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第十章

232 王太子殿下との取り引き ※

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 アルベニア国のお騒がせ王女様たちが去ってから一ヶ月が経ち、季節は夏を迎えようとしていた。

 昼間は青々とした木々の下を散歩し、夜は満天の星空を眺めて、とても優雅な暮らしを送っている俺は、『今日も平和だなあ』と呟く。

 最近の口癖になっている言葉を吐いた俺は、ぶっちゃけ暇人である。

 魔物討伐に参戦していた頃に比べたらあまりに平和で、疫病が蔓延する未来が想像出来ないほど、復興作業も順調だ。

 疫病が流行らないことに越したことはないのだが、いつになったら出番が来るのだろうとさえ思っている。

 そんな俺は、現在公務を終えて、疲労困憊の王太子殿下に膝枕をしていた。

 「なあ。まだギルバート様のお父様が滞在してるだろ? あまりに静かすぎて、不気味なんだけど」
 「そうだね。でも、彼は癒しの聖女様より、息子の側にいたいだけじゃないかな? いつも遠くから見てるしね」
 「ふぅん。意地悪しないで、会わせてあげたら良いのに」
 「イヴは本当に優しいよね? すぐ許しちゃうんだから……。そんなところも好きだけどっ」

 目を伏せたままくすりと笑うジュリアス殿下が、俺の太腿に頬擦りをする。

 擽ったいと文句を言いつつも、俺はサラサラとした金色の髪を愛でる。

 「クラリッサはけじめをつけたけど、元々父親と関わりがなかったからね? でも、ギルバートの場合は剣術の腕もあったし、父親から目をかけられていたんだよ」
 
 ライアン陛下の体格を思い出し、もしかしたら凄腕なのかもしれないと思いながら相槌を打つ。

 母国では側妃たちの手前、態度には出していなかったようだが、本当は父親から愛されているのだと思う。

 「本人は、今更かよってうんざりしたように言ってたけど。仲直りするならするで、アイツのことだから勝手に会いに行くでしょ」
 「確かにそうだな、俺たちは見守るか」

 機嫌良さそうにうんと頷くジュリアス殿下がにこりと微笑み、体を起こした。

 煌めく碧眼に見つめられながら押し倒されるのだが、俺は綺麗なお顔を鷲掴みにする。

 「またやるのか?」
 「またって、四日ぶりだよ!? こっちはイヴ不足で死にそうなのに!! 毎日セックスしたい気持ちを我慢している、私の身にもなって?! 前回だって、イヴの体のために一回だけにしたよね!? しかも我慢してるからすぐに達しちゃうしっ! 本当なら、イヴが気絶するまでドロドロに愛したいのにっ! ねぇ、偉いと思わない!?」
 「うっ……」

 矢継ぎ早に話すジュリアス殿下の圧に、こくこくと激しく同意してあげる。
 
 言葉に詰まる俺は、未だにきちんと守られている添い寝ローテーションとやらのせいで、毎日のように恋人に襲われ続けている。

 力が漲るのは良いことなのだが、みんな添い寝だけでは済まないし、元々悪い俺の頭がさらに馬鹿になりそうだ。

 「ジュ、ジュリアスの底無しの愛のおかげで、俺の癒しの力が満タンに……」
 「イヴが力を無限に蓄えられることを、私が知らないとでも? むしろ私が教えたんだよね?」
 「…………すみませんでした」

 なんで俺が謝罪しなきゃならないんだと思いながらも、不貞腐れている恋人の機嫌を取る。

 触れるだけの口付けで、すぐに機嫌が良くなるジュリアス殿下。

 だが、悩ましげな表情を浮かべたと思ったら、急にパッと目を輝かせた。

 「そうだ! 今度、騎士団の見回りにこっそりついて行く?」
 「えっ……。いいのか?」
 「うん。今も苦しんでいる民がいるかもしれないし、助けに行って? イヴの願いでもあるしね」
 「っ……ジュリアス」

 うるさい大臣共は私がなんとかする、と告げた頼もしい恋人を抱きしめる。

 なんだかんだで、いつも俺のことを一番に考えてくれている優しい王子様だ。

 彼から香る百合のような匂いを嗅ぐだけで、俺は幸せな気持ちになっていた。

 「癒しの力を空にしてきても良いよ? 私がたっぷり補充してあげるから」
 「…………それが目的なんじゃ」

 口を塞がれて、言葉を飲み込む。

 たっぷりと口付けをして、全身を舐め回される俺は、ぴくぴくと体が跳ねて陰茎からも蜜を溢す。

 愛情深い恋人たちのおかげで、俺は少しの刺激でも反応してしまう体に、作り替えられてしまっていた。

 「ぁッ……ジュリアス……んぁっ、ンッ……」
 「今日はイヴの好きな後ろからしようね」
 「っ、べ、別に好きじゃない……んんッ」

 くすりと笑ったジュリアス殿下が裸体を曝け出し、すでに力の入らない俺の体をうつ伏せにする。

 腰を軽々と持ち上げて、さっとクッションを突っ込む手際の良い王子様は、俺の後蕾を舐め始めた。

 「ひぁッ! 舐めるな、馬鹿犬っ!」
 「ふふっ。私に舐められて、嬉しそうにお尻をふりふりしてるイヴに言われたくない」
 「っ……クソやろっ、んぁぁ──ッ!」

 枕に顔を埋めて声を抑えるが、言われた通りに腰を揺らしてしまう俺は、陰茎をしごかれて、あっという間に達していた。

 心地よい快感に襲われて、もうこのまま眠ってしまっても良いのに、俺の後蕾は、この先の行為を急かすようにひくひくと動く。

 そんな俺の期待に応えるかのように、すぐに指を突っ込まれて、パラパラとかき混ぜられると、さらなる快感になにも考えられなくなる。

 「新しいクッションを用意しないと。すぐに汚しちゃうんだから……。本っ当可愛い。我慢出来ないから、もう挿れるね?」
 「っ、ん、ぁっ、ンンンンンッ」
 「はっ、すごい締め付け……。私のものを咥え込んだだけでイッちゃうの? 秘薬がなくても、淫らな体になっちゃったね?」
 「ッ……ぁっ……ぁっ……んっ……んぅっ……」

 誰のせいだよと言ってやりたいのに、突き上げられる度に、俺の口からは艶かしい声が出る。

 ぱちゅんぱちゅんと肌を打ち付ける音が鳴り、いやらしい手付きで太腿を撫で回された。

 「イヴ……。イヴの願いを叶えるから、今日は好きなだけ愛し合いたい。ね、良い?」
 「っあぁぁァッ!」

 奥をぐりぐりとされながら、再度硬くなり始めた陰茎を扱かれて、気持ち良すぎて悲鳴をあげる。

 もう意識が飛びそうな俺は、口から涎を垂れながしてよがり狂う。

 なかなか返事をしない俺に業を煮やしたのか、俺を攻め立てるジュリアス殿下に、急にぺしんと尻を叩かれた。

 「んあッ!」
 「……気絶する前に、起こそうとしたつもりだったんだけど……。すごく感じてる声が出たね? 気持ち良かったんだ」
 「っ、」

 声を指摘されて、カッと頬が熱くなるのだが、中の陰茎をぎゅうぎゅうと締め付けているのだから、俺の体は喜んでいる。

 観察力が鋭い王子様には確実にバレているのだが、諦めが悪い俺は口を引き結ぶ。

 羞恥でぷるぷると震える俺の尻を撫で回すジュリアス殿下は、うっとりとした息を吐き出した。

 「恋人をいたぶる趣味はないんだけど……。イヴが気持ち良いなら、もっとしてあげる」
 「っ、やだ、やめろっ! ンンッ」
 
 軽く尻を叩かれて、シーツを握りしめて耐える。

 然程痛くないのだが、叩かれる度にびくんと尻を振っていることが恥ずかしすぎて、俺は痛いと嘘を吐く。

 だが、もちろん俺の嘘はジュリアス殿下には通用しないので、笑い飛ばされる。

 「嘘。中がうねってる」
 「あッ、ああッ、いやぁ──ッ!」
 「つっ…………。ああ、すごいっ……。ごめん、出すね?」
 「ンンッ! ぁあッ、あッ、やぁッ、イッてる、いやッ、あァッ、ンああぁあぁ────ッ!!」

 腰の奥で熱が爆ぜ、全身を突き抜けるような快感に、ぴゅくっと少量の白濁を漏らす。

 ガクガクと痙攣しながら余韻に浸っていると、ゆっくりと陰茎が引き抜かれる。

 良いところを掠めてびくんと体が反応すると、パンッと良い音が鳴り、尻に刺激を受けていた。

 「ひぁンッ!」
 「っ…………」

 小さな刺激だったのだが、後蕾からは出された白濁がこぷりと漏れて、僅かな快感に打ち震える。

 それと同時に、背後から漂う百合の香りが一層濃くなった気がした。

 やばいやばいと無意識に危機を感じとる俺は、必死に気絶しようと試みる。

 だが、こんな時に限ってなぜか意識を保っている俺は、全力で死んだフリをしていたのだが、俺を愛しすぎているジュリアス殿下に、通用するわけがなかった。








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