俺の婚約者は、頭の中がお花畑

ぽんちゃん

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22 企み

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 俺の計画がバッチリハマり、「あとはお二人で」とフィリップ様にウィンクをして席を立つ。

 内気なフィリップ様だから、縋るような視線を向けて来るかと思いきや、俺に柔らかく微笑んで、自らジークハルト様に話しかけていた。

 ジークハルト様の方も、俺のイチオシだと告げると、それならばと他所行きの顔だが、割と楽しそうに会話していた。

 二人の馬が合えば、婚約してジークハルト様をクリストフ侯爵家の当主の座に就かせる。

 レオンハルト様には、オリバーの監督不行き届きだとか適当に罪をなすりつけて、俺の嫁にする。

「ふふふふふ、完璧だッ!」
「なにが完璧なんだい? エレン」

 恋するお方の美声にビクンと体が跳ねた俺は、ゆっくりと振り返る。

「お、お義父様、ご、ごきげんよう?」
 
 いつもは長い銀髪を束ねているレオンハルト様だが、今日は真っ直ぐに伸ばしており、麗しすぎて目がチカチカする。

「ジークと仲良くしていたと思えば、今度は公爵家の子息に会わせて……何を企んでいるのかな?」
「た、企むだなんて、そんなっ」

 あはははと空笑いをする俺は、ブレスレットを撫で回す。

 にっこりと笑うレオンハルト様に手を引かれて、彼の自室に連れ込まれた俺は、心音がバックンバックン鳴り止まない。

 カチャリ。

 鍵を閉めた音に反応する俺は、いろんな意味で激しい動悸と目眩に襲われている。

 優雅に歩み寄る麗しの美丈夫は、後退る俺の顎を掬う。

「ふふっ、知ってた? エレンはね。嘘をついたり、何か重要な事をするときに、無意識のうちにブレスレットを撫でる癖があるんだよ」
「っ……」

 鼻先が触れそうなほどの至近距離で見つめられて、一瞬で顔に熱が集まる。

「何をする気なのか教えて?」
 
 ごくりと唾を飲む俺に、レオンハルト様は笑みを深めた。

「この間……。ジークとキスしていただろう?」
「し、してませんっ!」
「前に言ったよね? ジークはクリストフ家の跡継ぎだから諦めて、って」

 こくこくと小刻みに頷く。

「ジ、ジークお義兄様に、婚約者を見つけてあげようかなあ? と思っただけです」
「ふふっ、そうだったのか。それで? エレンはどうするの? 新しい婚約者」
「こ、候補はいます。……一人いますけど、了承してくれるかどうか……」
 
 目を瞬かせていると、驚いた様子のレオンハルト様が俺の顎から手を離した。

「そうか」
「…………お義父様?」
 
 俺の顔を凝視して、柔らかく微笑んだレオンハルト様は、一人ソファーに腰掛けた。

「きっとエレンなら大丈夫だろう」
「そうでしょうか……。自信がありません」
「エレンは私の自慢の息子だからな。断る奴がいるなら、この目で見てみたいものだ」

 優雅に足を組むレオンハルト様がくすりと笑う。

 そろそろと歩み寄った俺は、膝の上に置いていた大きな手を控えめに握った。


「俺と、結婚して下さい」


 目を見開いたレオンハルト様の様子に、見切り発車で暴走してしまったことに気付いた俺は、盛大にパニックになっている。

「こ、断る奴が、いたら、見てみたい、です!」
「…………ククッ」
 
 声を押し殺して笑うレオンハルト様は、我慢しきれなかったのか、腹を抱えて笑い出す。

「ちょ、わ、笑いすぎ……っ」
「クククククッ、すまないっ、」
「全っっ然、悪いと思っていないですよね?」
「はあ……少し待って、ククッ……」

 人生で初めてプロポーズをしたというのに、愛する人に大爆笑されて、掴んでいた手を離した俺は、腕を組んで仁王立ちする。
 
「っ、相手が誰でも応援すると、父の許可を得ていますっ! ジークお義兄様にフィリップ様を紹介したのも、お義父様を当主の座から引き摺り下ろす為ですっ!」
「ふふっ、なるほどね?」

 指先で目尻の涙を拭ったレオンハルト様は、俺からの告白は相当面白かったらしい。

 相手にされていないことはわかっていても、もうここまで来たら止めることはできない。

 頷いてもらうまで説得しようと、汗ばむ掌を握りしめる。

「全く好きでもないオリバーを俺の婚約者にした責任を取って、俺の妻になってください!」
「プハッ……わ、私が妻なのか?」
「そうですよ?! 何かおかしいですか?! お義父様がブラッド侯爵家に嫁ぐんですから、嫁ですよね?!」
「クククククッ……ちょっと、もう、笑わせようとしないでくれる?」
「俺は本気ですっ!!!!」

 真っ赤な顔で叫ぶ俺は、レオンハルト様をキュンキュンさせるようなプロポーズがしたかったのに、と唇を噛む。

 そんな俺の手を引いた美丈夫は、子供の頃と同じように、俺を膝の上に乗せる。

「四十手前の私を、可愛いエレンの妻にしてくれるかい?」
「……えっ、」
「まあ、それは書面上の話だけど」

 含みのある言い回しに、ドキリと心臓が飛び跳ねる俺は、全身茹で蛸状態でゆっくりと頷いた。

 妖艶な笑みを浮かべて俺の頬を撫でるレオンハルト様は、触れるだけの優しい口付けを落とす。

 初めてのキスに、唇が震えて言葉が出てこない。

 薄くセクシーな唇をぺろりと舐めて、口角を上げたレオンハルト様は色気が大爆発している。

 いろいろとキャパオーバーになった俺は、嬉しいやら恥ずかしいやらで、込み上げて来る熱いものをぐっと堪えた。

 優しく抱きしめられて、夢じゃないかと思いながら、決して叶うことのないと思っていた初恋のお方にきゅっとしがみつく。


 ――跡継ぎは、エレンに似た可愛い子が良いな。


 腰にくる甘い声で囁かれた俺は、気を失った。


















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