婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

文字の大きさ
上 下
28 / 100
リュセ

20

しおりを挟む


 訓練場の三分の二を広々と使用しているのは、ぷるんとした肉付きの良い男たち。

 いかに自分たちが美しく見えるかを知り尽くしているような動きは、とてもゆったりとしていた。
 剣の稽古をしているというより、お芝居を見ているみたいだ。
 キメ顔で汗を流している彼らは、きっと平和ボケしているのだろう。
 国民を守る使命を、思い出してほしい。

 大勢の見学者から黄色い声援を浴びる第一騎士団員だけど、僕にはわがままボディのナルシスト集団にしか見えなかった。

 そして彼らに追いやられるように隅にいるのは、パステルカラーの髪色が美しい人たち。
 柔らかく、淡い髪色が目に優しい彼らは、しなやかな筋肉を身にまとっている。


 本格的な剣の打ち合いをする第二騎士団員は、贔屓目なしにも本物の騎士様だった。


 僕の予想を遥かに凌駕する、爽やか系イケメン集団だ。
 一人一人が恋愛小説の主人公並みの美貌の持ち主なんだけど、そんな彼らの中心には、長い白銀の髪を靡かせる一際綺麗な人がいる。

 なにを隠そう、僕の婚約者様だっ!

 美形に囲まれても、圧倒的な美しさだ。
 格好よく指示を出しているのかと思えば、シュヴァリエ様の隣にいるモブ顔の人が団長らしい。
 いい感じにシュヴァリエ様の美貌を引き立たせている。
 僕並みの立派なモブだ。

 彼もいい仕事をしていると頷いた僕は、普段よりもキリッとしたシュヴァリエ様に見惚れていた。


「純白の騎士服がこんなに似合う人は、この世でシュヴァリエ様ただ一人だっ!」


 大勢の見学者たちが、普段は第一騎士団を見るために使用する望遠鏡で、うっとりとしている僕を見ていることにも気付かずに、ほうっと声を上げる。


 騒ついていた訓練場が、いつのまにか静寂に包まれていた。

 その異変に、いち早く気付いた第二騎士団の美形たち。
 日本でいう甲子園球場のライトスタンドを独占している僕に視線が集まった。

 そして大好きなシュヴァリエ様が、僕を見つけて驚愕している。
 他に見学者がいれば、目が合ったのは勘違いかもしれないと思うけど、僕の周囲には護衛陣以外は誰もいないんだ。

 間違いなく、僕を見つけてくれたと確信した。


「シュヴァリエ様……っ♡」


 嬉しくて手を振る僕。
 もちろん稽古の邪魔をしてはいけないとわかっているので、胸元で控えめに、だ。

 そんな姿が、ミラジュー王国の方々からは、奥ゆかしい女神様のように見えているだなんて思ってもいない僕は、シュヴァリエ様に熱い視線を送り続けていた。

 手を振り返して欲しかったけど、僕が現れたことに驚いたのか、シュヴァリエ様は微動だにしない。

 ……隙だらけの顔も可愛いっ。
 サプライズは大成功だ!

 でも、僕はシュヴァリエ様に手を振ったのに、どうしてか遠方にいる第一騎士団の人たちが、大きく手を振っていた。
 冬眠の準備をしているかのような体型の彼らに、僕の知り合いはいないので、すっと手を下ろす。

 騒然となったけど、訓練は再開された。

 僕がいると集中出来ないのか、シュヴァリエ様はさりげなくチラチラとこちらを見ている。
 それでも剣筋が良くて、誰にも負けない圧倒的強者だった。
 普段の少し自信なさげなシュヴァリエ様とのギャップに、僕は眩暈めまいがしていた。

「予定より早く昼休憩になりそうです。行きましょうか」

 あっという間に一時間が経過していて、どうしてか苦笑いするベアードさんに声をかけられる。
 うん、と笑顔で頷く僕は、バスケットを片手にシュヴァリエ様のもとへ向かった。

 観覧席から、「シュヴァリエ様っ!」と声を掛けると、どうしてか第二騎士団全員が振り返る。

「っ、リュセ……」
「差し入れを持って来たので、一緒に食べませんか?」

 にこっと微笑むと、周囲の目を気にするシュヴァリエ様が、軽々と高い柵を飛び越えて、僕の前に立つ。

 ……いやいや、格好よすぎかっ!!













しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

処理中です...