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24 因果応報 ※クララ
しおりを挟む※残酷な描写有り。R-18
濁してはいますが、過激なシーンがありますので、苦手な方はブラウザバックをお願いします。
最終話で軽く触れますので、飛ばしても大丈夫です。
───────────────────────
「誰が調教する?」
「そりゃ、最初は大将でしょう」
「でもあのお方はやげつねぇからな。俺は綺麗な身体のまま楽しむのが好きなんだが」
「そんなこと言ってすぐに飽きる癖によぉ」
ゲラゲラと下品な笑い声に目を覚ます。
汚れた天井が見えて、頭がぼんやりとしている。
「お姫様のお目覚めだな」
馬鹿にしたような声に顔を向けると、黄色い歯を出して笑う汚らしい中年男が私を見下ろしていた。
寝台に寝ていたようで身体を起こそうとすると、ガシャリと音がする。
手足を拘束されて、身動きが取れなくて、さっと顔色が悪くなった。
「なに、アンタたち! 強盗なの?!」
「クククッ。ちげぇよ? アンタの新しい旦那様の元部下。アンタの世話係」
「はぁ?! 私にこんなことして、許されるとでも思ってるの?!」
「バーカ。旦那様の奴隷なんだから、何をしたって許されるんだよ!」
「…………話が通じないわ」
言い合っているうちに、でっぷりとしたハゲ爺さんが部屋にやってきた。
「おう! お前が俺の四番目の嫁だな」
「大将~、八番目っすよ」
「カハハハハ! 四人は死んだからノーカウントだろうが!」
「ちげぇねぇ!」
何が面白いのか全くわからない話で盛り上がる下品な爺達に、白けた目を向ける。
急に服を脱ぎ出した爺が、寝ている私の上に乗り上げる。
重すぎて呼吸が出来ない。
「んじゃ、初夜といきますか」
「あいよ!」
「は、はぁ?! お、おもいっ……クソデブッ」
罵倒した瞬間、脳が揺れる。
気付いたときには、私は顔を殴られていたらしい。
口内に血の味がして、唾を吐く。
「大将。いきなり歯折ってどうするんすか」
「歯がない方が、お前達も気持ち良いだろうが」
「確かにぃ~。さすが大将っ!」
今の会話で全てを悟ってしまった。
私はヤバイ奴の後妻になったみたい。
クラウスお義兄様の名前を出しても、ジェフリーの名前を出しても全く聞いてもらえなかった。
多分、伯爵以上の相手。
この瞬間から、地獄の日々が始まった。
調教という名の性的暴行、拷問だ。
しかも彼らは、悪事がバレて解雇された元軍人。
普通にえげつないし、頭がいかれている。
でも、私はまだ諦めていない。
だって、愛するクラウスお義兄様が助けてくれるはずだもの。
王子様がお姫様を助け出すシーンを思い浮かべ、なんとか耐え凌ぐ。
でも王子様はなかなか助けに来てくれなかった。
この際、ジェフリーでも良い。
誰か助けてと心の中で叫んでいた。
三ヶ月が過ぎ、身体も傷だらけになり、以前の私とは誰もわからないような醜い顔になっていた。
「クララっ!!」
この期間に呼ばれなかった名前が聞こえて、ハッと顔を向ける。
王子様ではなく、中年の女性。
私のお母さん──グラシエラだった。
「っ、ママ……、助けに来て、くれたのね……」
白濁まみれの汚い体を抱きしめてくれた母は、謝り続けていた。
反抗出来ないようにする為か、死なない程度の食事のせいで、痩せ細った腕を必死に持ち上げた。
「ママ、はやく、かえりたいよ」
「っ、ごめんなさい……クララ、」
「ハイハイ。感動の再会はもうお終いね~」
「アンタのママは、娼婦になってお金を稼がなきゃいけないんだなぁ?」
「頑張れよ、おばさん!」
