉しそうに笑ってたから、将来は変な詐欺に騙されるんじゃないかと心配してたんだ」
「そうだったんだ……そんな心配をしてたんだね、ありがとう。気をつけるよ。ところでふと思ったんだけど、ルーナ国は月の神の国だって言ってたでしょう?だから神剣を持ってこなかったって。あれってなに?また嘘ついた?」
「咲夜、成長したね!お父さんは嬉しいよ。確かに嘘だよ。でもその嘘は麗ちゃんから神剣を手放させるための嘘なんだよ。って……
オヤジの言葉が止まり、女性陣に視線が向けられた。何かの脅威を見つけたような表情に俺も思わず、女性達を見る。
「咲夜……まずい!」
「へ?」
オヤジの言葉の意味が分からず、俺は目を瞬いた。
いきなり女性言葉になった上に、オカンに近寄り肩を掴もうとしていたレオポルドの肩を掴み、ふたりの間に割り込んで入る。危ない!レオポルドが!
オカンの肩を掴んだが最後、オカンはセクハラ(?)だと怒るだろうし、オヤジは嫉妬から憤怒の表情に変わるだろう。いや、レオポルドは女だけどさ。
そしてそんな俺の焦りを知らないオカンは、エヴァンジェリーナの仮面も忘れて普通に相手をする。
「知らないの?正式名称は『月に集う蝶の宴』は略して『月蝶』、別名『ムーンバタフライ』よ。くそBLゲーム」
「『月に集う蝶の宴』? 知らないわ。BLゲームなのとクソゲーだってのは納得だけど。それでこのゲームの媒体は?」
「媒体……ああ、ゲーム機はね……なんだっけ?PCかしら?」
「PC……え?何年代のゲーム?えーっと西暦で!」
「西暦?懐かしいわね。転生者同士だと楽ね……えっと、いつやったかしら、年をとると昨日のことも10年前のことも一緒に感じるから……確か……えーっと」
オカンとレオポルドはなんか問題ないくらい普通の会話だ。レオポルドもオヤジの時と違って悪意も敵意もない。こちらの方が本当のレオポルドみたいだ。だってイキイキしてる。
「燈子さん、この国がゲームの世界観で作られていた時、外の世界ではアッフォガートが流行ってるって言ってましたよ。それが流行ってた時期とか?」
「麗ちゃんナイス!そうね、アッフォガードと言えば……咲夜が小学校6年生くらいの時だったわね。ひたすら食べてたわ……咲夜が。かわいかったわ~、咲夜が。じゃなくてだから、そして私達が死んだのが……」
引き算したオカンがレオポルドに答えを教えた。レオポルドはまだ、未成年だったと騒いでる。なんだか平和だ。こんな形で一件落着するなら、それで良いかもしれない。
オカンが俺を睨んで、顎をクイっとする。俺がレオポルドの肩を掴んでいるから離せと言いたいのだろう。手を離すと、3人でキャッキャッと話し出した。
「やっぱりクソゲーだったんですね!しかもPCかぁ、私そっちの媒体ではやってないから分らなかったです。『アイタソ』は知ってたんですけど……」
「ああ、『アイタソ』は違うもんね。クソゲーだったけど」
「クソゲーじゃないですよ!人気作品ですよ‼︎」
「嘘でしょう?『アイタソ』が?」
「あ……でも攻略サイトとかいっぱいあったし、攻略本もあったから人気な方じゃないですか?」
会話が平和だ。
ただ、俺が拐われて、俺がヘンテコなゲームのキャラをさせられて、そして俺が死にかけて、そしてそしてオカンとオヤジに振り回されただけだ。いつものことだ。満足したかな?試練の神は。
満足したならもう当面試練とか与えないで頂きたいです‼︎
だれ推しだなんだ言い出した3人から離れようと俺は一歩二歩と下がる。すると呆然としているオヤジとぶつかった。
「オヤジ?どうしたの?」
「睨み合いをしていた相手がいきなり消えて、普通に会話をしているんだよ?その豹変振りに驚かない人はいないだろう?」
「ああ、まぁ、そうだね。でもそれは俺たちと一緒じゃないかな?レオポルドの時は国を背負っているからああいった強気な態度だけど、それがなくなれば普通の人なんだよ。見てよ、今はレオポルドもオカンも麗も楽しそうに話ているよ。平和が一番だから良いんじゃない?」
「…………咲夜がなぜPTSDにならないか分かった気がするよ。どうして僕達の子供なのにそんなにお人好しなんだろうね。不思議で仕方ないよ」
「なんだろう……遠回しに悩みがない人認定された気がするけど?」
「そう……良かったよ。この程度の嫌味が分かるようになっただけ成長したと言うことだね。転生前にも僕は咲夜にこの手の言葉を言ってたけど、大抵『褒められた~』って嬉しそうに笑ってたから、将来は変な詐欺に騙されるんじゃないかと心配してたんだ」
「そうだったんだ……そんな心配をしてたんだね、ありがとう。気をつけるよ。ところでふと思ったんだけど、ルーナ国は月の神の国だって言ってたでしょう?だから神剣を持ってこなかったって。あれってなに?また嘘ついた?」
「咲夜、成長したね!お父さんは嬉しいよ。確かに嘘だよ。でもその嘘は麗ちゃんから神剣を手放させるための嘘なんだよ。って……
オヤジの言葉が止まり、女性陣に視線が向けられた。何かの脅威を見つけたような表情に俺も思わず、女性達を見る。
「咲夜……まずい!」
「へ?」
オヤジの言葉の意味が分からず、俺は目を瞬いた。
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