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第6章:ギルド編
ミーシャの力
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「しかし小僧よ。お主、その右腕はどうなっている?」
ハンゾーの言葉にクロウも頷く。唯一分かっていないのはミーシャだけのようだ。
「なになにどういうこと?」
「この小僧の右腕の動きが鈍いのですよ姫様。まるで……そう、まるで無理やり動かしているかの様な」
「お師匠様の言う通りだ。確かにジンの動きは優れている。だが体の動きに右腕だけ付いていけていない」
ジンは少し逡巡し、溜息を吐いた。どうせ隠せそうにないのだ。それならば後々面倒になる前に教えた方がいい。そう考えたジンは右手のグローブを外し、右袖を捲って見せた。禍々しい龍の模様が袖の奥まで登っている。
「……呪いか」
それを見たハンゾーは目を細める。
「ああ」
「それ痛くないの?」
心配そうな顔を浮かべるミーシャに首を振って答える。
「魔剣に喰われたか」
ハンゾーの言葉にジンは驚いた。
「よく分かったな」
「たわけ、お主とは生きている年数が違うわい。以前に似た様なものを見たことがあるだけだ」
「どこまでだ?」
「右肩まで」
その言葉に質問をしたクロウは目を丸くし、ハンゾーは眉を顰める。
「えっと、じゃあその右腕って動かないの?」
「そんなことはない。ただ鈍いだけだ。これでも最初の頃よりだいぶ戻ったんだ」
右手を開いたり閉じたり繰り返すが、力が入り難い。オリジンを出る前に出会った謎の協力者によると、この腕の不調は呪いのせいもあるが、自身に眠っている謎の力が最も大きな原因なのだそうだ。ただそんなことをハンゾー達に伝えることは出来ない。幸いなことに呪いによるものと勘違いをしてくれたので、それに乗っかることにした。
「つまり右腕部分が呪われたせいで、以前より上手く動かせなくなっちゃった、ってことでいいんだよね?」
「ん? ああそうだ」
ジンの言葉を聞いたミーシャがにっこりと笑った。ハンゾーとクロウが慌て始める。
「まさか、姫様! それはダメです!」
「お師匠様の言う通りだ! 幾ら何でもやっていいことと悪いことがありますよ!」
だがミーシャの決意は固いようだった。ハンゾーとクロウの声をまるで聞いていないかのように無視する。
「あたしが治してあげるよ」
その言葉に二人はなんとも言えない表情を浮かべてから顔を片手で覆った。
「お館様申し訳ありません」
「姫様をお止めできませんでした、お館様」
後悔のような、怒りのような、怨恨のような様々な感情が入り乱れ、固まっている二人を横目に、ミーシャの言葉に驚いていたジンは頭を再稼働させる。
「治すって、治せるのか!? いったいどうやって!?」
「正確には治すんじゃなくて、壁を作る、かな。呪いという事象とジンの体の間に一枚の結界を張る感じ。そうすることで呪いによる影響を、ある程度防ぐことができるはずだよ」
ジンには説明の意味がわからない。というよりもそれは法術なのだろうか。ただチラリとハンゾーとクロウの様子を見て、彼女の言葉が嘘ではないことを確信する。
「それで、どうする?」
強さを少しでも取り戻せるのなら、ジンには断る理由など何一つなかった。
「頼む」
ミーシャは満足そうに頷いた。
「それじゃあ早速上脱いで、そこに座って」
ジンはその言葉に従い、近くにあった岩に腰掛ける。するとミーシャはジンの右肩に手を置いて集中を始める。暖かい波動が彼女の手からジンの右肩から右手の先端まで、何度も何ども通り抜けていく。
時間にして十数分だろうか。次第に光は薄れていき、ついには完全に消え去った。ミーシャは大きく息を吐き出した。
「これで終わりだよ。どうかな、変化あった?」
ジンはミーシャの言葉に従って右肩から右手まで、それぞれ動作を確認していく。
「さっきよりも全然違和感がねえ。すげえな」
やはりまだ動きは鈍いが先ほどまでではない。だがこの程度ならばカバーできる誤差の範疇である。思わず驚愕の表情を浮かべたジンにミーシャは満足そうに笑った。
「でしょでしょ! ちゃんとできるか不安だったけど、成功してよかったぁ」
その言葉に再度ジンは固まる。
「……失敗していたらどうなってたんだ?」
「え゛!?」
ジンの質問を予期していなかったのか、ミーシャは気まずそうな顔を浮かべて頬をポリポリと掻く。
「えっと、右腕そのものが完全に封じられたり、結界に押しつぶされて右腕がちょっと見ていられない感じになったりならなかったりして……」
その言葉にジンは思わず叫びそうになるがなんとか堪える。一応恩人だからだ。しかし危うく右腕を失うところだったとは、相変わらずこの少女は色々とネジが外れている。
「ま、まあ、今までに失敗したことは一度もないし、それに実際に成功しているわけだし……ごめんね?」
ジンの醸し出す雰囲気に、少しおびえた表情を浮かべる彼女を見て、ジンは肩からドッと力が抜けた。
「すまんな小僧、姫様はもうわかっていると思うが少々、いやかなり、いや信じられないほど阿呆でな。ただ悪気はないんだ。そこだけはわかってくれ」
ハンゾーとクロウのすまなそうな顔に、ジンは大きくため息をついた。
「わかったよ。実際に回復したのは事実だしな。ただ今度から、頼むから事前にしっかり説明してくれ、本当に」
「オッケー!」
その陽気な反省の薄そうな返答にミーシャ以外は頭を抱えた。
ハンゾーの言葉にクロウも頷く。唯一分かっていないのはミーシャだけのようだ。
「なになにどういうこと?」
「この小僧の右腕の動きが鈍いのですよ姫様。まるで……そう、まるで無理やり動かしているかの様な」
「お師匠様の言う通りだ。確かにジンの動きは優れている。だが体の動きに右腕だけ付いていけていない」
ジンは少し逡巡し、溜息を吐いた。どうせ隠せそうにないのだ。それならば後々面倒になる前に教えた方がいい。そう考えたジンは右手のグローブを外し、右袖を捲って見せた。禍々しい龍の模様が袖の奥まで登っている。
「……呪いか」
それを見たハンゾーは目を細める。
「ああ」
「それ痛くないの?」
心配そうな顔を浮かべるミーシャに首を振って答える。
「魔剣に喰われたか」
ハンゾーの言葉にジンは驚いた。
「よく分かったな」
「たわけ、お主とは生きている年数が違うわい。以前に似た様なものを見たことがあるだけだ」
「どこまでだ?」
「右肩まで」
その言葉に質問をしたクロウは目を丸くし、ハンゾーは眉を顰める。
「えっと、じゃあその右腕って動かないの?」
「そんなことはない。ただ鈍いだけだ。これでも最初の頃よりだいぶ戻ったんだ」
右手を開いたり閉じたり繰り返すが、力が入り難い。オリジンを出る前に出会った謎の協力者によると、この腕の不調は呪いのせいもあるが、自身に眠っている謎の力が最も大きな原因なのだそうだ。ただそんなことをハンゾー達に伝えることは出来ない。幸いなことに呪いによるものと勘違いをしてくれたので、それに乗っかることにした。
「つまり右腕部分が呪われたせいで、以前より上手く動かせなくなっちゃった、ってことでいいんだよね?」
「ん? ああそうだ」
ジンの言葉を聞いたミーシャがにっこりと笑った。ハンゾーとクロウが慌て始める。
「まさか、姫様! それはダメです!」
「お師匠様の言う通りだ! 幾ら何でもやっていいことと悪いことがありますよ!」
だがミーシャの決意は固いようだった。ハンゾーとクロウの声をまるで聞いていないかのように無視する。
「あたしが治してあげるよ」
その言葉に二人はなんとも言えない表情を浮かべてから顔を片手で覆った。
「お館様申し訳ありません」
「姫様をお止めできませんでした、お館様」
後悔のような、怒りのような、怨恨のような様々な感情が入り乱れ、固まっている二人を横目に、ミーシャの言葉に驚いていたジンは頭を再稼働させる。
「治すって、治せるのか!? いったいどうやって!?」
「正確には治すんじゃなくて、壁を作る、かな。呪いという事象とジンの体の間に一枚の結界を張る感じ。そうすることで呪いによる影響を、ある程度防ぐことができるはずだよ」
ジンには説明の意味がわからない。というよりもそれは法術なのだろうか。ただチラリとハンゾーとクロウの様子を見て、彼女の言葉が嘘ではないことを確信する。
「それで、どうする?」
強さを少しでも取り戻せるのなら、ジンには断る理由など何一つなかった。
「頼む」
ミーシャは満足そうに頷いた。
「それじゃあ早速上脱いで、そこに座って」
ジンはその言葉に従い、近くにあった岩に腰掛ける。するとミーシャはジンの右肩に手を置いて集中を始める。暖かい波動が彼女の手からジンの右肩から右手の先端まで、何度も何ども通り抜けていく。
時間にして十数分だろうか。次第に光は薄れていき、ついには完全に消え去った。ミーシャは大きく息を吐き出した。
「これで終わりだよ。どうかな、変化あった?」
ジンはミーシャの言葉に従って右肩から右手まで、それぞれ動作を確認していく。
「さっきよりも全然違和感がねえ。すげえな」
やはりまだ動きは鈍いが先ほどまでではない。だがこの程度ならばカバーできる誤差の範疇である。思わず驚愕の表情を浮かべたジンにミーシャは満足そうに笑った。
「でしょでしょ! ちゃんとできるか不安だったけど、成功してよかったぁ」
その言葉に再度ジンは固まる。
「……失敗していたらどうなってたんだ?」
「え゛!?」
ジンの質問を予期していなかったのか、ミーシャは気まずそうな顔を浮かべて頬をポリポリと掻く。
「えっと、右腕そのものが完全に封じられたり、結界に押しつぶされて右腕がちょっと見ていられない感じになったりならなかったりして……」
その言葉にジンは思わず叫びそうになるがなんとか堪える。一応恩人だからだ。しかし危うく右腕を失うところだったとは、相変わらずこの少女は色々とネジが外れている。
「ま、まあ、今までに失敗したことは一度もないし、それに実際に成功しているわけだし……ごめんね?」
ジンの醸し出す雰囲気に、少しおびえた表情を浮かべる彼女を見て、ジンは肩からドッと力が抜けた。
「すまんな小僧、姫様はもうわかっていると思うが少々、いやかなり、いや信じられないほど阿呆でな。ただ悪気はないんだ。そこだけはわかってくれ」
ハンゾーとクロウのすまなそうな顔に、ジンは大きくため息をついた。
「わかったよ。実際に回復したのは事実だしな。ただ今度から、頼むから事前にしっかり説明してくれ、本当に」
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