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5話 オカンとの攻防
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「あんたの尿よ。おしっこ。何回言わせるの!」
「いや、オカンが連呼してんだよ!」
美しすぎる公爵令嬢がNGワードを連呼する。その様に俺は慌てて突っ込みを入れた。
待て待て、俺。冷静になるって決めたじゃないか。深呼吸が必要だ。心を鎮めろ。相手は常識を母親のお腹に置いて産まれて来たオカンだ。
(よし!冷静になった!)
「尿って、なんで?」
「あんた達のツルペタへの執着は異常だわ。でも、魅了の魔法にかかってるわけじゃない。そもそも魅了の魔法は自分より魔力が多い者にはかけられない。この国に、あんた以上の魔力量の持ち主はいないわ。と言うことは考えられるのは、薬物中毒でしょ。あんた達は、ツルペタの作ったお菓子や弁当食べてたでしょう?それを検査するから、尿くれって言ってんの。ほら、試験管」
投げて寄越した試験管を受け取る。
確かに試験管だ。前世でよく見た。でも今世では見た事ない。
「オカンが作ったの?」
「そうよ。必要でしょ?」
「でも、検査ってどうやって」
「そこは魔法を使うわ。便利よね。魔法って」
オカンは医者だった。大きい総合病院で、救急医として臨機応変に働いてた。腕は信用してる。
「じゃあ、採るけど、紙コップとかないよね?」
ちらっと試験管を見る。直接は厳しいと思う。
「そこは魔法を使いなさい。自分の尿の一部を浮かせて、入れれば良いでしょう」
「浮かす……」
考え込んでいると、妙な視線を感じ、オカンを見る。
オカンは狼狽える俺を見てとったのか、俺を見てる?下見てる?どこ、見てる?オカン、本当にどこ見てるの⁉︎
「まさか、できないの?簡単な事じゃない」
「オカンが言うように、俺って魔力量が多いだろ?だから細かい事が苦手で……」
そう、俺の魔法量は莫大だ。王城で働く全ての人を集めても、俺には勝てないと言われている。だから、逆に針に糸を通す様な魔法は使えない。
理解したのかオカンは盛大にため息をつき、頭をかく。
(相変わらずキツいよな)
「仕方ないわね。じゃあ一緒に行くわよ」
「え?どこに?」
「この部屋を選んで良かったわ。続き間にトイレがあるもんね」
おもむろに立ち上がるオカン。嫌な予感がする。
「もしかしてオカン。俺の……」
「何を照れてんの?親子でしょ。ほら、さっさと済ましちゃいましょう」
俺の腕を取るオカン。目指す先は…………。
「待ってオカン、待って~‼︎」
俺は掴まれた腕を外し、慌てて逃げる。逃亡先はカーテンの後ろ。
その姿に完璧な王子の姿はない。冷静さはない!だが、この状況で冷静になれる人間がいるのだろうか。いや、いないはずだ‼︎
そしてそんな俺を尻目に、心の機微をまったく読み取れない素晴らしいオカンは、大股で近付いてくる。
「なーに照れてんのよ。母が医者って事くらい知ってるでしょ。どれだけの数を見てきたと思ってるの。雅也さん以外は、何の感情も湧かないわよ」
「そう言う問題じゃない!」
カーテンを挟んでの攻防戦は続く。側から見るとコメディだと分かってるが、引き返せない。
「あんただって医者を目指してるんだから、尿が汚いものじゃないって事くらいは、分かってるでしょ。ほら、早くトイレに行くわよ。出すもん出しなさい」
「いやだっつの!オカンのそう言うとこが嫌なんだよ!デリカシーくらい持ってくれよ!」
「何よ!あんたはこのオッパイ飲んで大きくなったのよ!デリカシー?今更、何言ってんの!母を舐めんな‼︎」
あーそうだった。そーだった‼︎何かって言うと、このセリフを言ってた。昔から!俺が子供の頃から!
「いつの話だよ!赤ん坊の頃の話じゃねーか!しかも前世の!もう、子供じゃないんだから、いつまでもそんな事を言ってるなっつの!」
「あんたこそ何言ってんの!男はみんな、おっぱいが好きでしょ!現に雅也さんだって……
「うわーやめろ!こんなとこでオヤジの性癖とか知りたくない‼︎」
オカンの言葉を必死で遮る。その剣幕に引いたのか、オヤジの性癖をバラしそうになった後ろめたさからか、ある意味両方かは不明だけど、オカンは黙った。
(助かった。マジで‼︎)
「じゃあどうすんの?自分でできるって言うの」
「………………頑張ります」
俺はカーテンと言う名の盾を捨て、試験管と言う剣を携え、トイレと言う名の戦場に向かった。
「いや、オカンが連呼してんだよ!」
美しすぎる公爵令嬢がNGワードを連呼する。その様に俺は慌てて突っ込みを入れた。
待て待て、俺。冷静になるって決めたじゃないか。深呼吸が必要だ。心を鎮めろ。相手は常識を母親のお腹に置いて産まれて来たオカンだ。
(よし!冷静になった!)
