婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚姻後

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 ──なぜ、燃やしたんですか?


 咎めるような口調のシュヴァリエ様に、俺は『わからねぇ』としか答えられなかった。


 ライトニング公爵家とサルース商会が、総力をあげた盛大な結婚式から一週間。
 仕事のためにリュセのもとへ訪れていた俺は、愛息の伴侶と大切な話をしていた。
 ちなみに気を利かせたオースティンは、リュセとエレベーターとやらを見に行っている。

 「別にエルヴィスさんを責めているわけではありません。ただ、処分するにしても、まずは持ち主であるリュセに聞くべきだったのではないかと」
 「……ああ、それは間違いない。俺が悪い」

 どんな時でもリュセの気持ちを最優先してくれる男は、顔は醜いが本当にいい奴だと思った。
 なにせ今俺たちがいる暖かな部屋も、妊娠しているリュセが寛げるようにと、シュヴァリエ様が新たに用意した部屋だ。

 愛する人のためならなんだってやる男は、じっと俺の瞳を見ている。
 俺がリュセの母親でなければ、首を刎ねられていたかもしれない。
 そんなピリッとした空気だ。

 「夢を、見たんだ……。ほとんど覚えちゃいないが、悪夢だった」
 「…………っ。まさか、リュセが異世界に戻ってしまう夢、ですか?」
 「…………ああ」

 本当は違うんだが、うまく説明できる気がしなかった俺は、頷いていた。

 とにかくリュセの荷物を残しておいたら、とんでもないことが起こる。
 それは、俺と、目の前で青褪めている男がやらかした夢だった。
 ……と、思う。

 本当なら結婚式が終わった後に渡す予定だったリュセの荷物を、オースティンと準備していたんだ。

 でも俺は、気付けば暖炉に放り込んでいた。

 リュセにどんなに責められようと、後悔していないのはなんでなんだろうな?

 まあ、リュセは俺を責めるどころか、必要ないと突っぱねてくれたが。
 もしかしたら見たかったのかもしれないが、リュセは俺たちのことを想って「いらない」と言ってくれたのだろう。

 愛されているな、と思っていると、ひょっこりと顔を覗かせた人物が、ぱあっと笑みを浮かべた。
 室内でもきらきらと輝く黒い瞳には、俺が大好きだって気持ちで溢れているんだ。

 「お待たせしましたっ!」
 「ああ、リュセ。体調はどうだ?」
 「すこぶる元気ですよ?」

 ねっ、とシュヴァリエ様に笑いかけたリュセは、当たり前のように夫の膝の上に座った。
 さっきまで殺人鬼のような目をしていた男は、今は目元を和らげている。
 ……まるで別人だ。

 『無理しないで』が口癖になっているシュヴァリエ様は、自然な動作でリュセを包み込む。
 ほのぼのとした空気が流れて、席に着いたオースティンが早速仕事の話を始めた。

 「ベールの長さは三種類にしてるけど、今のところはリュセが身につけた、ロングベールの注文が殺到しているな?」
 「まあ、予想通りだろう。それに、ルーク殿下が宣伝してくれたらしく、隣国の王族からもお願いされたんだ」
 「っ、凄いですっ! さすが母様っ!」
 「……いや、一番凄いのはリュセだろう」

 にこにこしているリュセが小さく拍手をしてくれるのだが、シュヴァリエ様の言う通りだ。
 社交界の中心人物が結婚式で身につけた衣装の話は、ミラジュー王国だけにとどまらず、隣国でも噂になっている。

 美しく有能な異世界人は、会ったことのない他国の人間すらも魅了し、喉から手が出るほど欲している存在だ。

 今は妊娠しているから求婚されることはないが、出産後はどうなるかわからない。
 その時は、シュヴァリエ様がなんとかするだろうが……。

 「僕のために素敵な部屋を用意してくださって、ありがとうございますっ!」
 「ああ……。当たり前のことをしているだけだというのに、いつも感謝の言葉を忘れないリュセは、とにかく愛らしくて仕方がない」

 さらりと甘い言葉を囁くシュヴァリエ様に、リュセはたじたじになっている。
 何百回見ても、不思議な光景だ……。

 妊娠中だから初夜は添い寝だけだったが、子の名前を考えたりと、二人の絆は深まっているらしい。

 「……なあ。この部屋、あつくないか?」
 「~~っ、母様っ!」

 真っ赤な顔のリュセに叱られる俺は、その後もイチャつく二人を揶揄い続けていた。














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