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27話 聖剣ウルティモ(2)
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『明日私は父と一緒に行くわ。コスはアダル様にエスコートされなさい!』
昨日帰る寸前にエヴァに落とされた爆弾を、今、思い出す。
着替えと化粧が終わった段階で、扉がノックされた。メイドさんが扉を開け、深くお辞儀をする。
入って来たのは、まごう事なき王子様だった。
金細工の様に煌めく髪。同じく金色の不思議な光を放つ宝石の様な大きな瞳。長いまつ毛。整った鼻の下には薄い柔らかそうな唇。
すらっとした体躯に、白地に金糸で施された騎士服がとても似合ってる。胸には紋章が3つ。腰には金細工が施された鞘に納まった剣。聖剣ヴィアラッテア。
表が白で裏が紫色のマントを閃かせ歩くその歩幅は自信に満ち溢れている。
そしてその姿を見た私は今大パニックだ!
な・なに・なに⁉︎素敵すぎる。生アダル様ヤバい!鼻血出ちゃうよ?写真撮りたい!あぁ、今すぐスマホが欲しい‼︎
「アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレ王太子です。本日コスタンツァ・メルキオルリ伯爵をエスコートします」
軽くお辞儀をするアダル様から、目が離せない!素敵すぎる~‼︎
アダル様が手を差し出す。
え?握手ですか?いくらですか?課金しますよ?
混乱してるのが分かったのか、アダル様は私の手を取った。そして!!!跪き、手にキスされた!!!ああ、なぜ私は手袋をしてるの?アダル様の唇の感触が知りたかった。
やばい!課金くらいじゃ追いつかない!全財産手放さなきゃ‼︎
「では参りましょう」
アダル様がニッコリ笑う。私の手はそのまま彼の手の上だ。これってエスコートってやつ?心臓が口から飛び出しそうだ。ドキドキ暴れて、破裂しそう。
アダル様の身長は高い。対する私は伸びたとは言えど、チビだ。アダル様の肘にちょうど頭のてっぺんがくる。
でも歩き憎くない。きっと私に合わせてくれているんだろう。現実でもやっぱり素敵な人だ。
彼に愛される人はどんな人だろう。
きっと私みたいにちっぽけで貧相で教養がない人間じゃないんだろうな。
大聖堂に向かう馬車の中でも、アダル様は色々とお話しをしてくれた。飽きさせない様に気を使ってくれているのが分かる。事実、話は面白かった。完璧な王子様っているんだね。
馬車から大聖堂に向かう際にも、完璧にエスコートをしてもらえた。そしてエスコートされた先は、大聖堂の一番奥だった。
正面に神聖文字で刻まれた神々の名。その下に水晶柱。その横に台座に刺さった銀の鞘に納まった剣。
部屋の両側には人がいっぱいいる。あ!エヴァだ!こっちを見て笑ってくれた。
「あれが聖剣ウルティモです」
アダル様が指刺す先にある剣。
その剣の柄の部分に金色の小鳥が降りて来て、止まる。
お友達だ!
「鳥が見えますか?」
アダル様がこちらを見ずに呟く。
「はい、お友達です」
「ではお友達の元へ行きましょう」
アダル様が剣の前までエスコートしてくれた。鳥さんは剣の柄から離れ、アダル様の肩に止まる。
「どうぞ、あなたの剣です」
エスコートされていた手が、聖剣ウルティモへと誘われる。柄の先に指が触れた、と同時に。剣から閃光が走る。
(眩し……くない?)
[ご主人様、お会いしたかったです]
目の前に剣が浮かぶ。
どうしてだろう……。私の剣だと分かる。私の味方だと、私の片割れの様な存在だと分かる。
その柄を握ると私の掌のちょうど良いサイズになる。安心する。
「ウルティモ……」
[はい、今までお助け出来ず、申し訳ございませんでした]
優しそうな少し低い男の人の声。剣なのに、悲しそうなのが分かる。
「ううん、いいの。これからよろしくお願いします」
[精神誠意お使え致します]
返答が真面目だ!でもウルティモらしいと思ってしまう。
そして――光が止む。
ドッと響き渡る、歓喜の声。
「ウルティモが抜けた!」
「まさかこの瞬間に立ち会えるとは!」
「2本の聖剣が揃うとは!」
「勇者の誕生だ‼︎」
おじさん達が、口々に騒いでる。ん?今、勇者って言った?
アダル様を見上げると少し申し訳なさそうな表情で私を見ている彼がいた。目が合うと、その口元が微笑む。
「勇者?」
疑問文と共に自分を指差した。アダル様が申し訳なさそうに、頷く。
ん?んん?おかしくない?私が勇者?だってだって…………。
アダル様をもう一度見る。
アダル様が右手を前に出すと、歓喜してる皆が静まった。
アダル様が私の肩を抱く。
「聖剣ウルティモの主人、コスタンツァ・メルキオルリ伯爵だ。だが、この事は他言無用!ここだけの事と弁えよ!」
その言葉を聞いて、エヴァを含めた全員がお辞儀をする。
カッコいい~じゃなくて。
え?おかしいよね。だってだって。
勇者はアダル様・・・だよね?
