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第四章
95 もう好きにして ※
しおりを挟む「どうしたんですか?」
「……いや、本気なんだな」
深刻そうな表情で呟くエリオット様は、俺がどんな気持ちでここにいるのかなんて、一切わかっていないのだろう。
深い息を吐いて荒ぶる心を落ち着かせようとしたが、俺は不機嫌丸出しで目を細めていた。
「やらないならテントに戻ります」
頭を抱えるように漆黒の髪を掻き上げたエリオット様は、俺から離れて寝台の端に腰掛ける。
重い空気を纏う美丈夫は、俺に背を向けたまま項垂れてしまった――。
(…………え、俺が悪いのか!?)
確かに冷たい言い方だったかもしれないけど、慰め合いは受け入れたのに。
体の相性が良ければ、口付けなくとも穴があればいいんじゃないのか?
「意味がわからない……」
そう呟いて起き上がった俺は、今は離れたいと願っている人の肩を思い切り掴んで、寝台に押し倒していた――。
真っ白なシーツに漆黒の髪が映える無防備な美丈夫が、目を瞬かせる。
「背後を取られちゃダメでしょ。俺が間者だったらどうするんです?」
「……そう、だな?」
「相手がエヴァさんだったら、今頃骨抜きにされてますよ? 雑魚で良かったですね?」
戯けたように肩を竦めた俺は、淡々と服を脱がせていく。
あんなに触れ合いたくないと思っていたくせに、結局のところ、俺はエリオット様には弱いのだ。
雑魚に乗りかかられて、されるがままの美丈夫は、暫くしてくつくつと笑い始めた。
「なんです?」
「いや、あの女に何をされても勃たない自信しかない。その前に、私に奇襲をかけてきた相手に、骨抜きにされてしまっているからな?」
下着一枚になる色男が、甘い声で囁いた。
その言葉を理解するまでに時間がかかった俺は、カッと目を見開く。
「っ、エヴァさんの前に、色仕掛けに落ちていたんですか?! エリオット様ともあろう人が?!」
「クククククッ……」
「っ、笑い事ですか?! とんでもない事実だ」
エヴァさんの前に、すでに他の女性に陥落していただなんて初耳だ。
エリオット様が騎士団の秘密事項を他人に漏らすとは思えないが、ハニートラップに掛かってしまうと、相手のことしか考えられなくなるらしい。
真面目だった人が、たった一人の女性に溺れて国を裏切るなんて話を聞いたことがある俺は、エリオット様の未来を案じて不安でたまらなくなった。
それなのに、腹が痛いと目尻に涙を浮かばせている美丈夫は、俺の心配などいらないとばかりに笑い飛ばしていた。
すっと上体を起こしたエリオット様が、足の上に跨って百面相をする俺に顔を寄せる。
「だが、その相手には袖にされている。無愛想で口が悪くて、さっきも口付けたくないと拒否されてしまった。顔も見たくないらしく、後ろから突っ込めとも言われたな?」
「…………はあっ?!」
素っ頓狂な声を上げた俺は、いろんな意味で顔が熱くなる。
ありえないだろうと言いたかったが、熱を帯びる瞳は、ただ俺だけを見つめついた。
「私が認めた、たった一人の弟子。ムードの欠片もない男なんだが……それでも酷く可愛いんだ」
「っ、黙って!」
弧を描く唇に口付けて、ぺらぺらとおかしなことを話す口を塞ぐ。
俺の唇を啄んで笑うエリオット様は、ご機嫌になっていた。
「口付けは嫌なんじゃないのか?」
「……エリオット様のせいでしょ」
「フッ、後ろからした方が良いか?」
「っ、もう好きにして!」
むっとしながら吐き捨てるが、心臓は期待するように跳ね上がっていた。
小瓶を取りに行く間も、俺を抱き上げて口付けながら動くエリオット様。
片時も離れたくないと言われているようで、内心喜んでしまう俺はぎゅっと首元にしがみついて、舌を絡ませる。
久しぶりの口付けが気持ち良くて、早々に目がとろんとしてしまっていた。
抱えられたまま寝台に倒れ込み、寝巻きを脱がせる時間も惜しいと、中途半端にはだけさせるエリオット様に胸の飾りを食べられる。
「あっ……ん、」
転がすように舐められながら、甘い香りの液体を絡ませた指先が、後蕾に触れた。
「他の誰ともしていなかったんだな?」
「っ、んんっ……」
中の感触を確かめるエリオット様が、至極嬉しそうに口角を上げた。
俺がエリオット様以外を受け入れていないことを知ったからか、目の前にいる色っぽい美丈夫は、明らかに喜んでいる。
「――イヴの希望通りに早く終わらせてやりたかったが、無理かもしれない」
「っ……んぁ」
恋人でなくとも、自分のものだと言わんばかりに体に所有印をつけられて、俺の顔が真っ赤に染まってしまう。
「は、ぁっ……べ、別に、さっさと突っ込めばいいでしょ?! んっ、あァッ!」
俺の希望通りに後ろからすると宣言したエリオット様は、さっきの俺の発言を気にしているらしい。
寝巻きを脱ぎたいのに、片足にひっかけたまま四つん這いにさせられて、背後からじゅぷりと卑猥な音が聞こえてくる。
待ってましたとばかりに指を咥えこむ後蕾は、嬉しそうに吸い付いていた。
「あ、ぁあっ……や、ぁっ、んんっ……」
すぐに気持ち良いところを刺激されて、勝手に腰が揺れる。
指が増やされ、中を広げるように動かされて、声を我慢できずに枕に顔を沈めた。
「ん……んんっ……ん、ぁ……っ」
「絶景だな」
「つっ、ふざけっ……ああぁッ!」
顔を上げて悪態をつこうとしたが、反対の手で先走りに濡れる陰茎を扱かれて、再度枕に沈む。
「はあ……イヴ、もう挿れてもいいか? 強請るように腰を振られては、たまらない」
「っ、そんなことっ! ぁっ……」
ずるりと指が抜け、中が寂しくなって、勝手にヒクヒクと動く。
俺の腰をしっかりと持った美丈夫は、後蕾に熱い亀頭を押し当てた。
「ああ……少し苦しいかもしれないが、すぐに埋めてやるからな」
「っ、うるさい! ちょっと黙っ、んあァッ!」
「くっ……」
無遠慮に侵入してくる熱い欲棒をみっちりと締め付けて、快感に体が痺れた。
「あっ、あぁっ……や、だめっ……おっき……は、ぁぁ────ッ!」
ずぷんと一気に奥まで挿入されて、枕に顔を押し付けて淫らな声を掻き消す俺は、びゅっと白濁を飛び散らせながら、久しぶりの快感にガタガタと身を震わせた。
痙攣する腰を掴み直したエリオット様は、艶やかな息を吐きながら、陰茎を引き抜く。
「ぁっ、ぁっ、あっ、んぁっ、や、激しっ、ぁ、ンッ、ぃゃっ、」
すぐに差し込まれて、パンパンとリズムよく突き上げられる。
視界を遮っているからか、より中の陰茎を感じてしまい、気持ち良すぎて意識が飛びそうになる。
息を荒げるエリオット様は、無言で腰を振りたくり、その度に俺の口から喜悦の声が漏れていた。
「やぁ、ぁっ、だめっ、ぁぁっ、イクッ、イクッ、ぁぁあッ、イクぅ……ンンンン──ッ!!」
最奥を突かれてドクドクと熱い白濁を注がれれば、搾り取るように中が蠢く。
長い射精に、腹がいっぱいになった気がした。
尻たぶを鷲掴みにされて、ゆっくりと陰茎が引き抜かれる。
中に吐き出された白濁が溢れないように力を入れていると、ごろりと仰向けにされた。
「っ……」
腰を持ち上げられて、真上から突き刺すように亀頭を押し当てられた。
すぐに復活していることに驚いたが、それよりも少し下を見れば、結合部分が丸見えになる体勢が恥ずかしすぎる。
顔を真っ赤にさせてジタバタするが、膝裏を掴まれて動きを封じられた。
「や、やだっ、」
「悪い。まだ足りない」
ギラギラとした瞳に見下ろされて、呼吸が整っていない俺の背筋がぞくりとする。
膝を寝台につきそうなほど押し付けられて、恥ずかしい体勢に強く目を瞑った。
「んんん~~ッ」
「っ、」
ずぷずぷと難なく挿ってくる陰茎を受け入れながら、いやだと首を振る。
それでも動きを止めることのないエリオット様に、しこりの部分をゴリゴリと押し潰すように刺激されて、ひっきりなしに出る喘ぐ声を止めることが出来なかった。
「はっ、あぁっ……だめぇ、ぁ、んぁあっ」
「……痛いか?」
「ちがっ、でも、だめっ、だめぇっ……ああぁぁッ! いやぁ! あぁンッ、やぁ、深いぃっ、ぁああっ、イク、イッちゃう、ぁっ、あっ、ひぁぁああ────ッッ!」
普段より更に奥の方を突かれて、目の前に火花が散る。
あまりの快楽に、俺は胸を突き出すように仰け反った。
意識が飛びそうになると、許さないとばかりに胸の飾りを舐められて、体が反応する。
息を荒げ、まだ余韻に浸っているのに、中の陰茎がゆっくりと動き始めた。
「ひ、いやっ……待って……死ぬっ、イッたばっかり……ぁあァッ! やらぁ、えりぃ……ああっ、ぁンッ、だめ、きもちぃぃ、ぁあっ、んぁあッ!」
短いスパンで絶頂して、自分がなにを言っているのかもわからなくなっている俺は、駄目だと言いながらもよがり狂っていた。
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