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しおりを挟む醜い心の持ち主だと知られて、ベアテルに嫌われるかと思ったが、そんなことは一切なかった。
むしろ、ベアテルを喜ばせることとなり、その結果、レヴィは大変な目に遭っていた――。
「ぅぅっ……。も、もぅ、いろいろと、限界っ……ですっ」
ぐったりと寝台に横たわるレヴィは、ベアテルによってつけらけた、愛の印が散りばめられた己の体を抱きしめる。
既に一度、ベアテルと愛し合い、レヴィは何度達したかわからないほど、ぐずぐずにされてしまっているのだ。
それなのに、ベアテルはレヴィに覆い被さったまま、動こうとはしなかった。
(っ、もう、本当にこれ以上は無理だ……。今、意識があるだけ奇跡だと思う……)
レヴィがそう目で訴えれば、ベアテルは困ったように微笑んだ。
「――俺以外には、そんな愛らしい顔を見せないでくれ。誰もが、レヴィを求める獣になる……いや、俺が一番、危険かもしれないな」
「……ひっ、」
涙目になるレヴィを見下ろすベアテルは、弱った獲物を狙う頂点捕食者のような鋭い目をしていた。
部屋の明かりはつけたままなため、お互いの顔がよく見えてしまうのだ。
いつものように暗くしてほしいと頼んでも、ベアテルは聞こえないふりをする。
だからレヴィは、真っ赤になった体を極力見られたくないと隠しているが、その行動が逆にベアテルの興奮を煽っていることに、レヴィが気付くはずもなかった――。
(……ぼく、無事に朝を迎えられるのかな……?)
醜態を晒さないよう、小さく丸まって逃げたつもりのレヴィを、ベアテルが背後から包み込む。
「ひあっ!? う、うそっ……そんなっ」
とろとろになった後蕾に、熱いものが押し当てられ、レヴィは驚愕する。
なにせ交わる時は、正面から抱き合ってするものだと思っていたのだ。
だからレヴィは横向きで縮こまっていたのだが、まさか背後から愛されるなど、想定外だった。
「レヴィ。もう一度、いいか?」
「……んッ」
ベアテルに耳元で強請られ、レヴィはぶるりと震える。
ここで否と答えたところで、ベアテルはレヴィを解放するつもりなどないだろう。
どんな危険からも守ってくれる逞しい腕は、レヴィの体を抱きしめて離さないのだから――。
「うぅっ……ベアテル、さま……」
後蕾には、早く入りたいとばかりに、熱いものを擦り付けられる。
それだけでも、ぞくぞくしてしまう。
レヴィがベアテルの腕にしがみつけば、合意したと思ったのか、熱はゆっくりと中に入ってくる。
「ひ、ぁ……だ、だめっ……あ、あァッ……んぅぅぅぅ~~~~ッ!!」
じわじわと、優しく。
だが、奥まで貫かれ、目の前に星が散る。
既に一度、欲を放ったというのに、ベアテルの熱は硬さを増しているような気がした。
(愛されすぎて、頭がおかしくなりそうっ。……ううん。もうすでに、おかしいのかも……)
口ではダメだと言いつつも、レヴィの体はベアテルに与えられる痺れるような快感を、待ち望んでいるのだから――。
とんでもなく、淫らだ。
それでも気持ちのいいところを擦られると、頭の中が真っ白になる。
ただただ深く愛され、なにも考えられなくなったレヴィは、硬い熱をきゅんと締め付けていた。
「っ、く……レヴィ……」
レヴィを翻弄しているはずのベアテルが、苦しげな息を吐いた。
ゆっくりと律動が始まる。
寝台の軋む音と、肌のぶつかる音が響き、レヴィの声は、あまりにも容易く蕩けていく。
「ぁっ……ぁっ……ぁっ……んぁぁ……」
「――可愛い」
うっとりと告げたベアテルに、うなじに吸い付かれる。
体はとうに限界を迎えているはずだが、レヴィは幸せな気持ちのまま、びくびくと震えていた。
身も心も蕩けてしまいそうだ。
「レヴィ、気持ちいいか……? それとも、辛いならやめるか?」
「は、ぁ……ん……きもち、い……」
「つっ、」
無意識のうちに呟けば、ベアテルにぐっと腰を掴まれる。
これをされると、レヴィの胸はこれでもかと高鳴ってしまう。
ベアテルの動きが、どんどん大胆になる合図だ。
「あっ……あッ……んッ……あぁァッ!」
まるで種付けするかのように奥を刺激され、その度に、開きっぱなしの口からは、勝手に甘ったるい声が漏れてしまう。
いやいやと、首を振る。
すると、ゴツゴツとした手が、レヴィの口元を覆った。
「これでいいか……?」
ベアテルはレヴィの声を可愛いと言うが、レヴィ自身はみっともないとしか思っていない。
そのことを知っているベアテルは、口付けをする代わりに、手で塞いでくれたのだろう。
「んっ」
大人しく頷いたレヴィは、大好きな手に触れる。
もう力が入らない。
それでもすりすりと撫でていれば、ベアテルが笑った気配がした。
まったりとした空気が流れる。
(とっても、しあわせ……。ずっと、こうしていたい……)
今日は勇気を振り絞って、好きだと伝えたが、いつもはベアテルばかりが愛を囁いてくれている。
それに照れてしまうレヴィは、「僕も」と答えるだけで精一杯だった。
力の入らない指先で、レヴィはベアテルの手の甲に文字を書く。
手は震えているし、伝わらないかもしれない。
それでもレヴィがこっそりとベアテルへの想いを伝えると、背後で息を呑む音がした。
「……す……き……? っ、」
ぐっと、ベアテルの腕の力が強くなる。
正しく読み取ってくれたことが嬉しいような、気恥ずかしい気持ちでいたのだが、中にみっちりと埋まっているものの質量が増した気がした。
「っ、レヴィ、出すぞ」
急にベアテルが荒い呼吸になり、容赦なくレヴィの奥を穿つ。
「ふぅ、んっ、んっ、ンンッ……んんんんんぅぅぅぅ~~~~ッ!!!!」
びくびくと、腰の奥で熱が爆ぜる。
今までは手加減されていたことを知ったレヴィだったが、繋がっている部分から、全身へと快感が駆け巡る。
とうとう意識を保っていられなくなったレヴィは、夢の世界へと旅立っていた――。
翌日、レヴィは招待されたお茶会に顔を出せなかったが、ヴィルヘルムたちは想定内だったようで、誰にも咎められることはなかった。
晩餐会には出席できたものの、謝罪するレヴィを一目見た人々が、なにがあったのかを察していることを、艶々の顔のレヴィだけは知る由もなかった。
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