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第1章:物語の始まり
日常2
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3人が家路に着いてしばらく歩いたところで、突然角から飛び出してきた男がジンにぶつかってきた。尻餅をついた彼が顔を上げると、そこには軍服を着て帯剣している大柄で無骨な男がいた。二メートル近い身長に、戦傷を隠すためか右目に黒い眼帯をつけている。
「何すんだよ!」
ジンが声を荒げる。
「すまんな坊主。少々急ぎの用があったんでな。坊主たちはこの辺りに全身黒ずくめの男を見かけなかったか?身長は大体160センチ程で、白髪で細身の男なのだが」
ジンの黒髪、黒目を見て眉を少し顰めたがすぐに表情を元に戻して、手を差し伸べて尋ねてきたので、ジンはその手を払いのけて、訝しげに睨みつける。
「見てないよ。それに騎士がこんな場所に何の用だよ」
「いや、見てないなら構わん。それより坊主たちはこの辺りの住人か?」
「ああ」
「先日から街で人喰い事件が発生しているんだ。すでに何人もの人間が死んでいる。それで魔人による事件である可能性が示唆されていてな」
「それが黒ずくめの男なの?」
「さあな。ただそれを受けて先日ナディア様から神託がなされた。それによるとそのうちこの辺りでひどいことが起きるらしい。いまの内に逃げた方がいいぞ。それじゃあ俺はその男を探さないといかんのでここで失礼する」
スラムの外の人間はたとえジンたちのように子供であっても、ゴミを見るような目を向けてくる。それなのにジンたちにも妙に礼儀正しい男は、軽く頭をさげるとさっさと行ってしまった。それを見ていたザックが不思議そうな顔を浮かべた。
「なんなんだあいつ?スラムの奥から出てきたよな。誰かに会いにきたのか?あとナディアって誰だっけ?」
彼が何者であるかはジンにもレイにもよくわからなかった。少なくとも彼が腰に据えていた剣が王国騎士のそれであったことから、ただの一兵卒ではないことだけはわかった。
「いや知らないよ。それにナディア様っていや、キールにいる5人の使徒のうちの1人じゃん。なんで知らないんだよ」
レイはザックの質問が当たり前すぎて呆れた。
この世界には現在確認されているだけで、20人の使徒がいるとされている。彼らは等しく強大な能力を持ち、国の最高戦力とされていた。中でもこの国の王国騎士団、近衛師団、法術師団を預かる3人の団長は、何れも使徒であった。
「つーか、相変わらずお前の髪と目って外の奴らには嫌われてんだな」
ザックが気楽に言う。外の人間はどうやら彼の容姿を不快に思うらしい。初めはなぜかはわからなかったがその傾向は表通りの人間や、貧しさから家を追われスラムに新しく住み着くことになった者たちによく見られるものだった。
ひどい時には「この悪魔め」と言いながら、石を投げつけてくる者もいるほどだ。以前、その中の一人の子供にジンが問い詰めたところ、どうやら悪神オルフェの容姿が黒髪黒目であるらしく、フィリア教徒にとって、その特徴を持つ人間は悪神に使えるものという認識があったのだ。そんなことを思い出してジンは少し不快な気分になったが、気を取り直して再び歩き出した。3人が家の前に着くとドアの前には鬼のような形相のナギが待ち構えていたのはいうまでもない。
「いってらっしゃ~い」
にこやかに言うザックの笑顔を尻目に、うなだれたジンはトボトボと姉の前に歩を進めた。
夕食時、ジンはテーブルの前で目を赤くして真っ赤に腫れたお尻をさすっていた。ナギからのきついお仕置きを受けた後、ミシェルに土下座して謝らされたのだが先ほどの件のせいで未だに気まずい。ジンが彼女の方にチラチラと目を向けると、偶然視線があった。しかしすぐに彼女が視線をそらして知らんぷりしてきたので、ジンはがっくりと項垂れてしまった。
