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オカン公爵令嬢は潜入する。
30話 レオポルド・ヌオヴァ
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「どうして?どうして気付かれた⁉︎」
焦る私は同じことばかりを繰返す。
私は完璧だと思っていた。それだけの力を私は与えられた。
『あなたにはその権利があるのよ』と言ってくれのは美しい姿の太陽の女神。『あなたには大いなる力を与えるわ』そう言って優しく送り出してくれた。
神の恩恵を受け、この世界に転生した私はまずは鏡を見た。菫の花のような紫色の瞳。コキアの様な神秘的な赤茶色の髪。化粧もしていないのに桜色の頬。大きな瞳にぷっくりとした可愛い唇。あまりにもの可愛らしさに……息を呑んだ。
そうやって喜んだのも束の間、転生した国には変な風習があった。海賊がルーツだというこの国は、20歳になるまで女の子は男の子として育てるという。
昔、海賊は女性を拐う風習があったそうだ。だから拐われないように男装するという。なんだそれ?とは思ったけれど、それがこの国のルールだから仕方がないと思い、この美貌を隠して男装して過ごした。だけどそれでも良かった。なぜなら男装しても、私は綺麗だったから。しかも神から与えられたチート能力のお陰で、周囲からも羨望の眼差しで見られる。それはとてもとても気分の良いものだった。
そうして誰からも認められた私は当然のように次期自治領主代理として、フォルトゥーナ王国で行われた王太子の誕生日祝賀会に赴くように言われ、旅立った。
そこで私は気づいた。この世界がゲームの世界であることに。
フォルトゥーナ王国の舞台は有名な『あなたと見る黄昏』、略して『アイタソ』の世界だった。ゲームの通りにアダルベルト王太子は勇者だったし、見惚れるくらいに美しかった。
自分よりも遥に。
転生して手に入れた美しい姿と力は、アダルベルトに比べればちっぽけなものに見えた。彼の太陽の光りよりも輝き、黄金よりも美しい金の髪。鋭いけれど優しい瞳も吸い込まれそうに黄金色に輝き、すっと高い鼻、柔らかそうな唇、そして均整のとれた完璧な姿に思わず見惚れてしまった。
そんなアダルベルト王太子は、ゲームの選択肢のひとりであった婚約者コスタンツァ・メルキオルリを選んでいた。そこまでは良かった。知っている通りだ。私もコスタンツァでプレイした。だけどもう一方の選択肢であるエヴァンジェリーナはなぜか、魔王であるセヴェーロと婚約していた。そもそも魔王であるセヴェーロが生きていること自体がおかしいのに!
だけどここはゲームの世界でありながらも現実だ。そもそも私はアダルベルト激推しでもあった。だから生推しが見れる幸せを噛み締めることで納得することにした。
彼らがゲームのキャラだと言うことは、この世界は死ぬ前に小説や漫画で流行っていた転生系の世界ではないだろうかと疑い始めた。そもそも私だって神様のミスで死んで転生させられ人間だ。『アイタソ』の主要キャラ4人の仲の良さにも違和感がある。まるで家族のようだ。
と言うことは私も何かのゲームのキャラだと思い始めた。だが、分からない。とりあえず『アイタソ』のキャラでないことだけは分かる。なぜなら世界観が違いすぎる。こんなゲームは見たことがない。ゲーオタだった私でも分からないゲーム。相当売れていないゲームなんだろう。彼らは有名なゲームなのに……。私は何かも分からないゲーム。
それに、彼らに比べれば姿もイマイチだ。圧倒的な画力の差を感じた。売れていないゲーム。クソゲー。そんな世界にしか転生できなかった自分に腹が立ち、神から頂いた圧倒的な魔力を持ってこの世界がなんのゲームかを探ることにした。
「それにアダルベルト王太子を巻き込んだのが、失敗だった。でも……見たかった」
そう……彼を。
「アダルベルト王太子を隅から隅までじっくり全てを舐るように眺めたかっただけなのに――‼︎‼︎」
