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4 二人の愛
しおりを挟むマイキーの働く食堂のランチを口に運びつつ、彼の働く姿を観察する。
ドタバタと走り回るマイキーは、明らかに高価な装飾品を身に付けている男性に笑顔を振りまいて、たまにドジをして可愛いアピールをしていた。
そんなわかりやすいアピールでも、男性陣はニコニコ笑顔だ。
ハッキリ言って、顔のランクは中の下。
いや、下の上?
それでもお客さん達は、舌をぺろりと出すマイキーを可愛い可愛いと口々に褒めていた。
あのあざと可愛い演技が、守ってあげたくなる。そんな感じに見えるのだろうか。
俺も真似してみようかな?
……いや、無理だ。普通に気色悪すぎる。
「俺のマイキーなのに……」
目の前の料理に一向に手を付ける気配のないオリバーは、他の男性に褒められてピョンピョン飛び跳ねるマイキーを眺め続けている。
嫉妬心をメラメラに燃やしているけれど、面倒臭いのであえて無視する。
「エレン様、あれはさすがに……」
「ああ。でも今は黙ってて」
ルカもマイキーが本当にオリバーが好きなのか、と気づいたようで顔を顰めていた。
だが、オリバーとマイキーが結婚後にどうなろうと俺の知ったことではない。
すると、とうとう堪えきれなくなったオリバーが激しく机を叩いて席を立った。
「マイキー! 他の男に笑顔を見せないでくれ! 嫉妬で死んでしまいそうだ!」
「オリー!? どうしたの? 僕が好きなのはオリーだけだよ! 信じて……」
「っ……すまない、マイキー。あまりにもマイキーがモテるから、心配で……」
「ううん、いいの。オリーがそうやって僕を心配してくれて嬉しいっ!」
ひしっと抱き合う二人の甘々な空気に、白目を剥きそうになりながら、俺は優雅に水を飲み干した。
「……置いて帰りますか?」
今まで黙っていた我慢強いネイソンが、ついに弱音を吐く。
「いいや、ダメだ。まだ彼の良いところを見つけられていないからな!」
「え……。それって、私が生きている間に見つけられます?」
「ネイソン……。実は辛口だったんだな?」
「いえ、そんなことはありませんよ? でもさすがの私も見ていられないです」
ネイソンの眉間の皺をくりくりといじっていると、またしてもルカに怒られる。
「エレン様! ネイソンさんを揶揄うのはやめてくださいっ!」
「ふふっ、嫉妬するルカは可愛いね~?」
「なっ!! 違いますっ!!」
顔を真っ赤にして否定するルカは、実は密かにネイソンに惹かれている。
お堅いネイソンは気づいていないだろうけど、俺は二人が恋人同士にならないかな? と、こっそり願っている。
心優しい二人はお似合いなんだけどな。
ニヤける俺にあたふたとするルカは、大きな桜色の瞳をきょろきょろと動かす。
演技派のマイキーなんかより、素のルカの方が圧倒的に可愛い。
「と、とりあえず! 彼の良いところを捏造でもして、侯爵様にお伝えしましょう!」
「そうですね、私もそれが良いと思います」
ルカとネイソンの意見が一致して、俺も渋々マイキーの良いところを見つけ出すことを諦めた。
「マイキー、もう行かないと……」
「嫌だよ、オリー! まだ一緒に居たい」
「俺だって! ずっと離れたくないよ!」
「オリー……、早くマイキーを迎えにきてね?」
「わかってる。必ず父上を説得してみせる!」
永遠の別れを惜しむかのような二人を視界の端に入れる俺は、マイキーの良いところを必死に考えている。
……てか、説得するのはどうせ俺だろうが。
能天気なオリバーをよそに、俺は深く長い溜息を吐く。
いつまでもマイキーの手を離さないオリバーを、ネイソンが無理矢理馬車に押し込んで、ようやく帰れることになった。
帰りの馬車の中でも、オリバーが延々とマイキーとの惚気話をしており、俺達三人はひたすらうんうんと頷いて、苦痛な時間を過ごしたのだった。
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