彼にとってそれはナギのお仕置きの次に辛いことである。ここで姉に怒られことの方が辛いと思うあたり、ザックがジンのことを『シスコン』と称するのは的を射ていると言える。そしてそんな彼をザックがからかいながら、食卓に並べられた豪華なうさぎの入ったスープを4人は味わっていった。ジンには罰としてあまり肉が入っていなかった。
次の日、ジンたち3人はいつものように空き地で朝から修行をしていた。ジンの武器は二本の短剣を模した木剣であった。一方で相対しているザックの武器は彼のその体程もある大剣型の木剣である。二人はしばらく見合った後、互いに一気に距離を詰めた。それは彼らぐらいの子供の出せるスピードの限界を超えている。身体強化の術を使っていたからだ。身体強化は体内にある闘気と呼ばれるエネルギーを体に循環させることで可能になる技である。コツさえつかめば誰でもできる、自然の力を用いる法術とは違う技術である。
「おらっ!」
交錯する中で武器が軽い分素早く動くことができるジンは双剣を巧みに扱い、ザックを攻め立てていった。
「ふん!」
それに対しザックは大剣を駆使して、左右からくる双剣を剣の腹で強く弾く。却って逆襲とばかりに剣を弾かれバランスを崩し、右に重心が流れたジンへ上段からの斬りかかる。
「だらっ!」
上から来た大剣を、双剣を交差させることでガードする。ザックの攻撃は非常に重く、徐々に膝が地面に近づいていく。このままでは身動きが取れなくなると考えたジンは、腕に回していた強化のためのエネルギーを少し減らし、一瞬でそれを足に流して、全力で地面を蹴った。
「おわっ!?」
その勢いに押され、ザックの上半身が浮く。その隙を狙ってジンが相手に詰め寄り、胴に剣を叩き込もうとする。しかしザックはそれを読んでおり、バランスを崩した状態で、どうにか足を蹴り上げてジンの攻撃を防ごうとする。しかし胴への攻撃はフェイントであった。
上半身を前のめりにすることで詰め寄る振りをして、その足が当たる前に右に飛び避ける。そしてすかさず右側から相手の体に双剣を向かわせる。ザックは完全に体勢が崩れておりその攻撃を防げない。しかし当たるか当たらないかという直前で、
「『土壁』!」
という叫びとともにジンは大きくその剣を弾かれた。今度こそ本当にバランスを崩し尻餅をついたジンは恨めしげにザックを見上げる。彼の前には土を操り作られた壁があった。
「おいっ、法術は使わないっていう約束だろ!」
「悪い悪い。つい使っちまった。まあいいじゃねえか、レイだってやってるし」
「よくねえよ!俺は身体強化だけしか使えないのに、身体強化だけていうルール無視されたら勝てねえよ。今は剣術の修行なんだから法剣術の練習は後でレイとしてくれよ。それにレイは身体強化が苦手だからその代わりに法術使ってるんだよ。しかもレイは法術のコントロールがうまいからいいけど、お前法術のコントロール苦手だから危ないんだよ。前にお前のせいで腕折れたんだぞ!」
ジンは法術のどの属性にも適性がないらしく、法術を全く使えない。彼のような存在は『加護無し』と蔑まれる対象であった。これももしかしたら他者から不気味に思われる理由の一つかもしれない。フィリアの加護を与えられた人間は、どれかの属性に必ず適性があるのだ。
しかし彼はどれも使えない。ナギの弟でなければ、オルフェの使いとして早々に殺されていたかもしれない。その代わり彼はそれを補うほどに、闘気の扱いに長けていた。法術が使えないからこそその訓練を人一倍しており、現在では術が使えない不利をカバーしていた。特に自分の体の一部に気を集中させるという芸当をできる者はなかなかいないのだが、そのことをジンたちは知らなかった。
ジンはひとしきり文句を言った後で、ぶつくさ言っているザックを放置して今度はレイと対決することにした。レイはレイピア型の木剣を持って構えている。彼は身体強化が苦手であるが法術を織り交ぜつつ、とにかく正確で緻密な攻撃を加えてくる。その法術は正直に言ってザックと比べると格が違う。