涙ぐむママの桃色の髪を鷲掴みにする中年男は、ニタニタしながら笑っていた。
「たすけて、クラウス、おにいさま……」
「あん? あー、クラウスってアンタを売ったお兄ちゃんのことか?」
「………………はっ?」
首を傾げる中年男からママに視線を向ければ、まるで肯定しているような顔で泣いていた。
「安心しろ! お前のお兄ちゃんは、金持ちのお嬢様と婚約して、幸せに過ごしてるぞ」
「な、なにを、馬鹿なことを……」
「今は当主になったみたいだぜ? 自分たちが贅沢をする為に、領民を苦しめていた無能な父親を追い出したらしい。父親の愛人と子供は害虫だってよ、怖っ。ま、領民は喜んだだろうな?」
世話係が言うには、クラウスお義兄様は確かに病気だったけれど、療養していたわけではなかった。
パパが私のママと過ごしたいからと、本妻を蔑ろにしていた。
私のママを認められないクラウスお義兄様を、療養と言って邸から追い出していたのだ。
どこかで聞いたことのある話。
ああ、そっか。
私が似たようなことをしていたんだ、アナスタシアに。
「わかってると思うけど、お前は出戻りできねぇよ? 逃げたとしても、お兄ちゃんに連れ戻されるだろうけどなっ!」
「まぁ、俺達が逃すわけないけど。今後はたっぷりと稼いでもらわなきゃいけねぇからな?」
「そうそう。バード家に払った分は稼いでもらうぜ? それまでは死ねないからな」
悪魔のような元軍人達が、ゲラゲラと笑う声が遠く聞こえる。
それから夜な夜な開かれる、卑猥なパーティーで見世物にされた。
いたぶることで興奮する変態なおっさん達からの需要がなくなるまで、およそ三年程。
気付いたときには会話も出来なくなり、ただ言われたままに動き、従っていた。
喉が潰れて叫ぶことが出来なくなると、興奮できないと捨てられた。
いつもなら、私が捨てる方だったのに。
私に残ったのは莫大な借金だけ。
それも全部、私が湯水のように使ったお金なんだから、誰も助けてはくれない。
一人で生きていくことなんて無理だから、スリをして、適当に罪を犯して犯罪者になった。
そうすれば、汚くても寝床もご飯もあるもの。
ジメジメとした檻の中で横たわっていると、妖艶な笑い声が聞こえた。
「自業自得ね」
「…………」
意地悪そうな吊り上がる目元の美女が、ボロ切れを纏う私を見下ろして上品に笑っている。
真っ赤なドレスがよく似合う見知らぬ銀髪の美女を、虚な目で見つめる。
「臭くてたまらない。こんなところ、アンジーがいるような場所じゃないよ」
「そうね、行きましょう。私の可愛い人」
肩甲骨まで伸びる白銀の髪が美しい男性が、美女と濃厚な口付けをする。
目を見開く私の顔を見て、にっこりと笑った。
「アンジーの知り合い?」
「私じゃないわ」
「そう。胎教にも悪いから、早く休もう」
美女の腹部を撫でて、耳を当てたクラウスお義兄様は「あ、今蹴った!」なんてはしゃいでいる。
絶望する私に見向きもしない二人の背を見つめ、久しぶりに涙が溢れた。
あの光景……。
私がアナスタシアにしたことと同じだわ。
こんなに辛い想いをしていたのね。
なんでも持っているアナスタシアに嫉妬して、目障りだって思ってた。
彼女の傷付く顔を見て、歓喜していたの。
もっと、もっとって……。
自分が気持ち良い気分になる為に、彼女の心に傷を負わせていたことに気付いた。
私、あの子に嫌な事なんて、何一つされたことなかったのに……。
ごめんなさい……。
ごめんなさい、アナスタシア……。
暗い牢獄の中で、ひたすらアナスタシアに謝罪をし続けた。
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