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第1章:物語の始まり
神話
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この世界には二柱の善神がいた。女神「フィリア」と男神「オルフェ」。彼らは兄妹であり、夫婦であり二人で世界を作り上げたとされていた。
大地を創り降り立った彼らは次に植物や獣といった生命を生み出し、最後に自らの姿を真似た【人】という種を生み出した。創生の時代、神々と人間は近しい存在であり、常に傍にあった。人々は彼らを崇め、彼らの良き子供として平穏な世界を作ろうと精進し二人の期待に応えていった。「オルフェ」と「フィリア」はそんな人々を微笑ましく思い、彼らの発展をしばらく見守った後、天界へと帰っていった。
神々が大地から去った後、数千年が経過した。もはや人間たちにとって創世記は作り話となった。彼らは神を信仰の対象として心の支えとし続けたが、いつの間にか神という存在は形骸化した概念に過ぎなくなっていった。
やがて人々の中から【王】と呼ばれる、広大な領土と配下を持った指導者たちが現れ始めた。彼らは人々を支配するために、自らの権威は神により与えられた正当なものであると唱えた。「オルフェ」と「フィリア」の名を利用し、勢力を拡大していく彼らはその過程で多くの国と争い、滅び滅ぼし、長き歴史の中で多くの無辜の民が命を落とした。
オルフェとフィリアは人々のその様子を天界から眺めて悲嘆にくれた。親を殺された子、子を殺された親。友を殺した者、友に殺された者。人を裏切った者、裏切られた者。怒り、憎しみ、悲しみ、妬み。そういった負の感情が地上を覆い尽くしていった。
そんな世界に悲嘆しオルフェの心は壊れた。そして彼は罪には罰を与えなければならないと思い至った。
争いを防ぐために彼が思い至ったのは、恐怖を等しく心の中に刻み込むというものだった。そうすればきっと罪を犯すものが減ると願った。そして彼は人々に1つの呪いを与えた。
魔物になる呪い。ある日唐突に人々の中から、怪物に変化するものが現れ始めたのだ。姿はまちまちではあったが、これらは強靭な肉体を持ち、人を喰うことで力を増すという特性を持っていた。
さらには稀にオルフェの使徒と称される、通常の怪物とは異なる次元の強さを持った、魔人と呼ばれる存在も現れた。彼らはほぼ完全な人の姿を保っていた。人語を解する知能を持ち、一人で一つの国を滅すほどの力を保持していた。
またそれ以外にも人を餌としてみるゴブリンや、オーク、ドラゴンといった魔獣を数多く作った。そしてそれらの魔獣を使って人間たちにさらなる恐怖を与えた。
しかし彼の思惑は外れた。この呪いによって人々は猜疑心が強くなったのだ。いつ隣人が魔物に変化するかわからなかったからだ。だが彼らは協力し合わなければ、街の外から襲いかかる魔物や魔獣に対抗することはできない。その矛盾を抱え続けることになった。結果、恐慌状態に陥った人々によってさらなる戦乱が引き起こされた。
一向に終わらない殺し合いを見たオルフェは、完全に人間を滅ぼして新たに平和を愛する生命を作り出そうと決めた。彼はそれが、己が創り上げたものに対する責任であると考えたのだ。
一方で、魔獣に怯え、自分が化け物になることを恐れ、死への恐怖に晒され続ける人々を慮って女神フィリアは彼らに法術という力を与えた。神の御技とも呼べるその力によって人々は火、水、土、風の自然の力と光と闇という属性の超常の力を行使することができるようになった。これにより人々は少なくとも魔物や魔獣に対抗する術を持った。さらには呪いの発動をある程度封じる法具を開発し、人々は恐怖から幾分か解放された。
やがて魔人のように周囲と隔絶した力を持つ人間が、わずかに登場し始めた。彼らはフィリアの使徒と呼ばれ、その寵愛を受ける者として、人々の守護者となり、先導者となった。さらに女神はそんな彼らとともに、世界の果てにオルフェとその配下の魔物や魔獣を封じ込めるための大結界を張ることに成功した。そこはいつしか魔界と呼ばれるようになり、魑魅魍魎が跋扈する人の住むことができない世界となった。
だがオルフェの強大な力の前に、フィリアでも完全に世界を隔てることはできなかった。結界には各所に脆い箇所があり、ドラゴンといった一定のレベルの強力な魔獣や魔人以外は人間界に侵入することができた。その上増えすぎた魔獣を完全に消し去ることはできず、人間界には未だに人を食らう獣が闊歩している。また既に人々の魂に刻みつけられた呪いだけは、フィリアにもどうすることもできなかった。
フィリアによって魔界に封じられたオルフェはそこで新たにエルフやドワーフ、獣人といった亜人を生み出した。そこがどんな世界であるかは人々のあずかり知らぬことではあったが、未だにオルフェは人を滅するために、虎視眈々と結界の綻びを用いて自らの配下を送り続けているという。
