79 / 90
オカン公爵令嬢は潜入する。
27話 仕様が無くなる時
しおりを挟む
俺を貫いたのは静電気の様な微弱な魔力での攻撃だ。その魔力を逆探知するように探る。辿れないようにしてるのか色んな人を経由してる。コンピュータのウイルスみたいだ。あちらこちらに痕跡を残すことで本体を見つけにくくしてる。
ゲームはしない俺だけど、プログラミングは好きだった。医者を目指していた俺はこれからの医療にも必要だと思って積極的に学んだ。この世界の魔法もプログラミングに似てる。魔法を組み合わせ必要な魔力を乗せる。前世の記憶が戻ってからの俺の魔法は更に研ぎ澄まされたと言っても良い。ヘンテコ魔法を使う麗やオカンには色んな意味で勝てないけど、繊細な魔法は俺の方が上手くできる。
だから俺はどんどん魔力を辿っていく。絡まった糸のような魔力を追っていくと終着点が見えた。赤い魔力だ。それなりに大きい。この魔力には覚えがある。そして見えたのは赤茶色のサラサラとした髪……。
もうすぐ正体が分かる‼︎と思ったと同時に弾かれた。
「咲夜‼︎」
「――――っ‼︎」
オヤジの叫び声に目を瞬く。そしてそんな俺の目に一番初めに飛び込んできたのは……。
金;アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレ
好感度75% 親密度 62% 恋愛度 40%
俺のオヤジへの好感度が増えてる‼︎
密着度を表す親密度については分かる。オヤジは弾かれた俺を抱え込むようにしているからだ。だから仕方ない。だけど好感度が増えるって……俺がオヤジを好きになっている理由が分からない。
いや、今は好感度は無視しよう。大事なのはそこじゃない。
「オヤジ、俺は?」
「ああ、咲夜が敵を感知していたことは分かっているよ。そしたら咲夜がいきなり弾かれるように飛んできたからびっくりしたよ」
「うん、あともう少しという所で弾かれた。初めの攻撃とは桁違いな威力でびっくりしたよ」
「初め?」
「攻撃は2回来たんだ。静電気みたいな攻撃と、最後の攻撃」
「ああ、ではそれで周りは気絶したのかな?見てご覧、僕たち以外はみんな気絶しているし、風景も変わったよ」
オヤジに言われて周りを見る。確かにウーゴも、そして廊下にいた生徒も、教室から俺たちを覗いていた生徒たちも気絶している。
そしてよく見ると景色も変わっている。さっきまでは現実味のない世界だった。壁や廊下には埃もシミもヒビすらもなく、窓ガラスは曇りひとつすらない。だけど今は違う。長く使われている校舎の壁は少し黄ばみ、目立たない程度のヒビもある。掃除していても常に生徒が歩く廊下の隅には埃もあるし、なんならゴミだって落ちている。そして窓から見える空の色は鮮やかに眩しく美しい。
「オヤジも『仕様』が解けたね?」
オヤジの青銅色の髪がサラサラと靡いている。血のように赤い瞳も健在だ。さっきまでは金髪に青い眼をしていたのに。
「咲夜もだね。ちゃんと金眼に戻ったよ。おめでとう」
「そうなんだ……良かった。これで国に帰れるよ」
「生徒たちの制服を見てご覧。こうして見ると、今までの現実感のなさが良く分かるね」
目の前で倒れているウーゴの制服を見るとには当たり前のように皺がある。そういえばさっきまで制服には皺ひとつなかった。そして先ほどまで忘れていた違いもちゃんと見えた。
「なんだっけ、確か制服って金の刺繍が男性、銀の刺繍が女性だっけ?」
「完全に思い出したね。金は太陽で男性を表し、銀は月で女性を表す。そしてこの国は成人するまで男装する義務がある。海賊がルーツであるこの国は女性が拐われる事を避けるために、昔からこの風習を守っているんだ」
「うん、そうだったね。そして攻略対象の4人は皆、女性だ。ウーゴ・メッザ以外は!」
「そうだよ。だから僕にオちない……そう思わなければやってられないよね?」
落ち込むオヤジを無視して、俺はウーゴを覗く。白地に金の刺繍と金のボタン。確かに男性の証。そしてさっきまで海苔みたいなのっぺりした黒髪だったのが、ツヤツヤした黒髪へと変わっている。今まで男性だと思っていた学園の生徒たちも、よく見ると違いが分かる。
普通の世界に戻った……にも関わらず、どうして俺のオヤジへの数値が見えるんだろう?それだけが謎だ。
「この数値があるということは、完全には敵の魔法が解けていないようだね」
ウーゴのオヤジへの数値を見る。
黒;ウーゴ・メッザ
好感度32% 親密度 0% 恋愛度 0%
「…………爆下がりだね」
「男だからね……」
悔しそうに語るオヤジに、俺は思わず吹き出した。
ゲームはしない俺だけど、プログラミングは好きだった。医者を目指していた俺はこれからの医療にも必要だと思って積極的に学んだ。この世界の魔法もプログラミングに似てる。魔法を組み合わせ必要な魔力を乗せる。前世の記憶が戻ってからの俺の魔法は更に研ぎ澄まされたと言っても良い。ヘンテコ魔法を使う麗やオカンには色んな意味で勝てないけど、繊細な魔法は俺の方が上手くできる。
だから俺はどんどん魔力を辿っていく。絡まった糸のような魔力を追っていくと終着点が見えた。赤い魔力だ。それなりに大きい。この魔力には覚えがある。そして見えたのは赤茶色のサラサラとした髪……。
もうすぐ正体が分かる‼︎と思ったと同時に弾かれた。
「咲夜‼︎」
「――――っ‼︎」