ザックは重く、速い攻撃をしてくるが、隙がかなりある。しかしレイは法術で水を空気中から作り出し、遠距離から攻撃してくる上に、剣においてはカウンター型である。剣を交える時は基本的に隙を狙うか、時間を稼ぎ法術を放つ準備をしてくる。そのため一瞬の隙を見せると、剣か水弾が飛んでくるのだ。ジンはいつも通り、的を定められないように高速で動き回りながら、接近戦を挑むことにした。
「『水弾』!」
レイが水球を飛ばしてくる。それはジンの頭の上を通ろうとしている。これはフェイクだと彼は瞬時に判断する。以前にも同じような攻撃があり、その時も的外れだと思ったら水球が突然形を崩してジンの頭に降りかかり眼を潰されたことがあったのだ。そこで彼は足に力を入れて右側に横飛びする。しかし着地しかけた瞬間にジンの顔に水弾が飛んできた。レイが彼の動きを読んで先手を打っていたのだ。
避けられないと感じたジンは左手の剣一本で顔をかばいながら、右手の剣をレイに向かって投げつけた。ジンは体を後方に吹き飛ばされる。一方で水弾を飛ばした直後でそちらに意識が向いていたレイは、慌ててしゃがんでそれをなんとか避けようとした。そのせいで一瞬視線がジンから外れてしまう。そのすきに態勢を立て直したジンは、5メートルほどあった距離を一気に縮める。
しかし攻撃しようとした瞬間に後ろに飛ぶことを余儀なくされる。レイはジンが近づいてきたら発動するように、罠としてスパイクのついた水壁を自分の周りに張っていたのだ。そしてジンが攻めあぐねている間にレイは呼吸を整え、集中力を取り戻し再度水弾を作り始める。そこでジンは再度距離を取り、相手の攻撃に備えた。そしてレイの水弾が3つ完成し水壁を解除した瞬間に一気に突っ込んだ。高速でジグザグに走り、一つ目の水弾を避ける。
だが避けたことでできた隙を狙ってレイが2つ目の水弾を放ってくる。それを予想していたジンは剣を使ってそれを弾き、さらに近づこうとする。しかしそれを許そうとしないレイは最後の水弾を放つが、ジンはそれをギリギリで避けながら再度、左手に残っていた剣をレイの胴体に投げつける。それを避けるためにとっさに目線を動かしたレイが直ぐにジンに目を戻したが、その一瞬の間にジンは後ろに回っており首に腕を絡めて軽くしめてきた。それを受けてレイは降参した。
「何すんだよ!」
ジンが声を荒げる。
「すまんな坊主。少々急ぎの用があったんでな。坊主たちはこの辺りに全身黒ずくめの男を見かけなかったか?身長は大体160センチ程で、白髪で細身の男なのだが」
ジンの黒髪、黒目を見て眉を少し顰めたがすぐに表情を元に戻して、手を差し伸べて尋ねてきたので、ジンはその手を払いのけて、訝しげに睨みつける。
「見てないよ。それに騎士がこんな場所に何の用だよ」
「いや、見てないなら構わん。それより坊主たちはこの辺りの住人か?」
「ああ」
「先日から街で人喰い事件が発生しているんだ。すでに何人もの人間が死んでいる。それで魔人による事件である可能性が示唆されていてな」
「それが黒ずくめの男なの?」
「さあな。ただそれを受けて先日ナディア様から神託がなされた。それによるとそのうちこの辺りでひどいことが起きるらしい。いまの内に逃げた方がいいぞ。それじゃあ俺はその男を探さないといかんのでここで失礼する」
スラムの外の人間はたとえジンたちのように子供であっても、ゴミを見るような目を向けてくる。それなのにジンたちにも妙に礼儀正しい男は、軽く頭をさげるとさっさと行ってしまった。それを見ていたザックが不思議そうな顔を浮かべた。
「なんなんだあいつ?スラムの奥から出てきたよな。誰かに会いにきたのか?あとナディアって誰だっけ?」
彼が何者であるかはジンにもレイにもよくわからなかった。少なくとも彼が腰に据えていた剣が王国騎士のそれであったことから、ただの一兵卒ではないことだけはわかった。
「いや知らないよ。それにナディア様っていや、キールにいる5人の使徒のうちの1人じゃん。なんで知らないんだよ」
レイはザックの質問が当たり前すぎて呆れた。
