婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚姻後

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 憧れの人に無表情で見下ろされたジェイコブは、これでもかと目を見開く。
 そして、ほんのりと頬を染めていた。
 その態度に、リュセ母様は眉を顰めた。

 「っ、リュ、リュセ様……っ!!」

 俺の忠告を無視して、感極まったように名を呼ぶジェイコブは、母様の姿を目に焼き付けているかのようにじっくりと見上げている。

 「答えてください」
 「っ、ち、違うんです! バケモノだなんて、言ってませんっ! バ、バレるぞ、と。そう、美しい顔が見えてしまうぞと、そう言ったのですっ!」

 呆れたように溜息を吐く母様を見つめるジェイコブは、気持ち悪いくらいにうっとりとしている。

 誰にも言い負かされたことがなかった男は、初めての屈辱を味わわせてくれた異世界人に、心を奪われたらしい。
 引きこもりになってからも、自分を袖にした母様をずっと慕っている変態だ。

 ちなみに母様だけは、そのことを知らない。
 むしろ、ジェイコブには恨まれていると思っている。

 「素直に謝罪してくださるかと思えば……」
 「っ、」
 「いくら親戚とはいえ、我慢できません。もう金輪際、セナとは関わらないでください。悪影響ですっ!!」
 「~~っ、そんなっ。お待ちくださいっ! リュセ様っ!」

 必死に母様に縋りつこうとするジェイコブは、護衛に拘束される。
 今までは父様が裏で手を回していたから、ジェイコブは母様とは会えなかったんだ。
 息子と縁を結びたい気持ちもあっただろうが、ジェイコブは母様と繋がりを持ちたかったのだ。

 何人も恋人がいるくせに、本気で気持ち悪い。
 唾を吐きそうになったが……。

 「セナ、もう大丈夫だよ。セナはとっても可愛いんだから。僕の自慢の息子だよ」
 
 微笑む天使、もとい母様が、俺を優しく包み込んでくれる。

 「っ……はい、ありがとうございます。母様……こ、怖かったですッ」
 「…………」

 怯えた演技をする俺は、あんぐりと口を開けているジェイコブに、勝ち誇った顔をしてやる。
 俺が討伐予定だったが、大好きな母様がジェイコブをやっつけてくれた。

 嬉しくてぎゅうっと抱きついていると、無言の母様の体が小刻みに震え出す。
 ちらりと顔を上げれば、いつもニコニコと笑っている母様が……ブチギレていた。

 背筋に寒気が走る。
 ゾクッとしていると、シュヴァリエ父様が俺たちを包み込む。
 母様の怒りのオーラが、一瞬で消え去っていた。

 「セナのお披露目会をぶち壊した男は、二度と私たちの前に現れることのないようにするつもりだ。セナも、もう安心していい。よく頑張ったな」
 「っ……父様ッ!」

 すべてわかっていて、俺の好きなようにやらせてくれた父様。
 昔は醜い容姿がコンプレックスで、心の中ではずっと母様に似たかったと思っていた。
 でも、今は違う。
 俺の自慢の父様は、すごくかっこいいんだ。

 感動した俺が珍しく、自らキスをしようとしたのだが……。
 
 「いつも愛らしいリュセが怒ると怖いな?」
 「っ……」
 「昔を思い出した……。私を守ってくれていた時のリュセもかっこよかったが、今日は一段と頼もしく見えたぞ?」

 愛おしげに目を細めた父様だが、なぜか母様はしゅんとしている。

 『……嫌いになりましたか?』
 『嫌いになんてなるわけないだろう?』
 『本当?』
 『本当だ』
 『本当に本当?』
 『ククッ、本当に本当だ』

 ……コソコソといちゃつく二人の会話を聞き続ける俺は、全力で気配を消していた。

 「はあ……。可愛いな、リュセは。私に嫌われたと思って、そんなに落ち込んでいるのか?」

 幸せオーラ全開になる父様だが、夫の顔色を窺う女神の姿に、皆が驚愕していた。

 今も母様を狙っていたのは、ジェイコブだけじゃない。
 歳を取って、若い頃よりも更に醜くさが増した父様からなら、女神を奪えるかもしれないと考えた若者たちが、めかし込んできていたのだ。

 「諦めた方がいいですよ」
 「「「っ……」」」
 
 俺の独り言は、皆に聞こえていたらしい。

 未来ある若者たちをガッカリさせてしまったが、早く諦めた方が身のためだ。
 そしてようやく安心することができた俺は、参加者全員に扇風機をお買い上げいただいた。











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