100回目の口付けを

ぽんちゃん

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その後

40 僕、変態なんです

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 絨毯の上でへにゃりと座っている僕は、顔面が大好きな恋人の白濁まみれになって、幸福で蕩けた顔をしていた。

 「つっ、ヴィー!」
 
 ごめんと必死に謝るユーリは、すぐに濡らしたタオルを持ってきて、丁寧に顔を拭いてくれた。

 最初、頬を赤らめて、拭くことを少し迷っていた気もするけど、気のせいだろうか?

 ぽーっとしている僕をユーリが抱き起こそうとした際に、下半身がぐっちょりしていることに気付いた僕は、慌ててユーリの腕から逃れる。

 このまま抱き起こされたら、顔面に白濁をかけられて射精した痴態がバレてしまう。

 顔面蒼白になっていると、ユーリは僕より傷ついた顔をしていた。

 「調子に乗ってごめん、我慢すべきだったのに」

 僕から離れて寝台の端に腰掛けたユーリは、ガックリと項垂れて、沙汰を待つ罪人のように見えた。

 のろのろと立ち上がる僕は、下半身の不快感を我慢して、不自然な歩き方のままユーリに近づいた。

 両手で顔を覆って、後悔するように深いため息を吐くユーリをこのまま勘違いさせたくない。

 でも、真実を暴露するにはかなり勇気がいる。

 項垂れるユーリの前で、どうしたら良いのか分からなくなった僕は、情けなくなってぽろぽろと涙が溢れてくる。

 「うぅっ……」
 「っ、ヴィー?! ああ、ごめん、本当にごめんな……」

 僕を抱きしめようとしたユーリは、ハッとしたように慌てて手を引っ込める。
 
 僕を気遣ってくれる優しい恋人を、これ以上悲しませなくない。

 そう思って、小さな声で呟いた。

 「僕……変態、なの……」

 そわそわしていたユーリがピタリと動きを止めて、泣いている僕の顔をガン見する。

 「……ヴィー? どういう、こと? 俺にもわかるように話して?」
 「嫌いに、ならない?」
 「っ、当たり前だよ! 俺は変態が大好きだ!」
 「ぷっ…………ユーリって本当はお馬鹿なの?」

 泣いていた僕は、真顔で堂々と変態が好きだと宣うユーリが面白くて、つい吹き出してしまった。

 そんな僕を見て安心したように笑ったユーリは、僕の体を優しく引き寄せる。

 慌てて腰を引いた僕に「怖い?」と優しく聞かれて、ぷるぷると首を横に振った。

 「ち、違うの……」
 「ん?」
 「僕、ユーリの舐めて……顔に、かけてもらったら……興奮しちゃって……」
 「………………っ」

 そこまで話して、僕が何を言いたいのか気づいたのか、僕の顔を見ていたユーリの視線がゆっくりと下に移動する。

 そしてそのままゆっくりと僕の顔を見上げたユーリは、完熟トマトのように顔を真っ赤にしていた。

 もちろん、僕も同じ顔をしていると思う。

 そして、暫く無言で見つめ合っていた。

 間近で黄金色の瞳が情欲に濡れていく様に、僕はごくりと喉を鳴らす。

 「ヴィーが愛おしすぎて、今すぐ抱きたい」

 瞳をギラつかせるユーリに、嫌われなかったとほっとしたけど、さすがに心の準備ができていない僕は、きょろきょろと視線を彷徨わせる。

 「ユーリ? 僕、やり方わかんないし……、心の、準備が……」
 「うん。わかった。ヴィーの心の準備が出来たら、すぐに抱くね?」
 「っ…………は、ぃ」

 消え入りそうな声で返事をすると、ユーリが蕩けるような表情で僕を抱きしめる。

 「俺の天使がエロすぎる。最高だ……」

 ほうっと感嘆の声をあげるユーリに、やっぱり僕の王子様は少しおかしいところがあるな、と思いつつ、こんな変態な僕を受け入れてくれるユーリを、より大好きになるのだった。


 
 それから身体を洗おう、とニコニコ笑顔のユーリに問答無用でお姫様抱っこされた僕は、浴室に連れて行かれて、素っ裸にされる。

 僕だけ全裸になっていることが恥ずかしくて、両手でひょろい体を隠していると、よりユーリが興奮し始めて、息を荒げていた。

 「ひ、一人で、出来るよ……」
 「だ~め! ヴィーは俺の恋人なんだから、甘やかしたい!」

 ついさっきまで僕の反応をいちいち気にしてくれていたユーリは、僕が変態だと分かった途端に、少しだけ強引になっていた。

 「や、やんっ、」
 「っはぁ……ヴィーの声が可愛すぎて、出したのにまた勃起した」
 「っ、ユーリっ!」
 
 恥ずかしいことを平然と宣うユーリにたじたじの僕は、胸の飾りを念入りに洗われている。

 「んっ……ぁっ、もぅ、綺麗だよぉ……ンッ」

 背後から抱きしめられて、ユーリの唇で口に蓋をされた僕は、口内を舌で蹂躙され、胸の飾りをクニクニと弄ばれる。

 そして同時に陰茎も刺激を与えられて、二度目の吐精を迎えていた。

 射精後も深いキスをし続けてユーリに甘えていると、滾る陰茎を取り出して少し扱いたユーリは、僕のお尻に向かって射精した。

 ゆるゆると尻たぶに亀頭を擦り付けられた僕は、恥ずかしいけど気持ち良くて、うっとりした顔をしてしまう。

 「ぁんっ、せっかく洗ったのに。また洗い直し」
 「…………ヴィー、めちゃくちゃ可愛い顔してるぞ? 俺にかけられて気持ち良くなっちゃった?」
 「っ……ち、違うよ! 見ないでっ!」
 「やだ。ヴィーが嫌がってないって分かったから、もう遠慮するのやめた。これからは、もっとグズグズになるまで可愛がってあげるね?」
 「うぅぅぅ~~っ」

 ちゅっちゅっと顔中にキスの雨を降らせるユーリは、今までで一番キラッキラな笑顔を見せてくれたのだった。

 ……僕、変態で良かったのかも。

 まさか、自分が変態であることに感謝する日が来るなんて。

 そんなことを思いながら、満面の笑みのユーリからのキスを受け止め続けるのだった。
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