召喚された最強勇者が、異世界に帰った後で

ぽんちゃん

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 熱の孕む黄金色の瞳に見下ろされ、ドキドキとうるさい心臓の音が、耳まで届く。
 恥ずかしくて目を伏せれば、唇に柔らかな感触。

「んっ」

 角度を変えて、何度も唇を啄まれる。
 言葉にせずとも、ベアテルに与えられる熱から、愛していると伝わってくる――。

「……レヴィ」

 口付けの合間に熱っぽい声で名を呼ばれ、時折「可愛い」と囁かれる。
 幸せすぎてふわふわするレヴィは、ベアテルの服をぎゅっと掴んでいるだけで精一杯だった。

「ん、ぁ……ベアテル、さま……」

 ぼんやりとするレヴィを、ベアテルが強く抱き締める。
 されるがままだったというのに、ベアテルが何度も「幸せだ」と呟くものだから、レヴィは緊張が解けて、頬が緩みっぱなしだった。

(……離縁されなくてよかった)
 
 なにも知らなかったとはいえ、レヴィはベアテルを疑い、離縁しようと動いていた。
 そんな酷い行動を取ってしまったというのに、ベアテルは今もレヴィのそばにいてくれる。
 罪悪感でいっぱいになっているというのに、嬉しくて仕方がない。
 間違った行動を取ってしまったレヴィを見捨てることなく、寄り添ってくれているベアテルを、レヴィはより一層愛おしく思っていた。

「っ!」

 レヴィがふさふさの耳を擽るように撫でれば、ベアテルはびくんと反応する。
 もう隠すことはできないと悟ったのか、今度はベアテルがレヴィにされるがままになっていた。

「ふふっ、かわいいっ」

 口を引き結ぶベアテルが、難しい顔のまま固まっている。
 だが、擽ったいのか、ベアテルの頬はほんのりと赤く染まっていた。
 レヴィに触らせるために、必死に耐えているベアテルが、可愛くてたまらない――。

 これでもかと撫で回したい衝動に駆られるレヴィは、ベアテルを寝台の端に座らせる。
 そして、ベアテルの前に立つレヴィは、祈るように手を組んだ。
 
「はむはむ、したい」

「ッ」

 レヴィのお願いに、ベアテルが鋭い瞳をカッと見開いた。

「昔、僕と遊んでくれた男の子は、ベアテル様でしょう……?」

 ベアテルであってほしい――。
 そうレヴィが願いながら問いかければ、ベアテルは観念したように頷いた。
 レヴィがぱあっと笑みを見せれば、ベアテルは照れ臭そうにガシガシとダークブラウンの髪をかく。
 だが、ベアテルがなかなか了承せず、レヴィは口を尖らせていた。

「……ふたりきりの時は、いつもはむはむさせてくれてた――……ひゃっ!」

 レヴィが拗ねたように告げれば、直様ベアテルに抱き寄せられる。
 膝の上に跨っている体勢が、とんでもなく恥ずかしいのだが、レヴィは今か今かと返事を待つ。

「っ、別にいいが……。あの頃と、今は違う。……どうなっても知らないからな」

「やったあ!」

「…………聞いているのか?」

 ベアテルがなにやら話していたが、レヴィの目は可愛い耳をロックオンしていた。
 茶色の耳を優しく撫で、頬擦りをする。
 くんくんと匂いを嗅げば、ベアテルの腕がレヴィの体をぐっとキツく抱き締める。
 おそらくベアテルは擽ったいのを我慢しているようだが、レヴィはぴくぴくと動く可愛い耳を、ぱくりと食んでいた。

「うっ……」

 心ゆくまではむはむとしたレヴィが、うっとりとした息を吐けば、ベアテルが唸る。
 気付いた時には、寝台に押し倒されていた。

「っ、んんぅ!」

 ベアテルに噛み付くように口付けられて、レヴィは目を見開く。
 ベアテルの動きが素早すぎて、レヴィは一瞬、なにが起こったのかわからなかった。

「は、んっ……ぁ……」

 引っ込んでいた舌を絡め取られ、口内をなぶられる。
 普段は優しく穏やかなベアテルが、獣のようにレヴィを貪る姿に、レヴィはぞくりとする。

(っ……食べられちゃう)

 激しく求められているような口付けに、ドキドキが止まらない。
 レヴィが息も絶え絶えになっていると、今度は耳を食まれる。

「ひゃっ……や、やぁ……んんぅ……」

 耳を舐められ、ぞくりと背筋が痺れる。
 レヴィの口からは勝手に甘えた声が出て、恥ずかしいのに、止め方がわからない。

「あっ、」

 淫靡な水音に耳を犯される。
 耳や口を塞ぎたくとも、レヴィの両手はベアテルによって、寝台に押さえつけられていた。

「レヴィが俺にしたことは、こういうことだ。わかったら、もう二度と――……ッ」

 ベアテルの美声を耳に吹き込まれ、レヴィはぶるりと震える。
 レヴィは単純に、熊の耳を可愛がりたかっただけだが、とても破廉恥なことをしてしまったのだと、わからせられたのだと思う。
 反省してはいるのだが、レヴィは蕩けた顔を晒していた。

「は、ぁ……ベアテルさまが、人喰い熊になっちゃった……。僕、限定の……」

 瞬きもせずにレヴィを見下ろすベアテルが、ごくりと唾を飲んだ音が、やけに大きく聞こえた気がした。




















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