61 / 90
オカン公爵令嬢は潜入する。
9話 保健室の麗しい住人(2)
しおりを挟む
「なに?オカン……」
諦めてオカンをじっと見る。どうしてわざわざ男装してやってきたのかと聞いたら、男子校と言えば、男装して潜入に決まってるじゃない。鉄板よ!と言われた。
そんなオカンはエヴァルドと言う名前で、俺のクラスに転入してきた。麗の名前はコスタンツォだ。麗も同じクラスだ。こんな時期に3人も転入っておかしくないか?と思ったけど、ふたりは俺の従者という名目で入学した。
文句のひとつも言おうと思ったが、いけしゃあしゃあと保健室にいたオヤジを見た時に、どうでも良くなった。
「私は指示したわよね?ジェラルドを顎を掴んで、吐息がかかるような距離で言葉を言えって!あんた、息でも臭いの?」
「そんなの出来るわけないだろ!オカンはなにを考えてるんだ⁉︎」
そんな恥ずかしい事を良く息子に命令出来るものだ!しかも恋人が見てる前でなんて出来るわけがない!そして俺の息は臭くない!たぶん‼︎
「その位できないで、どうやってハーレム築くのよ!我を捨てて、演技してるつもりでやりなさい!それでも完璧王太子アダルベルトなの⁉︎」
「アダルベルトは関係ないだろ!そもそもあのキザったらしい意味が分からない台詞を噛まずに笑わずに言えただけ褒めてくれ!」
「私の考えた台詞が気に入らないって言うのー!」
「じゃあ、オカンがやれば良いだろう!俺がハーレム築く必要ないだろう!」
「あんたじゃなきゃ意味ないって言ってるでしょ!私だってもっとかっこよくて、素敵な相手だったら、代わってるわよ!でもこのゲームのキャラは中途半端な見た目だから、触手が動かないの‼︎」
「触手ってなんだよ!オカンはタコかイカなのか⁉︎」
「誰が軟体動物じゃ!興味が湧かないって意味に決まってるでしょ!」
「それは……興味が湧いたら、攻略すると言うことかな?」
オヤジが割って入ってきた。笑ってるけど怒ってる。
この表情は前世の頃から良くしていた。オヤジはかなり嫉妬深い。こういう時は三十六計逃げるに如かず。オヤジとオカンの喧嘩には関わらないのが、我が家のルールだ。
一触即発なふたりを尻目に一歩、二歩と距離を取り、そのまま麗の隣へと行く。オヤジからタブレット、もといウツオ君を譲り受けて、それを食い入るように見てる。ウツオ君には俺が写っているをしかもさっきジェラルドに恥ずかしい台詞と言ってたやつだ。
「やっぱりアダルベルトさま、かっこいい~」
「そ……そう?」
あ、これはかなり嬉しい感想だ。転生して良かった。
「うん。咲夜君もそう思わない?」
「ん?んん?俺とアダルベルトは同一人物だけど?」
「うーん、そうなんだけど何か違うよね。だってこのアダルベルト様は背中に花を背負ってるもの」
「はな?」
ウツオ君を見るが当然、俺の背中には花などない。あるのは普通の風景だ。
「本当に花があるわけじゃないよ~。後ろに花を背負ってるみたいに、素敵に見えるって比喩だよ~」
「ああ、そういうことね」
俺は漫画もアニメもゲームも小説すら読まないから、その手の言葉は分からない。オカンと違って麗は的確に教えてくれるからとても助かる。
「なんかね、咲夜君は確かにアダルベルト様の見た目なんけど、こうやって話していると咲夜君としか思えないの。でも外交の時とか、このスチルもそうなんだけど、演技している時はアダルベルト様なんだな~って思えるの」
「それは――分かるよ。確かに俺だって、これは俺じゃないなって思うし、外交の時とか王侯会議とか、まぁ、その他諸々の王族として出席する時はアダルベルトの仮面を被るって思ってやってるし」
「ふふ、じゃあ咲夜君を知っているのは私だけなんだね。嬉しいな」
ああ、こんな風に思ってはいけないんだろうけど、麗が一緒に転生してくれて良かった。麗がいなかったっら俺はどうなっていたんだろう。王族として義務感で結婚していたのだろうか。アダルベルトの仮面を一生涯被り続けたまま……。
「咲夜……雅也さんが見本を見せてくれるそうよ」
「うわ!オカン、びっくりさせるなよ!」
せっかく良い気持ちになっていたのに、背後からぬっと出てきたからびっくりする!それにしても、その頬が赤く蒸気しているように見えるのは気のせいだろうか。
「見本?なんのこ……と?」
言葉が止まったのには理由がある。なぜなら、オヤジがなぜかその長い髪をゆったりを掻き上げ、俺をじっとりとした目で見ているからだ。その視線に自然と釘付けになってしまう。
徐々に近づくオヤジから逃れることができない。金縛りにあうとはこの事ではないだろうか!
