婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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婚約編

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 息子の伴侶となるリュセさんの卒業祝いの場を設けた私は、目頭が熱くなっていた。
 生涯独身を貫くのだろうと思われていた息子が、ようやく愛する人を見つけた。
 しかもその相手と、想いを通わせたのだ。

 圧倒的な存在感があるリュセさんだが、話してみれば、ほんわか、といった言葉が似合う人柄。
 それでもここぞという時に、男前な一面も見せる魅力的な人物だ。
 シュヴァリエだけを愛することを誓ってくれており、半年後には結婚式を挙げる予定だが、気を抜けない状況だった。

 部屋を出て行く二人を見送った後、残された私たちはすっと顔を上げた。

 「給仕のあの男はダメだな」
 「ああ、裏方に回しておく。リュセさんに近付こうとするなら、解雇する」
 「はあ~。本当に大丈夫なんだろうな? ジャスティンを信用していないわけじゃないけど、リュセは本当にいい子なんだ……。今は二人をあたたかく見守っていたとしても、今後どうなるかはわからない。もしリュセに手を出そうとする輩がいるなら、すぐにでも迎えに来るからな?」

 心配だと足を揺らすエルヴィスに、私はわかっているとばかりに頷いた。

 「敵はもれなく排除する」
 「……おう」

 ──元妻のように。
 そう心の中で呟く私は、信頼する家令に目配せをした。

 本日、わざわざライトニング邸で祝いのパーティーを開いたのには、訳があった。
 リュセさんを祝う気持ちはもちろんあったが、使用人の最終選別だ。

 親の私から見ても、シュヴァリエの容姿は醜い。
 いくら公爵家の跡取りとはいえ、容姿のせいで見下されている部分がないわけではない。
 今まで忠実だったとしても、使用人の中にリュセさんを誘惑する輩がいては、二人は安心して過ごすことは出来ないだろう。

 シュヴァリエが当主となった後も、暫し私が監視する必要があるかもしれない。
 リュセさんの訪問で、表には見せないが、使用人たちは浮き足立っている。
 心からシュヴァリエを祝福している者もいれば、中には不釣り合いだと思う者もいるだろう。
 その者たちの矛先が、シュヴァリエに向かえばいいが、リュセさんを惑わそうとするのなら話は別。
 私も徹底的に排除するつもりだった。

 二人の動向を見守る家令が、使用人たちの挙動を事細かにチェックし、無事に選別が終了する。
 今後も定期的に観察していく予定であった。


 その後、どこか上の空のふたりが戻って来る。
 既成事実を作ってくれてもよかったのだが、シュヴァリエの理性が働いたようだ。
 エルヴィスに揶揄われる息子は、二十八年生きてきた中で、今まで見せたことのないような表情をしており、そんな顔が見れたのも、全てはリュセさんのおかげだった。

 そろそろ帰宅しようと皆で玄関ホールに向かう。

 ライトニング公爵家に仕えている使用人たちも、勢揃いしていた。
 明日からお世話になりますと、使用人にも丁寧に挨拶をするリュセさんは、既に皆に好かれているだろう。

 「また明日も会えるのに、寂しげにしているシュヴァリエ様が可愛すぎるっ! やっぱり天使様……いや、大天使様っ!」
 「…………少し変わった性格だが」
 「え? なにか言いましたか?」
 「いいや、なんでもないよ。気をつけて帰るんだよ」

 はいっ! と元気よく答えたリュセさんは、愛らしい笑顔を浮かべている。
 彼が心変わりするのではないかと、ハラハラしている私たちを他所に、リュセさんは相変わらずおかしな独り言を呟いていた。

 「また明日な!」
 「ああ。ちゃんとリュセさんを連れてきてくれよ?」
 「ククッ、わかってるって!」

 笑顔で手を振ったエルヴィスたちが、先に馬車に乗り込む。
 別れの挨拶をしたリュセさんも馬車に乗ろうとしたのだが、ふと足を止めた。

 どうしたのかと首を傾げるシュヴァリエに手招きをし、少しだけ背伸びをする。

 「また明日っ」
 「っ…………」

 
 内緒話をする仕草をみせたリュセさんが……。
 シュヴァリエの頬に……。


 キスをした。


 誰にも見られてはいないと思っているリュセさんだが、この場にいる全員がバッチリと目撃した。

 ぽかんとした顔で頬を押さえているシュヴァリエと、その光景を目撃した我々は、馬車が去った後もしばらくその場で立ち尽くしていた。











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