婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚約編

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 訓練場に向かう私を待ち伏せていたのは、王族の護衛を引き受けている、騎士団の花形集団。
 実力はないが、容姿が美しい者たちの集まりだ。

 私がどんなに努力をしても、手にすることのできない肉体を持っており、左右違う顔のパーツはすべての人を魅了する。

 ぼってりとした太い唇は魅力的だというのに、足を止めた私を見て、下品な微笑みを口角に浮かべていた。

 そんな彼らを睨みつけているのは、この度第二騎士団に入隊した若き騎士たちだ。

 「リュセ様は、副団長一筋だっていうのにっ!」
 「副団長っ! あんな失礼なことを言われているのに、なにも言い返さなくていいんですか?!」
 「ああ。別にかまわない」
 「っ、なんで……」

 不服そうにする彼らはリュセの同級生であり、私が面倒を見ることになっている騎士たちだ。
 プロムナードで会話をしてから、私の下につきたいと志願してくれたのだ。
 揃いも揃って容姿は醜いが、私を見る目は尊敬する気持ちがあらわれていた。

 その瞳に勇気をもらった私は、自身よりも遥かに美しい者たちに向けて、ふっと笑みをこぼした。


 「誰にもリュセを渡す気はないからな?」


 普段は聞き流す私が、挑戦的な態度を示したからか、第一騎士団の連中が驚愕している。

 ふくよかな美形たちの間抜け面を初めて見た私は、なんだかスカッとしていた。

 それと同時に「いってらっしゃい」とお見送りをしてくれたリュセに、頬にキスをされたことを思い出す……。

 「っ、ダメだ。幸せすぎるっ」
 「…………副団長が惚気てる」

 心配して損した気分だと笑う彼らと共に、呆然とする美形騎士たちの横を通り過ぎる。
 いつもなら圧倒的な存在感を放っていた彼らが、今日は酷く小さく見えた気がした。





 今日のことをリュセに話したい……。

 はやる気持ちを抑えきれない私は、リュセに会いたいがために、早々に帰宅していた。

 「シュヴァリエ様っ! た、大変ですっ!」
 「っ、なんだ。リュセになにかあったのか?!」
 「それが……」

 帰宅した私を出迎えたセバスが、焦った様子で額の汗を拭う。
 とにかく来てくれと小走りになるセバスについて行けば、広間に使用人が集まっていた。

 「リュセ様っ。わ、私はクビでしょうか……」

 右足を庇うように歩いた初老の庭師に向かって、リュセが笑顔で頷いた。
 天使のような顔で「はいっ」と答えたリュセが、今は恐ろしく見えてしまった。

 庭師のハロルドは、私の父が当主になる前から、この屋敷で働いてくれている。
 リュセの好きにやらせようと思っていたが、さすがに止めないといけない。

 そう思って声をかけようとしたが、セバスに見守るようにと制された。

 「もし、次に怪我を隠して無理に働いていることが発覚した時は、解雇しますよ?」
 「っ……」
 「ハロルドさんは、足の怪我が治るまで庭師の仕事はお休みしましょう。その代わり、座って出来る仕事を割り振りますね?」
 「っ、あ、ありがとうございますっ!」
 「リュセ様! わ、私たちは……」

 輪の中心でニコニコと話を聞くリュセが、優しい口調で指示を飛ばしている。

 普段は人に命令することなどないリュセが、セバス並みの……いや、セバス以上に仕切ることに慣れている姿に、私は度肝を抜かれていた。

 「これは一体、どういうことだ……」
 「お話に聞いていた通り、優秀なお方でした。屋敷の管理の仕事は、あっという間に理解してくださり、より働きやすい環境にするため、使用人ひとりひとりに話を聞いて、改善点をまとめ上げ……」
 「それでこの状況か」
 「……はい。たった数時間で、使用人の心を掌握しました」

 
 もしかしたら、リュセは異世界で役職についていたのだろうか……?

 聞いてみたいが、体調を崩す可能性もある。


 「あっ。シュヴァリエ様っ、おかえりなさい!」


 私を見つけて駆け寄るリュセに、「ただいま」と声をかける。
 ずっと言ってみたかった言葉を、リュセに伝えることが出来た。
 密かに感動していたのだが……。

 「ごめんなさいっ、お出迎えするつもりだったのに……」

 許してほしいとばかりに上目遣いで見つめられてしまった私は、人目もはばからずリュセを抱きしめていた。








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