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しおりを挟むぼとぼと、と茶色の瞳から涙が溢れ落ち、丁寧な字で書かれた手紙に染みを作っていく――。
「っ……兄様っ、僕……っ、ぼくはっ……うわああああぁぁーーっ!!!!」
何十枚と、想いのこもった手紙を抱きしめるミゲルが泣きじゃくる。
――ミゲルが大好きだ、会いたい。
――でも、やるべきことがある。
――次に会える日まで、互いに頑張ろう。
――遠く離れても、ミゲルを想っている。
ミゲルを応援する手紙は、過去に学園へ通うために寮に入っていたミゲルが、軟禁状態のフラヴィオに送っていたものと同じような内容だった――。
「うぅっ……。兄様っ、ごめんなさぃぃっっ」
誰にも気遣われることなく、部屋にこもっているミゲルは、深い孤独感に襲われる。
食事を用意してくれる使用人はいるものの、ミゲルが無視し続けたことで、誰とも口をきいていなかった。
自由に外に出ることはできるが、過去のフラヴィオと似たような状況だった――。
フラヴィオが、異母弟を大切に想う純粋な気持ちが、今はとても辛く感じてしまう。
ミゲルにとっては初めての経験だった。
フラヴィオはミゲルに、辛い気持ちを味わわせようとしたわけではない。
軟禁生活を送っていた時のフラヴィオは、ミゲルからの手紙が心の支えだった。
だからこそ、自分も異母弟の力になれるならと、ミゲルにしてもらったように、何十枚と想いを書き綴っていたのだ。
しかし、フラヴィオの善意は、結果的にミゲルを己の過ちと向き合わせることとなっていた――。
ミゲルの食事に毒は入っていないし、栄養満点で空腹になることもない。
新婚旅行の際に購入した豪華な家具や小物に囲まれているミゲルだが、フラヴィオの場合は、メイドに宝石や形見のブローチまでも盗まれている。
(……どれほど辛い思いをしてきたのだろうっ)
想像しただけで、ミゲルは涙が止まらなくなる。
それでもミゲルと会う時のフラヴィオは、いつも笑顔だった――。
フラヴィオはきっと、兄としてミゲルの前で弱音を吐いてはいけないと思っていたにちがいない。
「兄様は……ずっと、ずっと、こんなに寂しい気持ちを味わっていたんだ……。いや、僕なんかとは比べ物にならないっ。僕は、なんてことをしてしまったんだろう……っ」
外出できないフラヴィオに、ミゲルは新品の服をプレゼントしていた。
(どこへも出かけられないというのに――)
悪気はなかったミゲルだが、フラヴィオはどう感じていたのだろうか。
フラヴィオを喜ばせようと行動していたつもりが、実際は、自分の欲望に忠実なまでに動いていただけだったことに、ミゲルはようやく気が付いていた――。
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