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しおりを挟む賢いわけでもないし、運動神経が良いわけでもない、全てが平凡な僕だけど、実はほんの少し魔法を使える。
実家の宿屋でシーツの洗濯する時には水魔法を。
洗濯物を乾かす時には、火魔法と風魔法。
生活魔法は少ししか使えないのだけど、応用することが得意だった。
その力のおかげで、なんとか依頼をこなしてお金を稼いでいる。
普段の生活を、少し快適にするための魔法だったのに、今では魔獣を殺すために使用している。
蟻一匹殺せない僕だったのに……。
人生って本当になにがあるかわからないと思う。
送ってくれた御者の方にお礼を告げて、古く小さな家に帰宅する。
慌てて帰ってきたけど、部屋は真っ暗で寒かった。
幸せな夢から醒めた気分になったけど、両手いっぱいのプレゼントを手にしているからか、涙は出なかった。
さっそく夕飯を作って待っていたけど、エドワードは一向に帰ってくる気配はない。
明日は宿屋の仕事が朝早いから、僕は一人寂しく寝室に向かう。
ようやく眠れた頃に、凄い勢いで寝室の扉が開いた。
「ノエルっ!! やったぞ!! 凄い人を捕まえたんだっ!!」
寝ている僕に飛び乗ったエドワードに、頬を両手で掴まれ、ぶちゅーっとキスをされた。
……ちょっぴりお酒臭い。
酔っ払っているのか、パーティーでのことを話し続けるエドワード。
眠い目を擦る僕は、うんうんと話を聞き続ける。
いつものことだけど……。
まずは、誕生日に置き去りにしてごめんねじゃないのかなぁ?
確かに僕が行ってもいいって言ったけど、本当は一緒に過ごしたかったんだよ?
魔法列車に乗らなかったのも、エドワードが一緒じゃないと意味がないからなのに……。
エドワードが大好きだから、夢を叶えるために頑張って欲しいと思っていたはずなのに、僕の心に小さな不満が募っていく。
昔の僕なら、きっとエドワードと一緒に、ベッドの上を飛び跳ねて喜んでいたと思う。
随分と性格が悪くなってしまったと反省していると、部屋は静かになっていた。
僕に抱きついたまま、幸せそうな顔で眠るエドワードからは、嗅ぎ慣れない香水の匂いがした。
無言でエドワードの上着を脱がせて、毛布をかけてあげた僕は、恋人に背を向けて目を閉じた。
エドワードが帰って来た時には、僕の誕生日はとっくに終わっていた。
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