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28話 聖剣ウルティモ(3)
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「ねぇ、ウルティモ。勇者はアダルベルト王太子様だよね?」
[申し訳ございません。それにはお応え致しかねます]
あの騒ぎの後、パーティーだなんだと騒いでた皆をよそ目に、アダルベルト様は私と一緒に城に戻ってくれた。
馬車の中でアダルベルト様が説明してくれた。
昔、勇者が魔王を倒したこと。
魔王が復活していると言うこと。
ヴィアラッテアとウルティモは勇者の剣である事。
ヴィアラッテアは何度か王族の主人を持っていて、ウルティモは勇者を除いて主人を持ったことがないこと。
だから、皆がウルティモの主人である私を勇者だと思っていること。
ゲームとは全然違う内容になってる。エヴァを見てるとゲームとは違うと思ってたけど、でも私が勇者?さすがにそれは変だよ。
ついついため息をつく。
[ご主人様、お応え出来ず申し訳ございません。初代ご主人様との約束でして……]
「あ、ごめんね。ウルティモ。謝らないで!約束は守らなきゃ、ね!だから気にしないで」
ウルティモが落ち込んでるのが分かる。剣なのに変なの。でもなんだろう。とても落ち着くの。ウルティモと一緒にいると。
「ねぇ、ウルティモ。その、ご主人様、って呼ぶの止めてくれない?あと、敬語も。なんか、ムズムズしちゃう。ね?」
私はもっとウルティモと仲良くなりたい。仲良くなる為には壁を無くすことが必要だと思う。
[ですが、ご主人様はご主人様で……]
「じゃあさ、せめて名前で呼んで!コスって。お願い!一生のお願い!」
[……では、恐縮ですがコス様で……]
やったぁ!私は手を上げて喜ぶ。
[ですが敬語はやめません!]
ウルティモは頑固だね。まぁ、そこが良いところかも知れないね。
[コス様、これからは私を肌身離さずお持ち頂けますか?私がコス様の閉ざされた魔力回路を治療致しますので]
「治療できるの!」
エヴァが私は魔力欠乏症だろうと診断してくれた。でもエヴァは治療できないって言ってた。他の名医を紹介してくれるって言ってたけど、ウルティモが治療してくれるなら、それが一番良い。
[コス様は、莫大な魔力をお持ちです。これから少しずつ私の力で、コス様の閉ざされた魔力を解放致します。解放されたら、私が魔力の使い方をお教えします。コス様の魔力は大きすぎる為、普通の人間のやり方では使いこなす事ができません。ですから魔力に関しては私に聞いて下さい。恐らくヴィアラッテアのご主人様もヴィアラッテアに教わっているはずです」
「へー、そうなんだ」
お揃いなんてちょっと、いやかなり嬉しい。
[彼には大変お世話になりました。私もコス様も]
「え?何、どう言う事?初耳だけど」
[それは……]
ウルティモは私にアダルベルト様の話をしてくれた。
「つまり、金色の小鳥さんはヴィアラッテアが変身(?)した姿で、アダルベルト王太子様の力を借りて、私を回復してくれてたって事?」
[そうです]
「ここ最近、枕元に木ノ実を置いてくれてたのはウルティモで、その為にアダルベルト王太子様から魔力をいっぱいもらったって事?」
[そうです]
「内緒で……」
[はい]
嘘でしょ⁉︎知らない間にいっぱい迷惑かけてる!しかもアダル様が一時期ヒロインに惑わされてる時に、それを知っていながらヴィアラッテアは私の所に出入りしてた⁉︎
確かに鳥さんは毎日いた!いつもいた‼︎
あの時私はめっちゃ元気だった‼︎自分でもおかしいな、って思ってたの!そもそも、4階から落ちて生きてるって異常だもんね!納得だよ‼︎
[申し訳ございません]
「あ、だから謝らないで!あ、でもでもまって待って。私、お礼を言わなきゃ!アダルベルト王太子様に!あと、ヴィアラッテアにも‼︎」
[明日、お会いになっては?]
「うん、すっごくすっごく緊張するけど、頑張る!」
どうやったら会えるのかな?明日、誰かに相談しなきゃ!
[緊張……ですか?]
「緊張するよー。だって生アダル様だよ?かっこよすぎて鼻血吹いちゃうよ~。ゲームやってる時から、大々々ファンだったんだよ!今日なんて、ドキドキし過ぎて、口から心臓飛び出るかと思ったんだから‼︎」
手にキスしてくれたのを思い出す。その手袋はテーブルの上だ。メイドさんに持って行かれるのを死守した。分かってる。私は変態かも知れない。
[コス様は、前世の記憶がおありなんですね?]
ウルティモに言われて、改めて自分の発言のうかつさに気付く。
ヤバい、ついつい言っちゃった!だってウルティモって話しやすいんだもん!
「ウルティモお願い!内緒にして‼︎こんな事言ったら変な人扱いされちゃう!お願いお願いおねがーい!」
ウルティモに手を合わせる。私は必死だ!
[約束……ですか?]
「約束!あ、だめ?」
[いいえ、承知致しました]
「ありがとう!ウルティモ!」
良かった!これで口止めできた!一安心だ!
それにしても、コスタンツァ・メルキオルリ伯爵令嬢ってゲームにいたっけ?
確か、アダル様と旅に出るのは2人だったはず。誰だっけ?攻略初めで私は死んじゃったから、そこまで行ってなんだよね。この銀の髪はどこかで見た気がするけど……。
そのうち、思い出すかな?
