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第二章

44 慰め合うらしい ※

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「もっと欲しいって? イヴは欲張り屋さんだったんだな?」
「んぐっ…………」

 高級マスカットを無理矢理口移ししてくる深紅の髪の美青年は、冷や汗を掻く俺を前にしてニンマリと笑っている。

 アデルバート様を呼んでくれたことに感謝し、その後お泊まり会をしたことを話すと、急に無表情になったギルバート様に後ろ手を拘束されて、高位貴族御用達の高級宿に連れ込まれていた――。


 広く薄暗い部屋のふかふかなベッドの上で胡座をかく俺は、捕虜のように厳重に縄で手首を拘束されて、強制的に座らされている。

 その膝の上に跨るギルバート様は、俺の肩に腕を乗せてしなだれかかってくる。

「なあ、イヴ? 抜きあおうぜ?」
「…………抜き合う?」
 
 怪訝な顔の俺にうっそりと笑みを浮かべたギルバート様は、プツリと勿体ぶるように俺の制服のボタンを外していく。

「な、なにを?! やめてください」
「だーかーらー! 溜まってるから一緒に抜こうぜって言ってんのっ!」
「はい?!」

 素っ頓狂な声を上げる俺の耳をぱくりと喰むギルバート様は、俺の耳をマスカットと勘違いしているのか?

 そんなことを考えていると、ぺろりと舐められて、ゾクゾクとした刺激に身体が震えてしまう。

「んっ」
「ああ~。イヴのエロい声聞いたら、勃起したわ」
「っ…………」

 気怠げに制服を脱ぎ始めたギルバート様の、鍛え上げられた腹筋が曝け出される。

 細身だが、彫刻のように美しくて目のやり場に困ってしまう。

 そんな俺の顎を掬うギルバート様は、真上から優しく口付けてくる。

「んっ…………ふ、………ぁっ……」
「マスカット味。すごく美味しいよ、イヴ」
「や、やめ、」
「嫌だは聞きたくない。もっとして、っておねだりなら大歓迎だよ?」
 
 するするといやらしい手つきで頬を撫でられて、カッと頬が熱くなってしまう。

「なにそのエロい顔。誘ってる?」
「っ、違います!」
「ああ、わかった! イヴの嫌だは、もっとしてってことね?」
「だから、ちがっ…………ンンッ」

 話の途中で急に口付けてくるギルバート様は、無理矢理唇をこじ開けて舌を差し込んでくる。

 目を細めて俺の舌を堪能し、頬や耳を撫で回す。

 普段の無邪気な顔は鳴りを潜め、今はただ妖艶に微笑んでいる。

 くちゅりと水音を立てながら口内を嬲られて、口付けが上手すぎて力が抜けていく。

「そんなエロい顔しないでよ。犯したくなる」
「っ……してません」
「嘘つき。泣いちゃうくらい気持ち良かったんでしょ? イヴの泣き顔はゾクゾクする……」

 俺の目尻に優しく口付けて、ちゅっと音を立てて吸うギルバート様は、頬を上気させている。

 しかも硬くなった陰茎を太腿に押し付けてくるのだから、本気で興奮しているらしい。

 俺のシャツを全開にし、鎖骨をなぞったギルバート様の指先は、ゆっくりと胸の飾りまで辿り着く。

 そして、ピンッと弾いた。

「んぁッ」
「…………ああ、まじでヤバイ」
「や、やだ、やめてください、んぅっ……やっ……あっ……ンンッ」

 ひたすら胸の飾りを弾かれて、声を我慢したいのに、刺激が強くて喘いでしまう。

 俺は騎士の中でも弱いのに、快楽にも弱すぎるらしい。

 嫌だと首を横に振っていると、制止するように頬に手を添えたギルバート様は、優しく唇を啄んだ。

「声が出るのが恥ずかしい?」
「ふ…………んっ…………」
「俺はもっと聞きたいけど。イヴが嫌なら、ずっと口付けてあげる」
「んぅ…………っ、や…………ぁ…………ッ」

 舌を絡ませて胸の飾りを弾かれて、より気持ち良くなってしまう。

 胸の飾りを弄られる度に、ビクンと体が跳ねる。

 それが嬉しいとばかりに口内に差し込まれた舌が激しく蠢き、熱い吐息はギルバート様の口の中に消えていく。

「っはぁ……イヴ、もう我慢出来ない」

 素早くベルトを外し、下着の中から膨れ上がる陰茎を取り出したギルバート様は、俺のベルトも外し始める。

「っ、ギルバート様!」
「ギルでしょ?」
「っ……そ、そこじゃなくて」
「なに? 名前で呼び合う約束したよね?」
「うっ…………やめてください。ギル……」
「うん。もっと名前呼んで――」
 
 耳元で甘く囁くギルバート様の手は止まることなく、俺の昂ってしまっている陰茎を取り出した。

「ククッ、イヴも勃ってる」
「っ…………誰のせいだと、」
「俺? それなら余計に嬉しいっ」
「はあ?」

 仏頂面で怒っているのに、なぜか喜びに溢れるギルバート様は、ちゅっちゅと唇を啄んでくる。

「イヴのそういう挑発的な態度、好きなんだよねぇ~? それなのに快楽には弱いって……。モロ俺の好みッ」
「なっ、んぐっ……」

 ゆっくりと亀頭を捏ねくり回される。

 眉を顰めて我慢するが、俺の感じるところをピンポイントで刺激してくる。

 剣の腕前も素晴らしいが、こんなことにまで才能を発揮しないで欲しい。

「クククッ。イヴ、気持ち良いの? なあ、答えてよ、イヴ……」
「っ、やめて、ください……ぅッ、やめろ」
「ハァ…………たまらない。俺を興奮させようと、わざとしてる?」
「チッ、そんなわけないでしょうが。んぅッ」

 俺の制止を無視するギルバート様に軽く舌打ちをしてやったのだが、より喜ばせてしまったらしい。

 ……なぜだ。

 彼は王族であって、他国の平民に舌打ちされたら普通はうざいだろう。

 頭がおかしいんじゃないか、とじっとりとした目を向けると、舌舐めずりをするギルバート様は、二人の陰茎を纏めて握りしめる。

「んくっ…………」
 
 平凡サイズの俺のモノより、長くて雁首が誇張されるギルバート様の陰茎は、物凄く熱かった。

 裏筋を擦り合わせると驚くほど気持ち良くて、引き結んでいた口は、早々に半開きになっていく。

「ああ、イヴ……。エッロい顔……。気持ち良いな?」
「っ……く、ぁ……んっ、ンンッ」

 奥歯を噛み締めて堪える俺に、ギルバート様は宥めるようによしよしと頭を撫で始めた。

「騎士はね。戦いの後は興奮状態になるから、こうしてお互いを慰め合うんだよ。だから、恥ずかしいことじゃない。わかる? みんな当たり前のようにやってることなんだ。だから我慢しないで、素直に気持ち良いって言って?」
「つっ、」
 
 ふと、セオドアが俺を慰めてくれたことを思い出し、騎士達の真似事をしたのかと納得した。

 でないと、純粋なセオドアがあんな暴走行為をするわけがない。

 なるほどな、と考えていると、ギルバート様は急に扱く手を速めた。

「あっ、あァッ!」
「何考えてたの? イヴ、さすがに失礼じゃない? 他の男のことだったら許さないよ?」
「っ、ち、ちがい、ます……! あぁっ、もう、やめて……むり、」

 射精間近で急に手を離したギルバート様は、うっとりとしながら俺の半開きの口に吸い付く。

「ギル、気持ち良い。って言うまで、延々に繰り返すよ?」
「っ…………んぁ、」
「ほら、素直になろうぜ?」

 再度ゆっくりと扱き始めるギルバート様は、俺が射精しそうになると、すぐに手を離す。

 暫くしてまたゆったりと扱かれて、虐めっ子な王子様に翻弄され続ける。

「は、ぁ……むり、ギル。もう、いやだ、」
「うん、俺も限界。だから早く。イヴ待ちだよ?」
 
 俺の耳の中に舌を差し込み、ぴちゃぴちゃといやらしく音を立てながらお喋りするギルバート様。

 もうどうにでもなれ、と投げやりになった俺は、盛大に溜め息を漏らす。

「ギル………………。き、きもち、いい」
 
 完全に言わされているので、睨みつけながら告げてやる。

 すると、目元を赤らめたギルバート様は、急にお喋りをやめた。
 
 そして二人の陰茎を纏めて扱いて、俺の唇に吸い付いた。

「ふ、ん…………っ、ぁっ、ん、ん、んぅ、ンン────ッ!」

 ほぼ同時に射精し、腹から下半身にかけて二人の出した白濁で汚れていく。

 息を荒げながらその光景を眺めていると、熱の孕む深紅の瞳と視線が交わる。

「イヴ、もう一回したい」
「っ…………無理!」
「なんでぇ?」
「したいなら一人でやれッ!」
「え。急にイヴが冷たくなったんですけど……」
「当たり前だろう、この強姦魔ッ!」
「クククッ、最後までしていいのか?」
「はあ?!」

 別にそこまで怒ってはいないのだが、もう一度と調子に乗るギルバート様には冷たい態度で接することにした。

 そうでないと、何度も襲われそうな気しかしない。

 俺の視界の端に、もう復活しているギルバート様の陰茎が映り込んでいるのだから……。

 結局、一度で終わらせてくれたギルバート様は、手首の縄を解いてから、べったりとくっついて、ひたすら俺に許しを乞う。

 それなら最初からやらなければ良いのにと思いつつ、最後は唇を噛み締めて上目遣いをされて、不覚にも胸がキュンとしてしまった俺は、彼を許すことにした。

 というより、俺は隣国の王子様のしでかした悪戯を、許す許さないと決められる立場ではない。

「またしような!」
「無理」

 ええ、と不貞腐れる王子様は、ギラついた瞳で俺を見つめてくる。

 それを冷ややかな目で見れば、なぜか喜びだすので、もう付き合っていられなくて、ひたすら無視し続けたのだった。












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