力いっぱい叫んだと同時に、私の背後に推しが転移してくる気配がした。
焦る私は同じことばかりを繰返す。
私は完璧だと思っていた。それだけの力を私は与えられた。
『あなたにはその権利があるのよ』と言ってくれのは美しい姿の太陽の女神。『あなたには大いなる力を与えるわ』そう言って優しく送り出してくれた。
神の恩恵を受け、この世界に転生した私はまずは鏡を見た。菫の花のような紫色の瞳。コキアの様な神秘的な赤茶色の髪。化粧もしていないのに桜色の頬。大きな瞳にぷっくりとした可愛い唇。あまりにもの可愛らしさに……息を呑んだ。
そうやって喜んだのも束の間、転生した国には変な風習があった。海賊がルーツだというこの国は、20歳になるまで女の子は男の子として育てるという。
昔、海賊は女性を拐う風習があったそうだ。だから拐われないように男装するという。なんだそれ?とは思ったけれど、それがこの国のルールだから仕方がないと思い、この美貌を隠して男装して過ごした。だけどそれでも良かった。なぜなら男装しても、私は綺麗だったから。しかも神から与えられたチート能力のお陰で、周囲からも羨望の眼差しで見られる。それはとてもとても気分の良いものだった。
そうして誰からも認められた私は当然のように次期自治領主代理として、フォルトゥーナ王国で行われた王太子の誕生日祝賀会に赴くように言われ、旅立った。
そこで私は気づいた。この世界がゲームの世界であることに。
フォルトゥーナ王国の舞台は有名な『あなたと見る黄昏』、略して『アイタソ』の世界だった。ゲームの通りにアダルベルト王太子は勇者だったし、見惚れるくらいに美しかった。
自分よりも遥に。
転生して手に入れた美しい姿と力は、アダルベルトに比べればちっぽけなものに見えた。彼の太陽の光りよりも輝き、黄金よりも美しい金の髪。鋭いけれど優しい瞳も吸い込まれそうに黄金色に輝き、すっと高い鼻、柔らかそうな唇、そして均整のとれた完璧な姿に思わず見惚れてしまった。
そんなアダルベルト王太子は、ゲームの選択肢のひとりであった婚約者コスタンツァ・メルキオルリを選んでいた。そこまでは良かった。知っている通りだ。私もコスタンツァでプレイした。だけどもう一方の選択肢であるエヴァンジェリーナはなぜか、魔王であるセヴェーロと婚約していた。そもそも魔王であるセヴェーロが生きていること自体がおかしいのに!
だけどここはゲームの世界でありながらも現実だ。そもそも私はアダルベルト激推しでもあった。だから生推しが見れる幸せを噛み締めることで納得することにした。
彼らがゲームのキャラだと言うことは、この世界は死ぬ前に小説や漫画で流行っていた転生系の世界ではないだろうかと疑い始めた。そもそも私だって神様のミスで死んで転生させられ人間だ。『アイタソ』の主要キャラ4人の仲の良さにも違和感がある。まるで家族のようだ。
と言うことは私も何かのゲームのキャラだと思い始めた。だが、分からない。とりあえず『アイタソ』のキャラでないことだけは分かる。なぜなら世界観が違いすぎる。こんなゲームは見たことがない。ゲーオタだった私でも分からないゲーム。相当売れていないゲームなんだろう。彼らは有名なゲームなのに……。私は何かも分からないゲーム。
それに、彼らに比べれば姿もイマイチだ。圧倒的な画力の差を感じた。売れていないゲーム。クソゲー。そんな世界にしか転生できなかった自分に腹が立ち、神から頂いた圧倒的な魔力を持ってこの世界がなんのゲームかを探ることにした。
「それにアダルベルト王太子を巻き込んだのが、失敗だった。でも……見たかった」
そう……彼を。
「アダルベルト王太子を隅から隅までじっくり全てを舐るように眺めたかっただけなのに――‼︎‼︎」
力いっぱい叫んだと同時に、私の背後に推しが転移してくる気配がした。
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