「とりあえず、今日は寝ようか?ウルティモ」
[はい、コス様]
明日、アダルベルト様と会えると良いなぁ。
昨日から今日にかけての疲れからすぐ寝入った私は、ウルティモの戸惑いを伺い知ることはできなかった。
[申し訳ございません。それにはお応え致しかねます]
あの騒ぎの後、パーティーだなんだと騒いでた皆をよそ目に、アダルベルト様は私と一緒に城に戻ってくれた。
馬車の中でアダルベルト様が説明してくれた。
昔、勇者が魔王を倒したこと。
魔王が復活していると言うこと。
ヴィアラッテアとウルティモは勇者の剣である事。
ヴィアラッテアは何度か王族の主人を持っていて、ウルティモは勇者を除いて主人を持ったことがないこと。
だから、皆がウルティモの主人である私を勇者だと思っていること。
ゲームとは全然違う内容になってる。エヴァを見てるとゲームとは違うと思ってたけど、でも私が勇者?さすがにそれは変だよ。
ついついため息をつく。
[ご主人様、お応え出来ず申し訳ございません。初代ご主人様との約束でして……]
「あ、ごめんね。ウルティモ。謝らないで!約束は守らなきゃ、ね!だから気にしないで」
ウルティモが落ち込んでるのが分かる。剣なのに変なの。でもなんだろう。とても落ち着くの。ウルティモと一緒にいると。
「ねぇ、ウルティモ。その、ご主人様、って呼ぶの止めてくれない?あと、敬語も。なんか、ムズムズしちゃう。ね?」
私はもっとウルティモと仲良くなりたい。仲良くなる為には壁を無くすことが必要だと思う。
[ですが、ご主人様はご主人様で……]
「じゃあさ、せめて名前で呼んで!コスって。お願い!一生のお願い!」
[……では、恐縮ですがコス様で……]
やったぁ!私は手を上げて喜ぶ。
[ですが敬語はやめません!]
ウルティモは頑固だね。まぁ、そこが良いところかも知れないね。
[コス様、これからは私を肌身離さずお持ち頂けますか?私がコス様の閉ざされた魔力回路を治療致しますので]
「治療できるの!」
エヴァが私は魔力欠乏症だろうと診断してくれた。でもエヴァは治療できないって言ってた。他の名医を紹介してくれるって言ってたけど、ウルティモが治療してくれるなら、それが一番良い。
[コス様は、莫大な魔力をお持ちです。これから少しずつ私の力で、コス様の閉ざされた魔力を解放致します。解放されたら、私が魔力の使い方をお教えします。コス様の魔力は大きすぎる為、普通の人間のやり方では使いこなす事ができません。ですから魔力に関しては私に聞いて下さい。恐らくヴィアラッテアのご主人様もヴィアラッテアに教わっているはずです」
「へー、そうなんだ」
お揃いなんてちょっと、いやかなり嬉しい。
[彼には大変お世話になりました。私もコス様も]
「え?何、どう言う事?初耳だけど」
[それは……]
ウルティモは私にアダルベルト様の話をしてくれた。
「つまり、金色の小鳥さんはヴィアラッテアが変身(?)した姿で、アダルベルト王太子様の力を借りて、私を回復してくれてたって事?」
[そうです]
「ここ最近、枕元に木ノ実を置いてくれてたのはウルティモで、その為にアダルベルト王太子様から魔力をいっぱいもらったって事?」
[そうです]
「内緒で……」
[はい]
嘘でしょ⁉︎知らない間にいっぱい迷惑かけてる!しかもアダル様が一時期ヒロインに惑わされてる時に、それを知っていながらヴィアラッテアは私の所に出入りしてた⁉︎
確かに鳥さんは毎日いた!いつもいた‼︎
あの時私はめっちゃ元気だった‼︎自分でもおかしいな、って思ってたの!そもそも、4階から落ちて生きてるって異常だもんね!納得だよ‼︎
[申し訳ございません]
「あ、だから謝らないで!あ、でもでもまって待って。私、お礼を言わなきゃ!アダルベルト王太子様に!あと、ヴィアラッテアにも‼︎」
[明日、お会いになっては?]
「うん、すっごくすっごく緊張するけど、頑張る!」
どうやったら会えるのかな?明日、誰かに相談しなきゃ!
[緊張……ですか?]
「緊張するよー。だって生アダル様だよ?かっこよすぎて鼻血吹いちゃうよ~。ゲームやってる時から、大々々ファンだったんだよ!今日なんて、ドキドキし過ぎて、口から心臓飛び出るかと思ったんだから‼︎」
手にキスしてくれたのを思い出す。その手袋はテーブルの上だ。メイドさんに持って行かれるのを死守した。分かってる。私は変態かも知れない。
[コス様は、前世の記憶がおありなんですね?]
ウルティモに言われて、改めて自分の発言のうかつさに気付く。
ヤバい、ついつい言っちゃった!だってウルティモって話しやすいんだもん!
「ウルティモお願い!内緒にして‼︎こんな事言ったら変な人扱いされちゃう!お願いお願いおねがーい!」
ウルティモに手を合わせる。私は必死だ!
[約束……ですか?]
「約束!あ、だめ?」
[いいえ、承知致しました]
「ありがとう!ウルティモ!」
良かった!これで口止めできた!一安心だ!
それにしても、コスタンツァ・メルキオルリ伯爵令嬢ってゲームにいたっけ?
確か、アダル様と旅に出るのは2人だったはず。誰だっけ?攻略初めで私は死んじゃったから、そこまで行ってなんだよね。この銀の髪はどこかで見た気がするけど……。
そのうち、思い出すかな?
「とりあえず、今日は寝ようか?ウルティモ」
[はい、コス様]
明日、アダルベルト様と会えると良いなぁ。
昨日から今日にかけての疲れからすぐ寝入った私は、ウルティモの戸惑いを伺い知ることはできなかった。
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