早くなる鼓動。冷や汗。そして荒くなる呼吸。自分で自分が制御できない!
そんな俺の状況など分かっているようにオヤジが俺の腰に手を回し、そのまま身体が寄せられていく。更に顎まで掴まれた!
まるで蜘蛛の巣に捉えられた獲物のようだ。それとも悪魔に魅入られた、哀れな生贄なのだろうか。逃れる術がないとはまさにこの事だ!
「僕はね……愛でられるより、愛でたいんだ。それが特に美しい華ならば――」
「ヒェ……」
思わずでた情けない声は仕方ない事だと思う。そして麗……俺にも見えたよ、オヤジの後ろの華が。妖艶な彼岸花が!
諦めてオカンをじっと見る。どうしてわざわざ男装してやってきたのかと聞いたら、男子校と言えば、男装して潜入に決まってるじゃない。鉄板よ!と言われた。
そんなオカンはエヴァルドと言う名前で、俺のクラスに転入してきた。麗の名前はコスタンツォだ。麗も同じクラスだ。こんな時期に3人も転入っておかしくないか?と思ったけど、ふたりは俺の従者という名目で入学した。
文句のひとつも言おうと思ったが、いけしゃあしゃあと保健室にいたオヤジを見た時に、どうでも良くなった。
「私は指示したわよね?ジェラルドを顎を掴んで、吐息がかかるような距離で言葉を言えって!あんた、息でも臭いの?」
「そんなの出来るわけないだろ!オカンはなにを考えてるんだ⁉︎」
そんな恥ずかしい事を良く息子に命令出来るものだ!しかも恋人が見てる前でなんて出来るわけがない!そして俺の息は臭くない!たぶん‼︎
「その位できないで、どうやってハーレム築くのよ!我を捨てて、演技してるつもりでやりなさい!それでも完璧王太子アダルベルトなの⁉︎」
「アダルベルトは関係ないだろ!そもそもあのキザったらしい意味が分からない台詞を噛まずに笑わずに言えただけ褒めてくれ!」
「私の考えた台詞が気に入らないって言うのー!」
「じゃあ、オカンがやれば良いだろう!俺がハーレム築く必要ないだろう!」
「あんたじゃなきゃ意味ないって言ってるでしょ!私だってもっとかっこよくて、素敵な相手だったら、代わってるわよ!でもこのゲームのキャラは中途半端な見た目だから、触手が動かないの‼︎」
「触手ってなんだよ!オカンはタコかイカなのか⁉︎」
「誰が軟体動物じゃ!興味が湧かないって意味に決まってるでしょ!」
「それは……興味が湧いたら、攻略すると言うことかな?」
オヤジが割って入ってきた。笑ってるけど怒ってる。
この表情は前世の頃から良くしていた。オヤジはかなり嫉妬深い。こういう時は三十六計逃げるに如かず。オヤジとオカンの喧嘩には関わらないのが、我が家のルールだ。
一触即発なふたりを尻目に一歩、二歩と距離を取り、そのまま麗の隣へと行く。オヤジからタブレット、もといウツオ君を譲り受けて、それを食い入るように見てる。ウツオ君には俺が写っているをしかもさっきジェラルドに恥ずかしい台詞と言ってたやつだ。
「やっぱりアダルベルトさま、かっこいい~」
「そ……そう?」
あ、これはかなり嬉しい感想だ。転生して良かった。
「うん。咲夜君もそう思わない?」
「ん?んん?俺とアダルベルトは同一人物だけど?」
「うーん、そうなんだけど何か違うよね。だってこのアダルベルト様は背中に花を背負ってるもの」
「はな?」
ウツオ君を見るが当然、俺の背中には花などない。あるのは普通の風景だ。
「本当に花があるわけじゃないよ~。後ろに花を背負ってるみたいに、素敵に見えるって比喩だよ~」
「ああ、そういうことね」
俺は漫画もアニメもゲームも小説すら読まないから、その手の言葉は分からない。オカンと違って麗は的確に教えてくれるからとても助かる。
「なんかね、咲夜君は確かにアダルベルト様の見た目なんけど、こうやって話していると咲夜君としか思えないの。でも外交の時とか、このスチルもそうなんだけど、演技している時はアダルベルト様なんだな~って思えるの」