結界を維持しようとするフィリアと、それを破り今度こそ完全に人類を滅ぼそうとするオルフェの争いは未だに続けられており、世界に安寧が訪れるか、破滅が訪れるかは、その結果次第であると言われている。
大地を創り降り立った彼らは次に植物や獣といった生命を生み出し、最後に自らの姿を真似た【人】という種を生み出した。創生の時代、神々と人間は近しい存在であり、常に傍にあった。人々は彼らを崇め、彼らの良き子供として平穏な世界を作ろうと精進し二人の期待に応えていった。「オルフェ」と「フィリア」はそんな人々を微笑ましく思い、彼らの発展をしばらく見守った後、天界へと帰っていった。
神々が大地から去った後、数千年が経過した。もはや人間たちにとって創世記は作り話となった。彼らは神を信仰の対象として心の支えとし続けたが、いつの間にか神という存在は形骸化した概念に過ぎなくなっていった。
やがて人々の中から【王】と呼ばれる、広大な領土と配下を持った指導者たちが現れ始めた。彼らは人々を支配するために、自らの権威は神により与えられた正当なものであると唱えた。「オルフェ」と「フィリア」の名を利用し、勢力を拡大していく彼らはその過程で多くの国と争い、滅び滅ぼし、長き歴史の中で多くの無辜の民が命を落とした。
オルフェとフィリアは人々のその様子を天界から眺めて悲嘆にくれた。親を殺された子、子を殺された親。友を殺した者、友に殺された者。人を裏切った者、裏切られた者。怒り、憎しみ、悲しみ、妬み。そういった負の感情が地上を覆い尽くしていった。
そんな世界に悲嘆しオルフェの心は壊れた。そして彼は罪には罰を与えなければならないと思い至った。
争いを防ぐために彼が思い至ったのは、恐怖を等しく心の中に刻み込むというものだった。そうすればきっと罪を犯すものが減ると願った。そして彼は人々に1つの呪いを与えた。
魔物になる呪い。ある日唐突に人々の中から、怪物に変化するものが現れ始めたのだ。姿はまちまちではあったが、これらは強靭な肉体を持ち、人を喰うことで力を増すという特性を持っていた。
さらには稀にオルフェの使徒と称される、通常の怪物とは異なる次元の強さを持った、魔人と呼ばれる存在も現れた。彼らはほぼ完全な人の姿を保っていた。人語を解する知能を持ち、一人で一つの国を滅すほどの力を保持していた。
またそれ以外にも人を餌としてみるゴブリンや、オーク、ドラゴンといった魔獣を数多く作った。そしてそれらの魔獣を使って人間たちにさらなる恐怖を与えた。
しかし彼の思惑は外れた。この呪いによって人々は猜疑心が強くなったのだ。いつ隣人が魔物に変化するかわからなかったからだ。だが彼らは協力し合わなければ、街の外から襲いかかる魔物や魔獣に対抗することはできない。その矛盾を抱え続けることになった。結果、恐慌状態に陥った人々によってさらなる戦乱が引き起こされた。
一向に終わらない殺し合いを見たオルフェは、完全に人間を滅ぼして新たに平和を愛する生命を作り出そうと決めた。彼はそれが、己が創り上げたものに対する責任であると考えたのだ。
一方で、魔獣に怯え、自分が化け物になることを恐れ、死への恐怖に晒され続ける人々を慮って女神フィリアは彼らに法術という力を与えた。神の御技とも呼べるその力によって人々は火、水、土、風の自然の力と光と闇という属性の超常の力を行使することができるようになった。これにより人々は少なくとも魔物や魔獣に対抗する術を持った。さらには呪いの発動をある程度封じる法具を開発し、人々は恐怖から幾分か解放された。
やがて魔人のように周囲と隔絶した力を持つ人間が、わずかに登場し始めた。彼らはフィリアの使徒と呼ばれ、その寵愛を受ける者として、人々の守護者となり、先導者となった。さらに女神はそんな彼らとともに、世界の果てにオルフェとその配下の魔物や魔獣を封じ込めるための大結界を張ることに成功した。そこはいつしか魔界と呼ばれるようになり、魑魅魍魎が跋扈する人の住むことができない世界となった。
だがオルフェの強大な力の前に、フィリアでも完全に世界を隔てることはできなかった。結界には各所に脆い箇所があり、ドラゴンといった一定のレベルの強力な魔獣や魔人以外は人間界に侵入することができた。その上増えすぎた魔獣を完全に消し去ることはできず、人間界には未だに人を食らう獣が闊歩している。また既に人々の魂に刻みつけられた呪いだけは、フィリアにもどうすることもできなかった。
フィリアによって魔界に封じられたオルフェはそこで新たにエルフやドワーフ、獣人といった亜人を生み出した。そこがどんな世界であるかは人々のあずかり知らぬことではあったが、未だにオルフェは人を滅するために、虎視眈々と結界の綻びを用いて自らの配下を送り続けているという。
結界を維持しようとするフィリアと、それを破り今度こそ完全に人類を滅ぼそうとするオルフェの争いは未だに続けられており、世界に安寧が訪れるか、破滅が訪れるかは、その結果次第であると言われている。
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