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その後
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しおりを挟む──朝の光で目を覚ます。
僕に腕枕をしてくれている人の綺麗な寝顔を見つめて、うっとりとする僕は、ようやく大好きな人と結ばれた。
とっても甘い時間だった。
愛してるよって言いながら、僕に触れる手はすごく優しくて、全身に……。
ハッと体を見下ろすと、いつのまにか体は清められていたのだけど……。
僕の全身に赤い花が散っていた。
恥ずかしすぎて悲鳴をあげそうになったけど、既のところで堪えた僕は、ユージーン様にぴたりとくっついた。
「ううぅ~。もう顔が見れない……っ。痴態を晒してしまった……。なんかいろいろと、言ってしまった気がするっ。わ、忘れたけど……。いや、本当は覚えているんだけどっ!! ……昨日のことは忘れてくれていますようにっ」
もぞもぞしていた僕の頭上から、小さく笑った声が聞こえて、僕は体を縮こまらせる。
「ふふっ。ごめんね、ノエル……。ノエルのお願いはなんでも叶えるつもりだったんだけど。そのお願いだけは、無理。一生忘れられそうにないよ」
「ッ!!」
絶句する僕の顎を掬って、おはようのキスをしたユージーン様は、朝から色気が爆発していた。
ただ気怠げに髪を掻き上げただけなのに、僕の目は釘付けになっている。
……セクシーレベルが、限界突破してしまったみたいだ。
「もう一度言ってほしいな?」
「っ……な、なにをですか?」
「テオ、好き、大好き、愛してるって。何度も言ってくれただろう?」
「っ、ゆ、夢のお話……ですか?」
「ふふっ。本当に忘れちゃったの? 他にも……」
「~~ッ!」
意地悪な顔をしているユージーン様の口を、すぐさま両手で塞ぐ。
早く言えと目で訴えられる僕は、真っ赤な顔でユージーン様を睨む。
手のひらをぺろりと舐められて、驚いて手が離れると、ユージーン様に抱き寄せられていた。
コツンと額がぶつかって、ユージーン様は幸せそうに目元を和らげる。
「ノエル、愛してるよ」
「っ……僕も。……好き、大好きっ。……愛してる、テオ……」
微笑み合う僕たちは、唇を重ねる。
幸せを感じている僕に触れている手が、ちょっぴりいやらしい動きをしている気がするけどっ。
今日は久々の連休だから、このまま……。
──ドンドンドンドンッ。
玄関の扉を叩く音がして、僕は動きを止める。
でもユージーン様は、目をぱちぱちとさせている僕の唇を啄み続けていた。
少しして、またドンドンと音が鳴り続ける。
「っ……誰か来たんじゃっ」
「今日は休業日なんだから、放っておけばいい」
「んんっ、だ、だめですよ。おやすみだって、知らなかったのかも……」
せっかく遠いところまで来てくれたのに、申し訳ない。
そう僕の顔に出ていたのか、ふうっと息を吐いたユージーン様は、「仕方ないね」と笑った。
渋々起き上がったユージーン様が、かっこよくガウンを羽織る。
「ノエルはここで待ってて。私が話してくるよ」
さらりと僕の額に口付けを落としたユージーン様に、僕は笑顔で頷く。
また、ドンドンと扉を叩く音がする。
チッと舌打ちが聞こえてきた気がしたんだけど、きっと僕の気のせいだと思う。
もぞもぞと動く僕は、念のためにパジャマを着ておく。
カラン、カランとベルが鳴った後、なにやら大きな声が聞こえて来た。
ユージーン様になにかあったのかもしれないと、慌てて飛び起きた僕は、寝室を飛び出した。
「テオッ!! 会いたかったわッ!」
「こんなに大きくなって……」
涙を流す中年の男女が、棒立ちになっているユージーン様に抱きついていた。
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