尽くすことに疲れた結果

ぽんちゃん

文字の大きさ
上 下
120 / 137
その後

118 ※ 背後注意

しおりを挟む







 たっぷりと口付けをして、混じり合う唾液をこくりと飲み込む。

 もしかして……、媚薬でも注がれている?

 って本気で聞きたくなるくらい、僕はとろとろになっていた──。



 最初は激しい口付けをしていたけど、今はゆったりとした甘いもの……。
 それでも、口の端から唾液が流れてしまう。
 拭いたくても、僕の手は大好きな人と指を絡めて、シーツに縫い付けられていた。

 いつまでも僕の口を塞ぐ薄い唇からは、時折、色っぽい息が漏れる。
 
 その息遣いにドキドキしている僕は、気付いていなかった。
 この時のユージーン様は、荒ぶる感情のまま、僕をめちゃくちゃに抱きたい気持ちを、必死に堪えていることを……。


 最後にリップ音をたてて僕に口付けたユージーン様が、指先で優しく僕の口の端を拭ってくれる。

 
 「愛してるよ、ノエル」
 「はぁっ……ぼく、も……」


 うっとりと見上げると、ユージーン様が微笑む。
 でも綺麗なお顔は、いつもより少しだけ苦しげに微笑んでいるように見えた。

 その表情が色っぽくて、僕の頬は赤らむ。
 恥ずかしくなって視線を彷徨わせると、そっと頬を撫でられた。
 すりっと頬を寄せる僕は、もう一度ユージーン様を見上げる。
 よく見れば、口角を上げたユージーン様も、目尻が赤くなっていた。


 「っ、ノエル」


 愛おしそうに僕の名を呼んだユージーン様に、ぎゅうっと抱きしめられる。
 幸せを噛み締める僕も抱きしめ返そうとしたのだけど、顔中にキスの雨が降ってきた。

 擽ったいけど心地よい……。
 心から愛されていることが伝わってくる。

 喜ぶ僕は、いつのまにかパジャマを脱がされて、一糸纏わぬ姿になっていた。
 僕のあだ名は姫だけど、れっきとした男だ。
 ちゃんとついている。……小ぶりだけど。

 それが、熱を持って反応している。
 もうバレバレだと思うけど、僕はさりげなく腕で体を隠す。
 そんな往生際が悪い僕から、顔を背けたユージーン様。
 呆れられたかなって思ったけど「っ、クソ可愛い……」と、聞き慣れない言葉が聞こえて来た。

 ユージーン様が余裕がなくなる時は、ちょっとだけ口調が乱れる。
 嫌われたわけじゃないとわかって、僕はほっとしていた。


 「僕だけ、裸だから、恥ずかしくて……」
 「……ああ。ごめんね、ノエル」


 僕の顔を見て、いつも通りに微笑んだユージーン様だけど、すっと目を細くしていた。
 なんだかわからないけど、やけに色っぽい視線を送られてしまった気がする……。

 はらりとガウンを脱いだユージーン様の引き締まった体に、僕の目が釘付けになる。
 彫刻のようだと、詠嘆していた僕だけど……。
 美しい顔には不釣り合いな、凶器が見えた気がした僕は、無意識に息を止めていた。

 両手で顔を隠したけど、大好きな人の全裸が目に焼き付いてしまっていた。
 体格差があるのはわかっていたけど、僕のものが粗末に思えて、急に恥ずかしくなる。
 ……隠したいのに、手が足りない。

 そんな僕にくすりと笑ったユージーン様は、僕の顔を囲うように手を置く。
 名前を呼ばれて、指の隙間からこっそりと覗くと、ユージーン様はにたりと笑っていた。


 「ノエルが脱いでって言ったんだよね?」
 「っ……」
 「見ないの?」


 手の甲に口付けを送られる僕は、なんであんな破廉恥なことを言ってしまったんだと、後悔することになった。
 優しいユージーン様が好きなんだけど、僕は意地悪な顔の方がもっと好きだったりするんだ。
 
 ドキドキが止まらない僕は、気付けば全身に口付けを送られていて、ぴくぴくと飛び跳ねていた。
 足の先にまで口付けを送る僕の王子様は、壊れ物に触れるような優しい手付きだった。

 全身が蕩けてしまいそうになっていた僕は、最後に胸の飾りにざらりとした感触がして、声が我慢出来なかった。


 「んっ」
 「……可愛い。気持ちよかった?」
 「っ、んんぅッ」


 優しい声色で問いかけたユージーン様に、手を取られる。
 また指を絡めてシーツに縫い付けられてしまう僕は、涙目でユージーン様を見下ろした。

 舌で僕の小さな胸の飾りを愛撫しながら、壮絶な色気を放っている。
 僕の反応を窺っているんだと思うけど、僕の目には、見せつけるように舐めているようにしか見えない……。

 ぎゅっと目を瞑ると、強く吸われる。
 まるで、自分から目を逸らすなと言われているみたいに……。

 胸の飾りで感じることなんてなかったのに、たっぷりと可愛がられてしまった僕は、我慢できずに小さなものから蜜が溢れていた。










 















しおりを挟む
感想 190

あなたにおすすめの小説

【完結】最初で最後の恋をしましょう

関鷹親
BL
家族に搾取され続けたフェリチアーノはある日、搾取される事に疲れはて、ついに家族を捨てる決意をする。 そんな中訪れた夜会で、第四王子であるテオドールに出会い意気投合。 恋愛を知らない二人は、利害の一致から期間限定で恋人同士のふりをすることに。 交流をしていく中で、二人は本当の恋に落ちていく。 《ワンコ系王子×幸薄美人》

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...