オカン公爵令嬢はオヤジを探す

清水柚木

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35話 襲撃(3)

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「燈子さん!!」
 ゆっくり倒れる燈子さんを見る。大切な人を失ってしまうかも知れない恐怖に体が震える。
 崩れ落ちる燈子さんを受け止め、女が笑う。許さない‼︎

 体の奥深くにある何かを感じる。
 私は愛する者の為なら、家族を守る為なら、なんでもできる。可能にする。その力を持っている!
 そう、知っていた。知っていたのに使っていなかった。

 魔法は知ってる。習った。使えないだけ。使わなかっただけ!
 剣への魔力の込め方も、体へ魔力を行き渡らせる方法も私は本能で知っている!
 それが分かれば、ペンダントになっているウルティモを剣にすることなど簡単だ!
 身体の奥の奥にあるモノ。それは私が自分で閉じたモノ。今使わなくていつ使うのか!

 おへそが熱くなる。お腹にある力が体を巡る。なんて簡単なこと……。こんな簡単なことがなぜできなかったのか!こんな万能な力が、私にあることになぜ気づかなかったのか‼︎

「ウルティモ‼︎」
 力の限り叫ぶ。今のウルティモはペンダントだ。だけど本体は剣だ。
 ペンダントヘッドのウルティモを手のひらで包み、魔力を送る。すると私にちょうど良いサイズになる。その柄を握ると更に効率の良い使い方が分かる。自分に何ができるか、自分が何をすべきか!

[コス様!ダメです‼︎]
 ウルティモの声は、聞こえない。聞かない!

「ふざけてるわ……。なんなのあんた‼︎」
 女の叫ぶ声も、聞こえない。私は目の前の敵を倒すだけ。

 魔法は想像する力。私はできる。この力は素晴らしい!

 想像すると、眼前に広がる無数の数の水の鞭。TVで見た。鋭い水は鉄をも切れる……ちぎれてしまえ!

 女の張る結界を突き破る。そんなシャボン玉の様な弱い結界で何が守れるというのか!頭を貫いてやる!避けられた。では代わりに腕をいただく!

「きゃあ――――――!!!」
 うるさい悲鳴だ、次は息の根を止めてやる。この力がある私にできないことはない!

(女の近くに倒れいているモノ達が邪魔だ。一緒に殺そう)
(でも、さっき助けようとしていた。だから敵じゃないヨ)
(エヴァのために、助ケなきゃいケないヨ……)

「……タ・スケル?」

 そこで気付いた。巨大な力に翻弄される自分がいる。私の意識が呑まれそうなる。呑まれていく。人など簡単に殺せると、殺してしまえと、獣の様な意志が私を飲み込む。

 それではダメだと首を振る。

 そう…あれはエヴァのお父さん!助けなきゃ、いけない!助けるには、回復させなければいけない。回復魔法で回復させ、そのまま力を送り廊下に送り出す。

 これでラウラと私とエヴァだけ!ラウラの片手は切ったけど、そこから血は出てない。回復魔法を使っているみたい。
 しかも悔しい事に、こんな状態でもエヴァを離そうとしない。

「エヴァを返して!返してくれれば見逃してあげる」
 私の方が絶対に強い。だからエヴァを返して逃げて!頭の中の凶悪な意識に飲み込まれそう!血が見たくて心が疼く!

「あんたみたいなのと相手をしてる暇はないわ」

 ラウラが魔法陣を展開する。空間に切れ目が入る。逃がさない‼︎

「付いて来てんじゃないわよ‼︎」

[無茶です!おやめください]
 もうウルティモの声も届かない。私はラウラが作った空間の切れ目に飛び込む。

 せっかく逃してあげようと思ったのニ。そんなに死にタいのか……。だったら逃がサない。……コロシテヤル。

 ワタシのエモのダ‼︎
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