尽くすことに疲れた結果

ぽんちゃん

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17 エドワード

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 恋人と幸せな未来を語り合った翌日。
 ヴァイオレット様の豪邸に招かれた俺は、開いた口が塞がらなかった。


 「ここは、城か……?」
 

 彼女の親しい友人として紹介され、使用人たちから恭しい態度を取られる。
 まるでこの城の主人のような対応に、戸惑いを隠せない。

 俺を応援すると言ってくれた彼女は、俺が快適に過ごせるようにと部屋を用意してくださっていた。
 いつでも遊びに来ていいと言ってもらったのだが、正直なところ寛げない。

 俺とノエルが王都で借りている家は、築年数が古くて、冬には絶え間なく隙間風が流れ込む。
 ノエルが掃除をしてくれているから清潔に保たれてはいるが、居心地の良い二人の愛の巣は、ヴァイオレット様からしてみたら、犬小屋だと思われそうだ……。

 目にするもの全てに衝撃を受けていると、俺よりも美しい顔立ちの使用人たちが部屋を訪れる。
 見目麗しい男性の使用人たちがずらりと整列し、今日から俺の世話をすると説明を受けた。


 「エドワード様、お召し物です」
 「………は、はぁ。ありがとうございます」


 これからパーティーにでも行くのかと思ってしまうような高価な衣装は、部屋着らしい。
 しかも、当たり前のように服を脱がせてくる。
 淡々と仕事をしている彼らにされるがままの俺は、着せ替え人形と化していた。
 田舎者の俺が知らない世界だ……。

 一応お礼を告げたのだが、感謝の言葉は不要だと言われ、逆に叱咤されるからやめて欲しいとまで言われてしまった。
 なにをするにも近くに人の気配がして、俺のためだけに働いてくれている。
 驚く程の好待遇は不快ではないが、気を遣う。
 


 ノエルの誕生日のやり直しをした日を思い出す俺は、やはり小さな家でも、恋人と二人でくっついて過ごす方が幸せだと思っていた。







 その後は、ヴァイオレット様が開いたお茶会に参加し、顔を覚えてもらう。
 テーブルには宝石のような菓子が並べられ、華やかな女性陣に囲まれる。
 慣れないことに緊張してしまうが、俺はこのチャンスを逃すような馬鹿ではない。
 話し上手な方ばかりだったおかげもあって、会話は弾んだように思う。


 「私たちも貴方を応援するわ」
 「っ、あ、ありがとうございますっ!!」
 「ふふふっ。可愛らしいわね?」

 
 思わず声を張り上げてしまい、参加している女性陣に微笑ましい顔をされてしまった。
 咳払いをして誤魔化していると、ヴァイオレット様が席を立つ。
 なにかあったのかと俺も席を立ったのだが、楽しみなさいと耳打ちをされた。
 お手洗いだったことを察して、静かに腰を下ろすと、顔を見合わせた女性陣がコロコロと笑い始めた。
 馬鹿にした様子ではなく、可愛らしいと子供扱いされている。
 

 「誰かさんとは大違いだわ?」
 「あの恩知らずは、今頃なにをしているのかしらね?」
 「……恩知らず、ですか?」
 「ええ。貴方は知らなくてもいいのよ? ヴァイオレット様についていてあげてね。ああ見えて、あのお方は、寂しがりやなのよ」
 

 くれぐれもよろしく頼むと言われて、俺の方が世話になっているのだがと思いつつ、笑顔で頷いた。











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