この世界には現在確認されているだけで、20人の使徒がいるとされている。彼らは等しく強大な能力を持ち、国の最高戦力とされていた。中でもこの国の王国騎士団、近衛師団、法術師団を預かる3人の団長は、何れも使徒であった。
「つーか、相変わらずお前の髪と目って外の奴らには嫌われてんだな」
ザックが気楽に言う。外の人間はどうやら彼の容姿を不快に思うらしい。初めはなぜかはわからなかったがその傾向は表通りの人間や、貧しさから家を追われスラムに新しく住み着くことになった者たちによく見られるものだった。
ひどい時には「この悪魔め」と言いながら、石を投げつけてくる者もいるほどだ。以前、その中の一人の子供にジンが問い詰めたところ、どうやら悪神オルフェの容姿が黒髪黒目であるらしく、フィリア教徒にとって、その特徴を持つ人間は悪神に使えるものという認識があったのだ。そんなことを思い出してジンは少し不快な気分になったが、気を取り直して再び歩き出した。3人が家の前に着くとドアの前には鬼のような形相のナギが待ち構えていたのはいうまでもない。
「いってらっしゃ~い」
にこやかに言うザックの笑顔を尻目に、うなだれたジンはトボトボと姉の前に歩を進めた。
夕食時、ジンはテーブルの前で目を赤くして真っ赤に腫れたお尻をさすっていた。ナギからのきついお仕置きを受けた後、ミシェルに土下座して謝らされたのだが先ほどの件のせいで未だに気まずい。ジンが彼女の方にチラチラと目を向けると、偶然視線があった。しかしすぐに彼女が視線をそらして知らんぷりしてきたので、ジンはがっくりと項垂れてしまった。
彼にとってそれはナギのお仕置きの次に辛いことである。ここで姉に怒られことの方が辛いと思うあたり、ザックがジンのことを『シスコン』と称するのは的を射ていると言える。そしてそんな彼をザックがからかいながら、食卓に並べられた豪華なうさぎの入ったスープを4人は味わっていった。ジンには罰としてあまり肉が入っていなかった。
次の日、ジンたち3人はいつものように空き地で朝から修行をしていた。ジンの武器は二本の短剣を模した木剣であった。一方で相対しているザックの武器は彼のその体程もある大剣型の木剣である。二人はしばらく見合った後、互いに一気に距離を詰めた。それは彼らぐらいの子供の出せるスピードの限界を超えている。身体強化の術を使っていたからだ。身体強化は体内にある闘気と呼ばれるエネルギーを体に循環させることで可能になる技である。コツさえつかめば誰でもできる、自然の力を用いる法術とは違う技術である。
「おらっ!」
交錯する中で武器が軽い分素早く動くことができるジンは双剣を巧みに扱い、ザックを攻め立てていった。
「ふん!」
それに対しザックは大剣を駆使して、左右からくる双剣を剣の腹で強く弾く。却って逆襲とばかりに剣を弾かれバランスを崩し、右に重心が流れたジンへ上段からの斬りかかる。
「だらっ!」
上から来た大剣を、双剣を交差させることでガードする。ザックの攻撃は非常に重く、徐々に膝が地面に近づいていく。このままでは身動きが取れなくなると考えたジンは、腕に回していた強化のためのエネルギーを少し減らし、一瞬でそれを足に流して、全力で地面を蹴った。
「おわっ!?」
その勢いに押され、ザックの上半身が浮く。その隙を狙ってジンが相手に詰め寄り、胴に剣を叩き込もうとする。しかしザックはそれを読んでおり、バランスを崩した状態で、どうにか足を蹴り上げてジンの攻撃を防ごうとする。しかし胴への攻撃はフェイントであった。
上半身を前のめりにすることで詰め寄る振りをして、その足が当たる前に右に飛び避ける。そしてすかさず右側から相手の体に双剣を向かわせる。ザックは完全に体勢が崩れておりその攻撃を防げない。しかし当たるか当たらないかという直前で、
「『土壁』!」
という叫びとともにジンは大きくその剣を弾かれた。今度こそ本当にバランスを崩し尻餅をついたジンは恨めしげにザックを見上げる。彼の前には土を操り作られた壁があった。
「おいっ、法術は使わないっていう約束だろ!」