オヤジの叫び声に目を瞬く。そしてそんな俺の目に一番初めに飛び込んできたのは……。
金;アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレ
好感度75% 親密度 62% 恋愛度 40%
俺のオヤジへの好感度が増えてる‼︎
密着度を表す親密度については分かる。オヤジは弾かれた俺を抱え込むようにしているからだ。だから仕方ない。だけど好感度が増えるって……俺がオヤジを好きになっている理由が分からない。
いや、今は好感度は無視しよう。大事なのはそこじゃない。
「オヤジ、俺は?」
「ああ、咲夜が敵を感知していたことは分かっているよ。そしたら咲夜がいきなり弾かれるように飛んできたからびっくりしたよ」
「うん、あともう少しという所で弾かれた。初めの攻撃とは桁違いな威力でびっくりしたよ」
「初め?」
「攻撃は2回来たんだ。静電気みたいな攻撃と、最後の攻撃」
「ああ、ではそれで周りは気絶したのかな?見てご覧、僕たち以外はみんな気絶しているし、風景も変わったよ」
オヤジに言われて周りを見る。確かにウーゴも、そして廊下にいた生徒も、教室から俺たちを覗いていた生徒たちも気絶している。
そしてよく見ると景色も変わっている。さっきまでは現実味のない世界だった。壁や廊下には埃もシミもヒビすらもなく、窓ガラスは曇りひとつすらない。だけど今は違う。長く使われている校舎の壁は少し黄ばみ、目立たない程度のヒビもある。掃除していても常に生徒が歩く廊下の隅には埃もあるし、なんならゴミだって落ちている。そして窓から見える空の色は鮮やかに眩しく美しい。
「オヤジも『仕様』が解けたね?」
オヤジの青銅色の髪がサラサラと靡いている。血のように赤い瞳も健在だ。さっきまでは金髪に青い眼をしていたのに。
「咲夜もだね。ちゃんと金眼に戻ったよ。おめでとう」
「そうなんだ……良かった。これで国に帰れるよ」
「生徒たちの制服を見てご覧。こうして見ると、今までの現実感のなさが良く分かるね」
目の前で倒れているウーゴの制服を見るとには当たり前のように皺がある。そういえばさっきまで制服には皺ひとつなかった。そして先ほどまで忘れていた違いもちゃんと見えた。
「なんだっけ、確か制服って金の刺繍が男性、銀の刺繍が女性だっけ?」
「完全に思い出したね。金は太陽で男性を表し、銀は月で女性を表す。そしてこの国は成人するまで男装する義務がある。海賊がルーツであるこの国は女性が拐われる事を避けるために、昔からこの風習を守っているんだ」
「うん、そうだったね。そして攻略対象の4人は皆、女性だ。ウーゴ・メッザ以外は!」
「そうだよ。だから僕にオちない……そう思わなければやってられないよね?」
落ち込むオヤジを無視して、俺はウーゴを覗く。白地に金の刺繍と金のボタン。確かに男性の証。そしてさっきまで海苔みたいなのっぺりした黒髪だったのが、ツヤツヤした黒髪へと変わっている。今まで男性だと思っていた学園の生徒たちも、よく見ると違いが分かる。
普通の世界に戻った……にも関わらず、どうして俺のオヤジへの数値が見えるんだろう?それだけが謎だ。
「この数値があるということは、完全には敵の魔法が解けていないようだね」
ウーゴのオヤジへの数値を見る。
黒;ウーゴ・メッザ
好感度32% 親密度 0% 恋愛度 0%
「…………爆下がりだね」
「男だからね……」
悔しそうに語るオヤジに、俺は思わず吹き出した。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください
むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。
「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」
それって私のことだよね?!
そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。
でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。
長編です。
よろしくお願いします。
カクヨムにも投稿しています。
盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない
当麻月菜
恋愛
生まれた時から雪花の紋章を持つノアは、王族と結婚しなければいけない運命だった。
だがしかし、攫われるようにお城の一室で向き合った王太子は、ノアに向けてこう言った。
「はっ、誰がこんな醜女を妻にするか」
こっちだって、初対面でいきなり自分を醜女呼ばわりする男なんて願い下げだ!!
───ということで、この茶番は終わりにな……らなかった。
「ならば、私がこのお嬢さんと結婚したいです」
そう言ってノアを求めたのは、盲目の為に王位継承権を剥奪されたもう一人の王子様だった。
ただ、この王子の見た目の美しさと薄幸さと善人キャラに騙されてはいけない。
彼は相当な策士で、ノアに無自覚ながらぞっこん惚れていた。
一目惚れした少女を絶対に逃さないと決めた盲目王子と、キノコをこよなく愛する魔力ゼロ少女の恋の攻防戦。
※但し、他人から見たら無自覚にイチャイチャしているだけ。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる