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その後

126 ユージーン (※)

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 猫足のバスタブから湯気が出ている中、全身真っ白な泡まみれになる私の可愛い人も、同じように顔から湯気を出していた。


 「ひゃッ!」
 「……擽ったかったかな? ごめんね」


 いやらしい手付きではなかったはずだが、ノエルが自身の体を抱きしめてしゃがみこんだ。

 私に背を向けて、ぷるぷると震えている。
 あまり可愛い声を出さないでほしいと思いながら、私はノエルを膝の上に乗せた。
 椅子に座る私は衣服を身につけているのだが、それでもノエルは恥ずかしいようだ。


 耳を真っ赤にさせ、借りて来た猫のように大人しくなるノエルの全身をくまなく洗っていく私は、恋人を構い倒したくて仕方がなかった──。



 夕食後。
 大人二人を抱えて長距離を飛行したノエルが疲れているだろうと、私は一緒に湯浴みをすることを提案していた。
 以前もさりげなく誘ったことはあったが、全力で断られていた。
 だが今回は、私に嫌われたくないとばかりに、一も二もなく頷いたノエルは、本当に愛らしい子だと思う。


 嫌う要素が見当たらない。
 むしろ、ノエルにマイナスな面があるのなら誰か教えてほしいと思っている私は、ノエルに骨抜きにされている。
 もしそれで嫌なところが見つかったとしても、私はそこも含めてノエルを愛するだろう。


 小さな体にゆっくりとお湯をかけ、抱き上げる。
 驚くノエルと共に、湯船に浸かった。
 心地よかったのか、ほうっと声を上げたノエルだが、慌てて私に振り返った。


 「びしょ濡れになっちゃった……」
 「ふふっ。ノエルが言ったんだろう? 私には服を着てほしいって」
 「っ、そそそ、そうですけど! まさか、一緒に湯船に浸かるとは思わなくて……っ」


 恥じらう姿が愛らしいなと思いながら微笑むと、視線を彷徨わせたノエルは前を向く。
 無心になろうとしているのか、膝に顔を押し付けて、なにやら独り言を話している。

 疲労しているとわかっているため、押し倒すつもりはなかったのだが、耳をすませば「色気がダダ漏れだ、テオが悪いっ」と私の悪口を言っていた。


 「怒らせちゃった?」
 「っ……」
 「ごめんね。でも、ノエルと湯浴みをするのが夢だったんだ」


 ノエルの弱点である耳元で囁くと、小さな体はぶるりと震える。
 本当は、ノエルが好きなのは耳ではなく、私の声だということを知らない私だが、恋人をときめかせることには成功していた。


 ノエルを抱き上げ、向かい合うように座らせると、慌てて下腹部を隠す。
 そのことに気付かないふりをして、口付けた。


 「んっ……テ、オ……」


 すぐにとろんとした目になるノエルは、目尻が僅かに垂れ下がる。
 あどけない顔立ちなのだが、途端に大人びた艶いた表情になるのがたまらない。

 繋がりたいのだが、ノエルの体のことも考えて、今日はやめておこう。
 そう思って口付けを止めると、不服そうに口を尖らせている。
 その顔が、たまらなく可愛いことを自覚してほしいと切に願う。
 ノエルと恋人になっても、理性との戦いの日々を送る私は、強靭な精神力を得ていた。

 










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