婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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リュセ

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 両膝をついて呆然とするミイルズさんのもとへ、ゆっくりと歩み寄る僕に、皆の視線が集まる。

 僕が重婚しないと宣言したことは、ミラジュー王国の人々にとっては衝撃的なことだったようだ。
 特に、僕と同じように子を宿すことが出来るミイルズさんは、今もなお信じられないような表情で僕を見上げている。

 シュヴァリエ様やジャスティン様は、きっと僅かでも婚姻の可能性があるミイルズさんに優しかったはずだから、彼は二人になにを言われても公爵夫人の座は諦めきれないと思う。
 だから僕が、引導を渡す。


「僕の最愛の人に、二度と近付かないでください。もし、次にシュヴァリエ様を傷付けるようなことをするなら、僕が絶対に許しません」


 小さな口を、はくはくとさせるミイルズさん。
 なにか言いたいことがあるなら今言ってほしいと待っていたけれど、周囲からの咎めるような視線に気付いたミイルズさんは、目を伏せた。

「もう、二度と、お二人に近付かないことを……お約束します」

 そう言って項垂れたミイルズさんは、完全にシュヴァリエ様のことを諦めたと思う。
 護衛に両脇を抱えられ、足元がおぼつかないミイルズさんが退場する。
 やりきった僕は、シュヴァリエ様を守ることが出来て大満足していた。



「まあ、ドンマイだ。リュセがかっこよかったし、いいだろ?」
「そうだ。結婚式までとっておくんだ」
「…………はい」

 いつのまにか覗きに来ていた僕の両親に肩を叩かれるシュヴァリエ様は、どうしてか捨てられた子犬のような顔で僕を見ている。

 ……瞳をうるうるとさせているんだけど、厄介事がなくなって、嬉し泣きしているんだよね?
 違うのかな?

 慰めた方がいいのだろうかと近付くと、今日は珍しく薄紫色の髪を結っているエルヴィス母様に、わしゃわしゃと頭を撫でられた。

「かっこよかったぞ、リュセ。さすがは俺の自慢の息子だ」
「はいっ、ありがとうございます!」
「でもなぁ~。さっきは、どう考えてもキスする場面だろ」
「…………キ、キスッ!?」

 みんな期待してたのに、と漏らした母様が、にやにやしている。
 
「っ、むりむり、絶対に無理ですっ! 僕は、手を繋げるだけでも幸せですから」
「クククッ……。リュセ? 手を繋いでいるだけじゃ、子供は出来ないぞ?」
「~~ッ!!」

 なんてハレンチなっ!!

 ……いや、当たり前のことを言っただけ?
 それでも人前ではやめてほしいと、さりげなく母様の腕をつねったけど、ノーダメージだった。

 ごめんごめんと、母様が謝罪の言葉を口にする。
 でも口元が緩んでいて、息子のキスシーンを待ち望んでいる顔をされる。
 そんな僕たちを微笑ましく見ていたシュヴァリエ様だったけど、すぐに僕を助けにきてくれた。

「あまりリュセを揶揄わないでください」
「ククッ。紳士ぶらなくていいって。シュヴァリエ様だって、早くしたいくせに……。リュセとの、初キッス♡」
「…………」

 無言のシュヴァリエ様にそっと手を取られ、『手を繋ぐだけでも幸せだ』と、僕と同じように答えてくれる。

 でも、シュヴァリエ様とキスをする妄想中だった僕は、今更だけど手を繋ぐことすら恥ずかしくなってしまった。

 それでも……。

「一生分の幸せを使い果たしてもいいから、シュヴァリエ様と、キスがしたい……」
「っ、」
「ああああッ!! す、すみませんっ。こ、心の声がっ!! いや、今は無理ですよ!? 心の準備が出来ていないのでっ!!」

 願望が口に出てしまっていた僕は、慌てて言い訳をするけれど、どんどん顔が熱くなる。
 そんな僕につられるシュヴァリエ様も、真っ赤な顔で頭を抱えていた。

 初々しい僕たちを見守る人々から、キスコールが起こる。

 だがしかし。
 そんな期待には到底応えられない僕とシュヴァリエ様は、逃げるようにその場を離れていた。
 









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