婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

文字の大きさ
上 下
29 / 100
リュセ

21

しおりを挟む


 しんどくなるくらい素敵な婚約者様が「来てくれて嬉しい……」と、はにかむ。
 格好いいと可愛いのコンボ攻撃に撃沈しそうになる僕もまた、俯き気味で頬を染めていた。

 荷物が重いだろうと、シュヴァリエ様が僕の手にしていたバスケットを持ってくれる。
 ふわふわパンで作ったサンドイッチはまったく重くないのだけど、シュヴァリエ様の気遣いが嬉しい僕は、感謝の言葉を述べた。

「一緒に食べようか」
「はいっ! あっ。でも、味の保証は出来ませんけど……。それでもいいですか?」
「「「っ……」」」

 差し入れは僕の手作りだと伝わったのか、シュヴァリエ様が息を呑んだ。
 というより、聞き耳を立てていた人たち全員だ。

 これで、シュヴァリエ様に熱心にアプローチしていることが周知されただろう。

「天気もいいし、観覧席で食べますか?」
「ああ、それがいいな」
 
 快諾してくれたシュヴァリエ様の空いている手を、当たり前のように繋ぐ僕。
 喜びを噛み締めた表情になるシュヴァリエ様は、世界で一番可愛かった。

 さっきまで盗み見ていた人々が、今は周囲を気にすることなく僕たちをガン見しており、あんぐりと口を開けている。

「第二騎士団の皆様の分もありますので、よければ食べてくださいね」
「っ…………あ、ありがとうございますッ!!」

 護衛陣から受け取ったサンドイッチに目を輝かせるイケメン騎士様たちが、その場で頬張る。
 うまいうまいと大袈裟なくらいに褒めちぎっていたけど、それはうちの有能な料理長が作っているから美味しいに決まっているんだ。
 
 あとで料理長にも教えてあげようと微笑んでいると、グイッと手を引かれて、騒いでいる人々から離れる。
 日陰になっている席に並んで座ると、シュヴァリエ様がどこかムスッとしていることに気が付いた。

「シュヴァリエ様?」
「……リュセの手作り料理は、私もまだ食べたことがないのに」
「っ、うっ、可愛い……っ」

 拗ねている原因に気付いて悶える僕は、たまごサンドを手にして、少しだけ尖るセクシーな唇をツンツンとつつく。
 動揺するシュヴァリエ様が視線を彷徨わせるけど、あーんと言えば、恐る恐る口を開けてくれた。
 
「僕が早起きして作ったのは、シュヴァリエ様の分だけですっ」

 そう耳打ちすると、マヨネーズと愛情がたっぷり入ったたまごサンドを頬張るシュヴァリエ様が、激しく咳き込んだ。

「大丈夫ですか!?」
「うっ。すまない、大人げなかった……」
「ふふっ。全然? 可愛いだけですよ?」
「……カワイイ? それは、褒め言葉か?」

 冗談だろうと、怪訝な表情になるシュヴァリエ様にくすりと笑う僕は、顔を近付ける。

「ふふっ。貶しているように見えます?」
「っ、」
 
 目を見開くシュヴァリエ様は、端正なお顔がじわじわと赤くなっていく。
 参ったとばかりに、小さく首を横に振ったことを確認した僕は、よかったと微笑んだ。

 僕たちの間で甘い空気が流れて、完全に二人の世界に入っていた。


「ちょっと!!!! どういうことっ!? 僕にはそんな顔、一度もしたことないくせにっ!!」


 訓練場の柵をよじ登って、叫ぶ人がいる。
 危険行為にびっくりしていると、翡翠色の大きな瞳と目が合った。
 赤く色付く唇からは「あ、う、」と、なにやら発せられ、護衛陣に柵から引き摺り下ろされる。
 小柄な青年に対して、みんなの接し方があまりに雑で、僕は目を疑った。

「なんでアレがここにいるんだ……」
 
 僕を守るように抱き寄せたシュヴァリエ様の低い声が耳に届く。
 カタカタと勝手に体が震え出す。
 
「怖がらなくても大丈夫。私が守る」

 ……そうじゃない。
 と言いたいのに、声が出ない。

 護衛に拘束されるのは、くりんとした金色の髪が愛らしい、天使のような絶世の美青年。
 シュヴァリエ様の隣に並んでも見劣りしない人を初めて見た僕は、気を失いそうになっていた。


「っ……全然、ブサイクじゃ、ない……」










しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

処理中です...