婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚約編

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 そして相思相愛の婚約者に向かって、キッと睨みを利かせた。

 「詳しい事情も話してやるからねっ! ……もし裏で手を回していたなら、覚悟しな」

 凶暴な熊も逃げ出してしまうような、ドスの利いた声で話したシャール。
 最後の言葉は俺の兄に向けられており、レオンハートはヒィッと情けない声を出して許しを乞う。

 その態度で、リュセ様と交流している俺を妬んだ兄が、使用人たちに髪結いをさせないように指示を出していたことがわかった。

 縋り付く婚約者を振り払うシャールは、ずんずんと歩いていく。
 式の前にリュセ様と会う約束をしていたらしく、顔パスだ。

 「髪結いのことは心配いらないよ! リュセ様に仕えている使用人は、容姿に偏見のない人たちだから大丈夫っ!」

 ライトニング公爵家には有能な人が揃っているから、髪結いを頼もうと提案するシャール。
 誠に申し訳ないのだが、想い人の晴れ舞台に俺もかっこいい姿を見せたい気持ちが勝り、お願いすることにした。

 公爵家の使用人の方々には、ここ一ヶ月間お世話になっている。
 嫌な態度を取られることもないだろうと、ブサイク集団も安堵していた。

 
 そして、現在──。


 自身の着替えを後回しにし、器用にブサイク共の髪を結う女神の姿に皆が涙していた。


 シャールに話を聞いたリュセ様は、お怒りモードだった。
 俺たちのために怒ってくれていて、それだけで嬉しかったのだが、使用人に任せるより自分が髪結いをやると言い出したのだ。
 さすがにそれはダメだろうと、全員でお断りしたのだが……。

 「時間に余裕があるから大丈夫だよ! 僕も精一杯頑張るから、任せてくれる?」
 「「「っ……よろしくお願いします!!」」」

 ブサイク一同は、一斉に頭を下げていた。
 リュセ様のお願いを断れる奴がいるなら、今すぐ目の前に連れて来てくれと切に願う。

 そうして俺の番がやって来て、緊張しすぎて喉がカラカラだ。
 しかも、なんの躊躇もなく髪に触れられた。

 リュセ様の手が……。
 俺の髪に触れているっ!!
 
 (なんて贅沢な時間なんだ……)

 時折、鏡越しで魅力的な黒い瞳と視線が交わる。
 眩しすぎて俺の目はチカチカしている。

 「もうちょっとだから、我慢してね?」
 「っ……は、はいっ」

 こくこくと頷くのだが、あまり動かないでと、熱くなる頬に触れられる。

 「っ……リュ、リュセ様っ、手が……穢れてしまいますっ」
 「クール系王子様の淡い空色の髪を遊ばせて、イケメン度が上がっているっ!」

 涙目になっていると、なにやら早口で告げたリュセ様がうっとりとした表情で、鏡に映る俺を見つめていた。

 (っ……可愛すぎて、呼吸困難だっ!!)

 というか、クール系王子様とは、誰のことを言っているんだ?
 団長のことか?
 でも、淡い空色の髪って、俺……だよな?

 他に空色の髪の奴なんていたかと仲間をぐるりと見回すと、早く退けと目で訴えられる。


 「はい、氷のプリンスの完成だよっ!」


 可愛らしい声で告げたリュセ様が、俺の肩に触れる。
 正直なところ、少しのふれあいで胸が熱くなる俺は、天に召されそうになっていた。

 気付いた時には、鬼の形相になるルドルフに椅子から退かされていた俺。
 もう髪型なんてどうだっていいと思っていたのだが、驚くほどかっこよくなっていた。

 もじもじとしながらお礼を述べる俺は、リュセ様の近くに立ち続ける。
 そんな俺を眺めるシャールにこっそりと笑われているんだが、好きなだけ笑っていろ。

 「あ、あの、氷のプリンスってなんですか?」
 「塩対応で有名なランハートくんが、たまに見せてくれる微笑みは、胸キュン案件なの」
 「……ちょっと理解できないです、すみません」

 ドキドキしながら勇気を振り絞って話しかけたのだが、リュセ様の話している内容がこれっぽっちもわからなかった。

 それでも『とってもかっこいいよ』と、微笑みかけられた俺は、頬が熱くなる。

 それからパパッと全員の髪を結ったリュセ様が、みんなの前で仁王立ちした。
 「みんな、よく聞いて」と告げた女神に、俺たちは史上最速で整列していた。
 リュセ様は、団長よりも指揮官に相応しいかもしれないと思ったことは、団長には内緒だ。











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