「それは――分かるよ。確かに俺だって、これは俺じゃないなって思うし、外交の時とか王侯会議とか、まぁ、その他諸々の王族として出席する時はアダルベルトの仮面を被るって思ってやってるし」
「ふふ、じゃあ咲夜君を知っているのは私だけなんだね。嬉しいな」
ああ、こんな風に思ってはいけないんだろうけど、麗が一緒に転生してくれて良かった。麗がいなかったっら俺はどうなっていたんだろう。王族として義務感で結婚していたのだろうか。アダルベルトの仮面を一生涯被り続けたまま……。
「咲夜……雅也さんが見本を見せてくれるそうよ」
「うわ!オカン、びっくりさせるなよ!」
せっかく良い気持ちになっていたのに、背後からぬっと出てきたからびっくりする!それにしても、その頬が赤く蒸気しているように見えるのは気のせいだろうか。
「見本?なんのこ……と?」
言葉が止まったのには理由がある。なぜなら、オヤジがなぜかその長い髪をゆったりを掻き上げ、俺をじっとりとした目で見ているからだ。その視線に自然と釘付けになってしまう。
徐々に近づくオヤジから逃れることができない。金縛りにあうとはこの事ではないだろうか!
早くなる鼓動。冷や汗。そして荒くなる呼吸。自分で自分が制御できない!
そんな俺の状況など分かっているようにオヤジが俺の腰に手を回し、そのまま身体が寄せられていく。更に顎まで掴まれた!
まるで蜘蛛の巣に捉えられた獲物のようだ。それとも悪魔に魅入られた、哀れな生贄なのだろうか。逃れる術がないとはまさにこの事だ!
「僕はね……愛でられるより、愛でたいんだ。それが特に美しい華ならば――」
「ヒェ……」
思わずでた情けない声は仕方ない事だと思う。そして麗……俺にも見えたよ、オヤジの後ろの華が。妖艶な彼岸花が!
1
G-EG1MBQS9XD
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。
円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。
魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。
洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。
身動きもとれず、記憶も無い。
ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。
亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。
そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。
※この作品は「小説家になろう」からの転載です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない
当麻月菜
恋愛
生まれた時から雪花の紋章を持つノアは、王族と結婚しなければいけない運命だった。
だがしかし、攫われるようにお城の一室で向き合った王太子は、ノアに向けてこう言った。
「はっ、誰がこんな醜女を妻にするか」
こっちだって、初対面でいきなり自分を醜女呼ばわりする男なんて願い下げだ!!
───ということで、この茶番は終わりにな……らなかった。
「ならば、私がこのお嬢さんと結婚したいです」
そう言ってノアを求めたのは、盲目の為に王位継承権を剥奪されたもう一人の王子様だった。
ただ、この王子の見た目の美しさと薄幸さと善人キャラに騙されてはいけない。
彼は相当な策士で、ノアに無自覚ながらぞっこん惚れていた。
一目惚れした少女を絶対に逃さないと決めた盲目王子と、キノコをこよなく愛する魔力ゼロ少女の恋の攻防戦。
※但し、他人から見たら無自覚にイチャイチャしているだけ。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる