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第4章:学園編
戦闘開始
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次の瞬間、最後の一枚が破壊された。それと同時にジンは伸ばされた鎌と腕を躱しつつ相手の体の下に潜り込む。腹部にある眼が一斉に彼を睨みつけ、生えている腕が彼を捕まえる動きを見せる。ジンはそれに捕まる前に渾身のアッパーカットをその眼の1つに打ち込み、そのまま振り切った。強化された拳は蜘蛛を空中へと浮かび上がらせる。背中からの痛みに一瞬動きを硬くするがすぐさま追い討ちをかける。
浮いた胴体をさらに蹴り上げさらに上空へと持ち上げる。それを防ごうと大蜘蛛は攻撃が当たる瞬間に腕を交差させてジンの攻撃をガードする。それを見て舌打ちをしながらジンは地面に戻る。遅れて大蜘蛛がズンッという音を立てながら着地した。
再び睨み合い、今度は化け物の方からジンに接近する。伸ばされた腕と鎌を回避していると背筋にまた痛みが走り、顔が歪む。その一瞬でできた隙に反応して大蜘蛛は新たに鎌から腕を分岐させ、それでジンの右腕を掴み自分の方へと引き寄せる。
ジンの眼前には鎌が迫り、それがぶつかる直前で彼は体を捻って回避する。そして腰にぶら下げていた短剣で自分を掴む腕の手首を狙って切りつける。しかしその腕を覆う外皮は硬く、刃は通らない。
攻撃に失敗した大蜘蛛は、別の腕を伸ばして彼の残りの手足を掴もうとする。それを察知したジンは剣に封じられていた金神術を解放する。短剣はより鋭利になり、強度を増した。そのまま彼は自分を掴む手の親指に目掛けて刃を立てる。今度はわずかだが突き刺すことに成功した。相手が痛みで拘束を緩めた瞬間にそこから腕を引っ張り出す。そして流れるように自分を掴んでいた腕を蹴って距離を取る。
地面に片手をつきながら相手を見据えると、相手の切られた腕が体内に吸収された。次の瞬間、新たな、それも傷がついていない腕が同じ部分から生えてくる。
「…チッ、再生能力まであるのかよ」
ジンは苛立ちのあまり舌打ちをする。気がつけばシオンが与えた傷もわずかずつではあるが再生しつつある。
「長期戦は不利だな」
脳内麻薬が出ているためか、すでに背中からの痛みはない。しかし彼は背に手を回して自分の状態を確認する。傷は深すぎはしないが浅くもないようだ。身体能力を強化したことで回復力が向上しているはずの彼の体からは未だに出血が続いている。あまり時間を掛けていると、相手を倒す前に出血多量で意識を失ってしまうかもしれない。
1つ大きく息を吐き出すと、相手の様子を再度確認する。どうやらこちらが攻撃をしないので警戒しているのか、あるいは回復に専念しているのか眼だけをジンに向けたまま動こうとしない。
「ありがてぇ」
ジンは笑う。相手がわざわざ彼に猶予をくれたのだ。だから彼は短剣を体の前に出し、刀身に左手を添える。彼のとっておきを披露するために。
「解放!」
その瞬間周囲に黒い風が吹きすさぶ。風は禍々しく、そして荒々しく彼を中心に広がり、やがてそれは彼の剣に徐々に吸収され始めた。徐々にその刃は輝く銀の色から忌まわしい黒色へと染め上げられてゆく。変色した刀身はまるで生きているかのように不気味に脈動をする。禍々しいその姿はまさに魔剣と表現するにふさわしい。
「くっ」
黒い短剣がジンからごっそりと力を奪い取っていくのを感じる。その力を使って、短剣はさらなる変貌を遂げようとする。剣の刀身に徐々に鱗紋様が現れ始めたのだ。蜘蛛はその不吉さに警戒心を高める。ジンの額に脂汗がたまり、流れ落ちていった。
ようやく黒い風は収まると、ジンの持つ短剣は黒い、龍の爪のような形態へと変化していた。これこそが彼が持つとっておきの切り札『黒龍爪』である。柄頭には森の主から手に入れた紫色の魔核がはめ込まれ、それには金神術が込められている。
レヴィとの戦いの跡地には二本の黒龍の腕が落ちていた。おそらくレヴィから切り離された時点で人化の術が切れたのだろう。現場を検証していたヴォルクがそれを発見して回収し、ティファニアに渡した。彼女はそれをジンのために用いることに決め、エデンでも随一の刀匠に依頼して武器を作成することにしたのだ。
その二本の龍の腕を鋳溶かし、合金と絡み合わせた。それから生み出されたのが一対の短剣である。レヴィの呪いが込められているのか普段は暴走を抑えるために封印しなければならず、その性能を十全に発揮することはできない。だが一度開封すれば、いかなる敵をも切り裂く凶悪な武器となる。ただこの剣は使用者の肉体を奪おうとする。一度解放すると徐々に剣に人格が奪われていくのだ。3年も扱っているジンですら、二本同時に剣の封印を解除することは危険すぎて不可能な上に、あまり長時間解放した状態で扱うことはできない。
「行くぞ、クソ虫っ」
短剣を前に構えてジンは一気に詰め寄る。大蜘蛛はその短剣の禍々しさに距離を取ろうと器用に後方へとジャンプする。しかしあたり一面をシオンが吹き飛ばしたために何の遮蔽物もない。そのためあっという間にジンが大蜘蛛へと追いついた。
大蜘蛛はジンに向かって爪を伸ばす。それをジンは回避せずに真っ向から切り裂く。封印を解除した『黒龍爪』の切れ味は、解除前までのものとは段違いである。いかに相手が硬くても容易く刃はその体を切り裂く。
しかし切った直後に、その箇所から新たに手が生え、伸びてくる。ジンはそれを体をわずかに捻るだけで躱し、その流れのままにその手すらも切り落とす。
「—————————————!!!」
大蜘蛛はそれを見て怒りの金切り声をあげると、胴体部にある眼から熱戦を放った。至近距離から高速で発射されたそれをジンはあえて踏み込んで躱す。次の瞬間彼は、その蜘蛛の8本ある根元の爪と腕の内の一本を、胴体から切り離した。大蜘蛛が再度悲鳴をあげる。ジンは後方に飛び、距離を取って相手を観察する。
切り落とされた物は、まるで切り落とされたトカゲの尻尾のように未だにビクビクと動いており嫌悪感が募る。しかし胴体部は未だに回復する様子がない。それが意味することをすぐに推察する。そして1つの結論が出た。
「どうやら一度に全体を治すことはできないみたいだな」
ジンはニヤリと笑う。方針は整った。後は回復ができなくなるまでに切り続ければいい。そして、狙うのならばまずは蜘蛛の脚部である。地面に落としてしまえば動けなくなる。殺すことも容易だ。それに殺すにはどこかにいる本体の魔核を破壊する必要もある。これなら他の無神術は使わなくて済むだろう。今後のことを考えれば手の内を晒すのは下策中の下策だ。たとえ森の中であっても、誰かに見られる可能性を否定しきれない。
「なら!」
一気に大蜘蛛の左中央の脚部へと駆け寄る。無数に迫り来る熱線を避けながらぐんぐんと近づき、関節の付け根を下から切りあげる。返す刀で胴体に短剣を刺してその場に止まり器用に次の足へと飛びかかる。
文字通り空中を蹴りながら相手から伸びてくる腕や鎌、熱線を回避しつつ、次の足を切り落とす。大蜘蛛がバランスを崩したのを確認しつつ、そのまま背後に着地する。その瞬間蜘蛛は大量の粘着性の糸を彼に飛ばしてくるが、限界まで肉体を強化しているジンには、あくびが出そうになるほどゆっくり見える。それが回避されたと判断する前に蜘蛛は鋼鉄製の糸を飛ばすがジンには当たらなかった。
「もう一本!」
今度は右後方の脚部を胴との連結部分から切り落としにかかる。完全にバランスを崩した蜘蛛は地面に倒れた。すぐさま好機であると判断したジンは残りの足を切り離すために右中央の脚部に狙いを定める。しかし彼の攻撃が届く前に、蜘蛛はジンとの間に無数の腕を出現させる。それに妨害されて彼のスピードは押さえつけられてしまった。
「ちっ」
ジンは舌打ちをすると邪魔をしてきた腕を思い切り蹴飛ばして距離を取った。蜘蛛は背後を取られた状態の危険性を学習したらしく、残った手足で何とか立ち上がるとジンに顔を向けてくる。その姿は痛々しく、勝負はすでに目に見えているように感じられた。
ようやく自分の足を先に治療しなければならないと気づいたのか、ジンが切り落とした脚部が猛烈な勢いで再生し始めた。
浮いた胴体をさらに蹴り上げさらに上空へと持ち上げる。それを防ごうと大蜘蛛は攻撃が当たる瞬間に腕を交差させてジンの攻撃をガードする。それを見て舌打ちをしながらジンは地面に戻る。遅れて大蜘蛛がズンッという音を立てながら着地した。
再び睨み合い、今度は化け物の方からジンに接近する。伸ばされた腕と鎌を回避していると背筋にまた痛みが走り、顔が歪む。その一瞬でできた隙に反応して大蜘蛛は新たに鎌から腕を分岐させ、それでジンの右腕を掴み自分の方へと引き寄せる。
ジンの眼前には鎌が迫り、それがぶつかる直前で彼は体を捻って回避する。そして腰にぶら下げていた短剣で自分を掴む腕の手首を狙って切りつける。しかしその腕を覆う外皮は硬く、刃は通らない。
攻撃に失敗した大蜘蛛は、別の腕を伸ばして彼の残りの手足を掴もうとする。それを察知したジンは剣に封じられていた金神術を解放する。短剣はより鋭利になり、強度を増した。そのまま彼は自分を掴む手の親指に目掛けて刃を立てる。今度はわずかだが突き刺すことに成功した。相手が痛みで拘束を緩めた瞬間にそこから腕を引っ張り出す。そして流れるように自分を掴んでいた腕を蹴って距離を取る。
地面に片手をつきながら相手を見据えると、相手の切られた腕が体内に吸収された。次の瞬間、新たな、それも傷がついていない腕が同じ部分から生えてくる。
「…チッ、再生能力まであるのかよ」
ジンは苛立ちのあまり舌打ちをする。気がつけばシオンが与えた傷もわずかずつではあるが再生しつつある。
「長期戦は不利だな」
脳内麻薬が出ているためか、すでに背中からの痛みはない。しかし彼は背に手を回して自分の状態を確認する。傷は深すぎはしないが浅くもないようだ。身体能力を強化したことで回復力が向上しているはずの彼の体からは未だに出血が続いている。あまり時間を掛けていると、相手を倒す前に出血多量で意識を失ってしまうかもしれない。
1つ大きく息を吐き出すと、相手の様子を再度確認する。どうやらこちらが攻撃をしないので警戒しているのか、あるいは回復に専念しているのか眼だけをジンに向けたまま動こうとしない。
「ありがてぇ」
ジンは笑う。相手がわざわざ彼に猶予をくれたのだ。だから彼は短剣を体の前に出し、刀身に左手を添える。彼のとっておきを披露するために。
「解放!」
その瞬間周囲に黒い風が吹きすさぶ。風は禍々しく、そして荒々しく彼を中心に広がり、やがてそれは彼の剣に徐々に吸収され始めた。徐々にその刃は輝く銀の色から忌まわしい黒色へと染め上げられてゆく。変色した刀身はまるで生きているかのように不気味に脈動をする。禍々しいその姿はまさに魔剣と表現するにふさわしい。
「くっ」