「悪い悪い。つい使っちまった。まあいいじゃねえか、レイだってやってるし」
「よくねえよ!俺は身体強化だけしか使えないのに、身体強化だけていうルール無視されたら勝てねえよ。今は剣術の修行なんだから法剣術の練習は後でレイとしてくれよ。それにレイは身体強化が苦手だからその代わりに法術使ってるんだよ。しかもレイは法術のコントロールがうまいからいいけど、お前法術のコントロール苦手だから危ないんだよ。前にお前のせいで腕折れたんだぞ!」
ジンは法術のどの属性にも適性がないらしく、法術を全く使えない。彼のような存在は『加護無し』と蔑まれる対象であった。これももしかしたら他者から不気味に思われる理由の一つかもしれない。フィリアの加護を与えられた人間は、どれかの属性に必ず適性があるのだ。
しかし彼はどれも使えない。ナギの弟でなければ、オルフェの使いとして早々に殺されていたかもしれない。その代わり彼はそれを補うほどに、闘気の扱いに長けていた。法術が使えないからこそその訓練を人一倍しており、現在では術が使えない不利をカバーしていた。特に自分の体の一部に気を集中させるという芸当をできる者はなかなかいないのだが、そのことをジンたちは知らなかった。
ジンはひとしきり文句を言った後で、ぶつくさ言っているザックを放置して今度はレイと対決することにした。レイはレイピア型の木剣を持って構えている。彼は身体強化が苦手であるが法術を織り交ぜつつ、とにかく正確で緻密な攻撃を加えてくる。その法術は正直に言ってザックと比べると格が違う。
ザックは重く、速い攻撃をしてくるが、隙がかなりある。しかしレイは法術で水を空気中から作り出し、遠距離から攻撃してくる上に、剣においてはカウンター型である。剣を交える時は基本的に隙を狙うか、時間を稼ぎ法術を放つ準備をしてくる。そのため一瞬の隙を見せると、剣か水弾が飛んでくるのだ。ジンはいつも通り、的を定められないように高速で動き回りながら、接近戦を挑むことにした。
「『水弾』!」
レイが水球を飛ばしてくる。それはジンの頭の上を通ろうとしている。これはフェイクだと彼は瞬時に判断する。以前にも同じような攻撃があり、その時も的外れだと思ったら水球が突然形を崩してジンの頭に降りかかり眼を潰されたことがあったのだ。そこで彼は足に力を入れて右側に横飛びする。しかし着地しかけた瞬間にジンの顔に水弾が飛んできた。レイが彼の動きを読んで先手を打っていたのだ。
避けられないと感じたジンは左手の剣一本で顔をかばいながら、右手の剣をレイに向かって投げつけた。ジンは体を後方に吹き飛ばされる。一方で水弾を飛ばした直後でそちらに意識が向いていたレイは、慌ててしゃがんでそれをなんとか避けようとした。そのせいで一瞬視線がジンから外れてしまう。そのすきに態勢を立て直したジンは、5メートルほどあった距離を一気に縮める。
しかし攻撃しようとした瞬間に後ろに飛ぶことを余儀なくされる。レイはジンが近づいてきたら発動するように、罠としてスパイクのついた水壁を自分の周りに張っていたのだ。そしてジンが攻めあぐねている間にレイは呼吸を整え、集中力を取り戻し再度水弾を作り始める。そこでジンは再度距離を取り、相手の攻撃に備えた。そしてレイの水弾が3つ完成し水壁を解除した瞬間に一気に突っ込んだ。高速でジグザグに走り、一つ目の水弾を避ける。
だが避けたことでできた隙を狙ってレイが2つ目の水弾を放ってくる。それを予想していたジンは剣を使ってそれを弾き、さらに近づこうとする。しかしそれを許そうとしないレイは最後の水弾を放つが、ジンはそれをギリギリで避けながら再度、左手に残っていた剣をレイの胴体に投げつける。それを避けるためにとっさに目線を動かしたレイが直ぐにジンに目を戻したが、その一瞬の間にジンは後ろに回っており首に腕を絡めて軽くしめてきた。それを受けてレイは降参した。
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