婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚姻後

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 愛する妻がいなくなり、絶望した父様は、黒髪を見ると母様を思い出すのか俺を遠ざけていた。

 というか、廃人だった。
 自殺しなかったことが奇跡だったと思う。

 いつかまた母様に会える日を、ただひたすら待っていたのだと思う。

 二十年以上も、ひとりで──。

 途中で育児放棄しやがったが、俺はこの不憫な男のことも愛しているんだ。

 「残念ながら、お前は私に似て醜男だ。これから度重なる困難が待ち受けているが、リュセがお前を愛してくれる。もちろん私も愛するが……。本当にすまない」

 ボソボソと告げている父様は、過去の辛い記憶を思い出しているのだろう。
 俺の未来を案じて話してくれているのだが、そのおかげで、俺は美醜の感覚が狂っている母様に洗脳されることはなかった。





 一度目の人生では、リュセ母様は友人のマンションに遊びに行ったはずなのに、気付いたら異世界の森で迷子になっていた。
 途方に暮れているところに、仕事でたまたま通りかかったのが、シュヴァリエ父様だった。

 この時すでに、二人は一目惚れしていたらしい。

 俺の祖父母と交流があった父様は、母様を信頼できる二人に任せることにした。
 養子先が決まり、慣れない環境でもなんとか暮らしていた母様は、サルース商会を継ぐんだ。
 そこへ、父様がよく足を運んでいた。
 母様が生み出す異世界の品に興味があると、言い訳をしながら。

 会話をすることはあれど、いかんせんこの二人は初心だった。

 互いに見ていない時にチラチラと視線を送るだけで、想いを伝えるまでに五年も費やした。

 二人して、ずっと片想いを拗らせていたらしい。
 でも母様が正式に商会の仕事を任されてからは、二人の時間が自然と増えていくことになる。
 なんだかんだで毎日サルース商会に足を運んでいた父様は、ある時……。

 母様のヤバイ独り言を聞いてしまった。

 『はああああ~。同じ空気を吸っていただけで幸せすぎるっ! 明日も来てくれるかな……? いや、待っているだけではダメだ! 王子様に会うために、僕は新商品をガンガン作るしかないんだっ! ……それにしても、今日も今日とて素敵だったな、シュヴァリエ様っ♡ あっ、勝手にお名前を呼んじゃった! ダメだぞ、僕っ! モブの僕なんかと釣り合うはずがないんだから……。でも、心の中では毎日シュヴァリエ様って呼んでいるんだけどねっ!! ふふふっ』

 デレデレしている母様の顔を見て、父様は気を失いそうになったらしい。
 そして父様が真っ赤な顔で立ち尽くしていたところを、母様が目撃。
 あたふたする二人だったけど、逃げようとした父様は、涙目になる母様にノックアウトされた。

 その日は一時間ほどもじもじして、無言で別れたふたり。
 母様は幻滅されたって大泣きしてたらしいけど、翌日花束を持った父様が母様にプロポーズした。
 ふたりして『奇跡だっ!』って、感動していたらしい。
 ……誰か教えてやれよ。

 でもその拗らせ期間が長かったおかげか、二人はすぐにラブラブになった。
 騎士爵を得ていた父様だったが、あっさりと騎士団を辞めて、サルース商会で母様を支えることにしたんだ。
 父様は剣の腕をひたすら磨いていたから、母様に近付く不届き者はみんな逃げ出した。

 そして俺が誕生する。

 第一子だったし、一人っ子だった。
 ブサイクでもみんな愛してくれたし、特に母様は尋常じゃないくらいに可愛がってくれた。
 毎日可愛い可愛いと呪文のように言われて、父様や祖父母がいなければ、俺は世界一可愛い男だと誤認していただろう。

 そうこうして、どっかの馬鹿が異世界に繋がる箱を作り出した。
 母様を諦められなかった馬鹿王子と、俺を母様の本当の家族に会わせてあげたいという三人の願いによって……。

 











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