黒い短剣がジンからごっそりと力を奪い取っていくのを感じる。その力を使って、短剣はさらなる変貌を遂げようとする。剣の刀身に徐々に鱗紋様が現れ始めたのだ。蜘蛛はその不吉さに警戒心を高める。ジンの額に脂汗がたまり、流れ落ちていった。
ようやく黒い風は収まると、ジンの持つ短剣は黒い、龍の爪のような形態へと変化していた。これこそが彼が持つとっておきの切り札『黒龍爪』である。柄頭には森の主から手に入れた紫色の魔核がはめ込まれ、それには金神術が込められている。
レヴィとの戦いの跡地には二本の黒龍の腕が落ちていた。おそらくレヴィから切り離された時点で人化の術が切れたのだろう。現場を検証していたヴォルクがそれを発見して回収し、ティファニアに渡した。彼女はそれをジンのために用いることに決め、エデンでも随一の刀匠に依頼して武器を作成することにしたのだ。
その二本の龍の腕を鋳溶かし、合金と絡み合わせた。それから生み出されたのが一対の短剣である。レヴィの呪いが込められているのか普段は暴走を抑えるために封印しなければならず、その性能を十全に発揮することはできない。だが一度開封すれば、いかなる敵をも切り裂く凶悪な武器となる。ただこの剣は使用者の肉体を奪おうとする。一度解放すると徐々に剣に人格が奪われていくのだ。3年も扱っているジンですら、二本同時に剣の封印を解除することは危険すぎて不可能な上に、あまり長時間解放した状態で扱うことはできない。
「行くぞ、クソ虫っ」
短剣を前に構えてジンは一気に詰め寄る。大蜘蛛はその短剣の禍々しさに距離を取ろうと器用に後方へとジャンプする。しかしあたり一面をシオンが吹き飛ばしたために何の遮蔽物もない。そのためあっという間にジンが大蜘蛛へと追いついた。
大蜘蛛はジンに向かって爪を伸ばす。それをジンは回避せずに真っ向から切り裂く。封印を解除した『黒龍爪』の切れ味は、解除前までのものとは段違いである。いかに相手が硬くても容易く刃はその体を切り裂く。
しかし切った直後に、その箇所から新たに手が生え、伸びてくる。ジンはそれを体をわずかに捻るだけで躱し、その流れのままにその手すらも切り落とす。
「—————————————!!!」
大蜘蛛はそれを見て怒りの金切り声をあげると、胴体部にある眼から熱戦を放った。至近距離から高速で発射されたそれをジンはあえて踏み込んで躱す。次の瞬間彼は、その蜘蛛の8本ある根元の爪と腕の内の一本を、胴体から切り離した。大蜘蛛が再度悲鳴をあげる。ジンは後方に飛び、距離を取って相手を観察する。
切り落とされた物は、まるで切り落とされたトカゲの尻尾のように未だにビクビクと動いており嫌悪感が募る。しかし胴体部は未だに回復する様子がない。それが意味することをすぐに推察する。そして1つの結論が出た。
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「なら!」
一気に大蜘蛛の左中央の脚部へと駆け寄る。無数に迫り来る熱線を避けながらぐんぐんと近づき、関節の付け根を下から切りあげる。返す刀で胴体に短剣を刺してその場に止まり器用に次の足へと飛びかかる。
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「ちっ」
ジンは舌打ちをすると邪魔をしてきた腕を思い切り蹴飛ばして距離を取った。蜘蛛は背後を取られた状態の危険性を学習したらしく、残った手足で何とか立ち上がるとジンに顔を向けてくる。その姿は痛々しく、勝負はすでに目に見えているように感じられた。
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