100回目の口付けを

ぽんちゃん

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 ガクガクと体が震えて立っていられなくなる僕を支えてくれるユーリは、「上手にイけたね」と囁いて顔中に優しいキスを送る。

 でも、僕の陰茎は先っぽから涎を垂らしたまま、白濁は出ていなかった。

 それをぼんやりとしながら確認していると、ユーリが二人の陰茎を纏めて握って扱き始める。

 「あっ、あぁんっ、ゆーりぃ、だめぇっ、きもちいいよぉ……あっ、あっ、あついっ、ゆーりの、おっきいの、あついよぉ、はぁんッ!」
 「つっ…………クソ、もたない」

 ビュクっと大量の白濁をお腹にかけられた僕は、興奮して少し遅れて射精する。

 二人の荒い息が浴室に響いて、僕はくたりとユーリに凭れ掛かる。

 「はぁ…………ヴィーがエロ可愛すぎる。また俺の精子かけられて、気持ち良くなっちゃった?」
 「っ、」
 「ふっ。隠せるとでも思った? 俺が何年ヴィーを見てきたと思ってるの? 俺の精子をぶっかけられて、トロ顔になるヴィーは最高に可愛いよ」
 「うぅっ……」

 僕を辱めて喜びを感じるユーリは、本当に意地悪だと思う。

 でも、僕はそんな意地悪なユーリにドキドキして興奮してしまっているわけで。

 結局、ウィンウィンの関係だってこと。

 よくわからない分析をした僕は、再度ユーリに丁寧に身体を洗ってもらい、お揃いのローブを身につけて、寝台まで運ばれるのだった。




 そして寝台のヘッドボードに背中を預けるユーリの足の間にちょこんとおさまる僕は、珍しく冒険の本を読んでもらっていた。

 ユーリの逞しい上半身を背凭れにする僕は、低く穏やかな声を聞きながら、うっとりとしている。

 朗読しながら僕の髪を優しく愛でてくれるユーリは、昔と変わらずやっぱり優しい王子様だ。

 「そして王子を守り抜いた騎士は、彼の生涯を終えるその時まで、忠誠を誓った王子と共に、王国を明るい未来へと導くのだった」
 「めでたしめでたし」
 「ククッ、可愛い」

 僕の顔を覗き込んでくすりと笑ったユーリは、いつのまにか持っていた、僕とお揃いの黄金色の指輪に口付ける。

 シャラリと音がして振り返ると、ユーリは指輪を白銀色の細い鎖に通して首にかけていた。

 「ネックレスにつけてたの?」
 「ああ、訓練中も肌身離さずつけていたいし、傷つけたくないからね」
 「……すごく、似合ってる」

 指輪を褒めつつ、ローブから覗く綺麗な鎖骨から盛り上がった美しい大胸筋を見つめる僕は、憧憬の眼差しを向ける。

 「今回の物語の王子はヴィーで、騎士は俺」
 「え、僕が王子様?」
 「実際はそうだろ?」
 「確かに、そういえばそうだったね? そんな風に思ったこと一度もなかった」

 忘れてた、とへにゃりと笑うと、ユーリはすごく愛おしそうに目を細めて、薄い唇が弧を描く。

 「ヴィーは大人になっても、相変わらずだな?」
 「ふふっ。だって、僕の王子様はいつだってユーリだったから」

 朗読会をしてもらっていた頃を思い出してはにかんでいると、ユーリが僕の両頬を優しく包み込んで、唇を啄む。

 「俺の手を見て、努力家だって言ってくれた時のこと、覚えてる?」
 「ぅ、うん。今でもそう思ってるよ……」
 「パウンドケーキを用意してくれて、俺を甘やかしてあげる、って言ってくれた時のことも?」
 「お、覚えてる。年上のユーリに、そんなこと言うなんて、恥ずかしいね……僕」
 「ふふっ。俺は、そんな可愛いこと言ってくれたヴィーを好きになったんだよ?」

 優しく唇を啄みながら話すユーリは、すごく色っぽくて、僕はされるがままにうっとりとした吐息を吐き出す。

 「本当は、俺からかっこよく告白したかったんだけど、陛下との約束で、言えなかったんだ……」
 「えっ……」
 「ヴィーは気遣いが出来る子だから、俺が告白したら、嫌われたくなくてOKするかもしれないからって……。だから、ヴィーから告白してくれたときに、正式に婚約者として認めるって言われてた」

 衝撃的すぎる話に、思わずユーリから離れた僕は、呆然としたままユーリの話に耳を傾ける。

 「だからあんなくだらない嘘ついた。嘘、というより、その時読んでた恋愛小説と同じことをしたんだよ。ヴィーに、他の人のところに行かないで、って言って欲しかったから……」
 「っ……そう、だったの……僕、あの時、すごくショックで……。思ってたことと正反対のこと言っちゃった……」
 「いいよ、今幸せだから。それに、嘘ついた俺が全面的に悪い」

 そんな理由があったんだ、となんだか胸が苦しくなる僕は、どんどん悲しい気持ちになる。

 泣きそうになる僕の目尻に優しくキスをしたユーリは、幸せそうに笑っていた。

 「パウンドケーキ、美味しかったよ。初めて用意してくれたとき、実はこっそり厨房を覗いてたんだ。ピンクのエプロンが可愛かった」
 「っ、えぇ?!」
 「もちろん、作ってくれたパウンドケーキは、俺が一週間かけて大切に味わったよ? ナポレオンには一口もあげてないしね」

 ふっ、と笑ったユーリに、だからあのとき食べてもいないのに「美味しかった」って言ってたんだ、と誤解していることに気づいた。

 「俺の好きなタイプは、気遣いが出来て、思いやりのある子。容姿は、サラサラの長めの髪で大きなの瞳の可愛らしい子。もちもちな肌で、笑うとえくぼが見えて、全てが俺と真逆の子」
 「っ、」
 「ヴィーはね、俺の理想の可愛い可愛いお姫様」

 ゆったりと優しい口調で言葉を紡ぐユーリに、僕はドキドキしすぎて、心臓が破裂しそうだった。
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