「尿って、なんで?」
「あんた達のツルペタへの執着は異常だわ。でも、魅了の魔法にかかってるわけじゃない。そもそも魅了の魔法は自分より魔力が多い者にはかけられない。この国に、あんた以上の魔力量の持ち主はいないわ。と言うことは考えられるのは、薬物中毒でしょ。あんた達は、ツルペタの作ったお菓子や弁当食べてたでしょう?それを検査するから、尿くれって言ってんの。ほら、試験管」
投げて寄越した試験管を受け取る。
確かに試験管だ。前世でよく見た。でも今世では見た事ない。
「オカンが作ったの?」
「そうよ。必要でしょ?」
「でも、検査ってどうやって」
「そこは魔法を使うわ。便利よね。魔法って」
オカンは医者だった。大きい総合病院で、救急医として臨機応変に働いてた。腕は信用してる。
「じゃあ、採るけど、紙コップとかないよね?」
ちらっと試験管を見る。直接は厳しいと思う。
「そこは魔法を使いなさい。自分の尿の一部を浮かせて、入れれば良いでしょう」
「浮かす……」
考え込んでいると、妙な視線を感じ、オカンを見る。
オカンは狼狽える俺を見てとったのか、俺を見てる?下見てる?どこ、見てる?オカン、本当にどこ見てるの⁉︎
「まさか、できないの?簡単な事じゃない」
「オカンが言うように、俺って魔力量が多いだろ?だから細かい事が苦手で……」
そう、俺の魔法量は莫大だ。王城で働く全ての人を集めても、俺には勝てないと言われている。だから、逆に針に糸を通す様な魔法は使えない。
理解したのかオカンは盛大にため息をつき、頭をかく。
(相変わらずキツいよな)
「仕方ないわね。じゃあ一緒に行くわよ」
「え?どこに?」
「この部屋を選んで良かったわ。続き間にトイレがあるもんね」
おもむろに立ち上がるオカン。嫌な予感がする。
「もしかしてオカン。俺の……」
「何を照れてんの?親子でしょ。ほら、さっさと済ましちゃいましょう」
俺の腕を取るオカン。目指す先は…………。
「待ってオカン、待って~‼︎」
俺は掴まれた腕を外し、慌てて逃げる。逃亡先はカーテンの後ろ。
その姿に完璧な王子の姿はない。冷静さはない!だが、この状況で冷静になれる人間がいるのだろうか。いや、いないはずだ‼︎
そしてそんな俺を尻目に、心の機微をまったく読み取れない素晴らしいオカンは、大股で近付いてくる。
「なーに照れてんのよ。母が医者って事くらい知ってるでしょ。どれだけの数を見てきたと思ってるの。雅也さん以外は、何の感情も湧かないわよ」
「そう言う問題じゃない!」
カーテンを挟んでの攻防戦は続く。側から見るとコメディだと分かってるが、引き返せない。
「あんただって医者を目指してるんだから、尿が汚いものじゃないって事くらいは、分かってるでしょ。ほら、早くトイレに行くわよ。出すもん出しなさい」
「いやだっつの!オカンのそう言うとこが嫌なんだよ!デリカシーくらい持ってくれよ!」
「何よ!あんたはこのオッパイ飲んで大きくなったのよ!デリカシー?今更、何言ってんの!母を舐めんな‼︎」
あーそうだった。そーだった‼︎何かって言うと、このセリフを言ってた。昔から!俺が子供の頃から!
「いつの話だよ!赤ん坊の頃の話じゃねーか!しかも前世の!もう、子供じゃないんだから、いつまでもそんな事を言ってるなっつの!」
「あんたこそ何言ってんの!男はみんな、おっぱいが好きでしょ!現に雅也さんだって……
「うわーやめろ!こんなとこでオヤジの性癖とか知りたくない‼︎」
オカンの言葉を必死で遮る。その剣幕に引いたのか、オヤジの性癖をバラしそうになった後ろめたさからか、ある意味両方かは不明だけど、オカンは黙った。
(助かった。マジで‼︎)
「じゃあどうすんの?自分でできるって言うの」
「………………頑張ります」
俺はカーテンと言う名の盾を捨て、試験管と言う剣を携え、トイレと言う名の戦場に向かった。
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