昨日帰る寸前にエヴァに落とされた爆弾を、今、思い出す。
着替えと化粧が終わった段階で、扉がノックされた。メイドさんが扉を開け、深くお辞儀をする。
入って来たのは、まごう事なき王子様だった。
金細工の様に煌めく髪。同じく金色の不思議な光を放つ宝石の様な大きな瞳。長いまつ毛。整った鼻の下には薄い柔らかそうな唇。
すらっとした体躯に、白地に金糸で施された騎士服がとても似合ってる。胸には紋章が3つ。腰には金細工が施された鞘に納まった剣。聖剣ヴィアラッテア。
表が白で裏が紫色のマントを閃かせ歩くその歩幅は自信に満ち溢れている。
そしてその姿を見た私は今大パニックだ!
な・なに・なに⁉︎素敵すぎる。生アダル様ヤバい!鼻血出ちゃうよ?写真撮りたい!あぁ、今すぐスマホが欲しい‼︎
「アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレ王太子です。本日コスタンツァ・メルキオルリ伯爵をエスコートします」
軽くお辞儀をするアダル様から、目が離せない!素敵すぎる~‼︎
アダル様が手を差し出す。
え?握手ですか?いくらですか?課金しますよ?
混乱してるのが分かったのか、アダル様は私の手を取った。そして!!!跪き、手にキスされた!!!ああ、なぜ私は手袋をしてるの?アダル様の唇の感触が知りたかった。
やばい!課金くらいじゃ追いつかない!全財産手放さなきゃ‼︎
「では参りましょう」
アダル様がニッコリ笑う。私の手はそのまま彼の手の上だ。これってエスコートってやつ?心臓が口から飛び出しそうだ。ドキドキ暴れて、破裂しそう。
アダル様の身長は高い。対する私は伸びたとは言えど、チビだ。アダル様の肘にちょうど頭のてっぺんがくる。
でも歩き憎くない。きっと私に合わせてくれているんだろう。現実でもやっぱり素敵な人だ。
彼に愛される人はどんな人だろう。
きっと私みたいにちっぽけで貧相で教養がない人間じゃないんだろうな。
大聖堂に向かう馬車の中でも、アダル様は色々とお話しをしてくれた。飽きさせない様に気を使ってくれているのが分かる。事実、話は面白かった。完璧な王子様っているんだね。
馬車から大聖堂に向かう際にも、完璧にエスコートをしてもらえた。そしてエスコートされた先は、大聖堂の一番奥だった。
正面に神聖文字で刻まれた神々の名。その下に水晶柱。その横に台座に刺さった銀の鞘に納まった剣。
部屋の両側には人がいっぱいいる。あ!エヴァだ!こっちを見て笑ってくれた。
「あれが聖剣ウルティモです」
アダル様が指刺す先にある剣。
その剣の柄の部分に金色の小鳥が降りて来て、止まる。
お友達だ!
「鳥が見えますか?」
アダル様がこちらを見ずに呟く。
「はい、お友達です」
「ではお友達の元へ行きましょう」
アダル様が剣の前までエスコートしてくれた。鳥さんは剣の柄から離れ、アダル様の肩に止まる。
「どうぞ、あなたの剣です」
エスコートされていた手が、聖剣ウルティモへと誘われる。柄の先に指が触れた、と同時に。剣から閃光が走る。
(眩し……くない?)
[ご主人様、お会いしたかったです]
目の前に剣が浮かぶ。
どうしてだろう……。私の剣だと分かる。私の味方だと、私の片割れの様な存在だと分かる。
その柄を握ると私の掌のちょうど良いサイズになる。安心する。
「ウルティモ……」
[はい、今までお助け出来ず、申し訳ございませんでした]
優しそうな少し低い男の人の声。剣なのに、悲しそうなのが分かる。
「ううん、いいの。これからよろしくお願いします」
[精神誠意お使え致します]
返答が真面目だ!でもウルティモらしいと思ってしまう。
そして――光が止む。
ドッと響き渡る、歓喜の声。
「ウルティモが抜けた!」
「まさかこの瞬間に立ち会えるとは!」
「2本の聖剣が揃うとは!」
「勇者の誕生だ‼︎」
おじさん達が、口々に騒いでる。ん?今、勇者って言った?
アダル様を見上げると少し申し訳なさそうな表情で私を見ている彼がいた。目が合うと、その口元が微笑む。
「勇者?」
疑問文と共に自分を指差した。アダル様が申し訳なさそうに、頷く。
ん?んん?おかしくない?私が勇者?だってだって…………。
アダル様をもう一度見る。
アダル様が右手を前に出すと、歓喜してる皆が静まった。
アダル様が私の肩を抱く。
「聖剣ウルティモの主人、コスタンツァ・メルキオルリ伯爵だ。だが、この事は他言無用!ここだけの事と弁えよ!」
その言葉を聞いて、エヴァを含めた全員がお辞儀をする。
カッコいい~じゃなくて。
え?おかしいよね。だってだって。
勇者はアダル様・・・だよね?
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