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婚姻後
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しおりを挟む仕事終わりに、我先にと贈り物で溢れた子供部屋で整列する美形集団がいる。
そんな彼らのもとへ、元気にハイハイをする一歳児は、立派なイケメンハーレムを築いていた──。
「シオン様、上手ですっ!」
「こっちです! 俺のところに来てください!」
「あう!」
両手を広げる王子様集団が、必死にシオンの気を引いている。
イケメン選び放題の一人レースである。
ただし。
このレースは、毎回同じ人が勝利するんだ。
お目当てのイケメンに抱っこされて、鼻の下を伸ばすシオンは、とっても嬉しそう。
『またルドルフかよっ!』と、悔しがる第二騎士団員だけど、シオンにメロメロだ。
「ていうか、ルドルフに懐きすぎだろう!」
「もしかして……。シオン様は、ルドルフをパパと間違えているんじゃないですかね?」
「髪色が同じだからか?」
「っ……俺が、シオン様のパパ……」
シオンを優しく抱っこして、きらきらとした瞳で僕を見ているルドルフくん。
少し早い父親体験をして喜んでいるみたいだ。
「ということは……俺は、リュセ様の、最愛の旦那さ──」
「そんなわけないだろう。お前の頭には、花でも詰まっているのか?」
いつも優しいシュヴァリエ様が、ビシッと厳しい言葉を吐く。
ふたりは軽口を言い合う仲なんだけど、なぜか今は睨み合っている。
そんな仲良し二人を眺める僕は、まったりと紅茶を飲んでいた。
妊娠中はあまり飲めなかったから、今は大好きなミルクティーを堪能しているんだ。
ほうっと声を上げると、僕の隣に座るランハートくんも同じような声を漏らす。
「っ……可愛い……」
「うんっ。赤ちゃんって、なにをしていても本当に可愛いよね? ランハートくんも、いつもシオンに会いに来てくれてありがとう」
「っ、いえ、俺は……その……」
どうぞと紅茶のおかわりを淹れてあげると、嬉しそうに頬を染めるランハートくん。
紅茶を一口飲んで、にっこりと微笑んでくれる。
氷のプリンスだったけど、今はみんなの前でもよく笑うようになっていて、すごく優しい子だ。
なぜか僕にだけは、口数が少ない気もするけど。
「世界一美味しいです。癒されます」
「っ、本当? これ、サルース商会で販売しようと思ってた新商品なんだ! 舌が肥えているランハートくんが褒めてくれるなら、大ヒット間違いなしだっ!」
「…………はい」
どうしてか肩を落としたランハートくんだけど、販売した時は買い占めると約束してくれた。
……氷のプリンスはお金持ちだった。
「シオン様のお披露目会が楽しみですね? どんなお姿が見られるのか、既に噂になっています」
「もう? まだ四年はあるのにね?」
「この一年、他の者たちはほとんどお姿を見られませんでしたから……」
「そっか。でも、衣装はジャスティン様が選ぶと思うよ? 出産前から買い漁っていたしね?」
「え」
「ジャスティン様はセンスがいいし、シオンも可愛いから、なにを着ても似合うと思う!」
「…………ソウデスネ」
話が噛み合っていないことに気付いていない僕は、まだまだ先のお披露目会のことを考えていた。
ミラジュー王国の社交界では、五歳になるとお披露目会を開くんだ。
それでもシオンは僕に似た黒目黒髪だからか、一歳でお披露目してほしいと熱望されている。
それを断固拒否したシュヴァリエ様。
理由は、美しすぎて襲われる危険性があるから。
……立派な親バカに成長している。
そして僕は、シオンと関わる人たちをキラキライケメン集団にしている。
幼い頃からお世話をしてくれている人が、整った顔の細マッチョばかりだったら、きっと僕と同じ美醜感覚になるはず。
そう考えての教育だ。
といっても、僕の仲良しは第二騎士団員だ。
なにもせずとも、集まってくれるのは必然的にイケメンばかりだった。
ルドルフくんから我が子を奪い取ったシュヴァリエ様が、僕とランハートくんの間に椅子を持ってきて腰を下ろす。
何年経っても可愛いシュヴァリエ様は、どこかむすっとしている。
特にやましいことなんてないのに、嫉妬しているみたいだ。
「ふふっ。シオンのパパは、世界一可愛くて、かっこいいんだよ~」
「あう!」
「…………その間違った教育で、本当に大丈夫か?」
肩を竦める仕草をしたシュヴァリエ様だけど、口元が緩んでいて、とっても嬉しそうだった。
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