婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚姻後

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 薔薇が美しく咲き誇る季節を迎え、赤子の泣き声と共に、僕は壮絶な痛みから解放されていた。

 「よく頑張ったな、リュセっ」

 綺麗な泣き顔を見せてくれた僕の最愛の旦那様が、優しく声をかけてくれる。
 昨夜から何十時間とずっと握り続けてくれていた手は、今も僕の汗ばむ手を離すことはない。

 我が子を抱くよりもまず、僕の体調を心配してくれるシュヴァリエ様に、僕は誰よりも愛されていると実感していた。

 「シュヴァリエさまっ……。だいすきっ」
 「っ、ああ、私もだ」

 愛してると囁いたシュヴァリエ様が、そっとキスをしてくれる。
 疲れ切っていた僕だけど、一瞬で元気になった気がした。

 そんなラブラブな僕たちに歩み寄る人が、産まれたばかりの赤子を抱いている。
 ブラウンの瞳から大粒の涙を流すジャスティン様は、この度おじいちゃんになった。
 感極まっているのか、あうあうと口を動かすだけで、声がまったく出ていない。
 くすりと笑ってしまった僕。

 「シュヴァリエ様、抱っこしてみてください」
 「っ……あ、ああ」

 ふにゃふにゃと泣いている赤子を、そうっと受け取ったシュヴァリエ様。
 抱き方がすごくぎこちないと思っていると、カッと目が見開かれた。

 「っ、リュセにそっくりだ!!」

 よかった、よかったと繰り返すシュヴァリエ様に、見守っていた使用人たちが「おめでとうございますっ!」と声をかけた。

 「~~っ、めちゃくちゃ可愛いぞ!!」
 「ああ!! 本当だっ、リュセにそっくりだ」

 ここ一ヶ月。
 ずっと僕に付き添ってくれていたエルヴィス母様とオースティン父様は、すでに僕たちの子供にメロメロになっている。

 「なんと愛らしいのでしょう……。瞳も神秘的な色なのでしょうか」

 最近は、寝てばかりいた僕のフォローをしてくれていたセバスさんが、うっとりと呟く。
 早く瞳の色も知りたいとばかりに、赤子に熱視線を送っていた。

 シュヴァリエ様から我が子を受け取った僕は、目をぱちぱちとさせる。

 「…………かわいい」

 無事に第一子を出産したのだけど、僕はしばらくぽけーっとしていた。

 どことなく僕に似た平凡顔の子は、異世界人の血が混じっているからか、みんなには美人に見えているらしい。

 僕はずっと、シュヴァリエ様に似た美形が産まれてくると確信していたんだ。
 なんでって言われてもわからないけど……。
 でも成長したら、きっとシュヴァリエ様に似ている部分も出てくるだろう。
 赤子の顔は変わっていくものだから。

 「この子の名前……シオンにしませんか?」
 「ああ。だが、セナじゃなくていいのか?」
 「はいっ。穏やかな泣き声だから、シオンがぴったりだと思います」
 
 星穏と書いて、シオン。

 シュヴァリエ様と一緒に考えた名前だ。

 そして今日からシオンは僕が育てる。
 ミラジュー王国では乳母が子を育てるのが一般的だけど、僕はそれを拒否した。

 幼い頃のシュヴァリエ様は、自身が醜い容姿だと教えられていなかった。
 その時はまだ後継者扱いをされていたから、侮辱されるようなことはなかったみたいだけど……。
 使用人の態度で、なんなとくわかっていたそう。

 そして両親に放置されていたシュヴァリエ様は、かまってほしくてたくさん悪いことをしたそうだ。
 でも、どんな悪さをしても許されていた。

 唯一心を許していた優しい乳母が、陰ではシュヴァリエ様のことを『かわいそうな子だから』と庇ってくれていたから……。

 その時に、乳母が優しく接してくれていたのは、同情されているだけだったんだと気付いた。
 乳母のことを本当の母親のように慕っていたから、とても傷付いたんだ。

 だから、産まれてくる子は僕が育てたいと話していたんだ。
 どれだけ醜い子が産まれてきたとしても、美醜が逆転している僕なら心から愛せる。
 というか、不細工でもシュヴァリエ様との子なら愛せる自信しかない。

 そういうわけで、シュヴァリエ様との仲もより深まっていたわけだけど……。


 「なんて可愛いんだ、シオン。小さなリュセだ」


 僕の麗しい旦那様が、我が子を独占している。
 子育てをする自信がないと話していた人が、誰よりもシオンにメロメロになっていた。












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