婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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シュヴァリエ

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「おいおい。なんでコイツがいるんだ?」
「っ、」
 
 リュセの両親の顔を見た瞬間、貧乏男爵家出身のミイルズは押し黙る。
 それでも、不貞腐れた表情を隠しもしない。

「う、噂を確かめに来ただけだよっ」
「そうか。じゃあもう帰れ」
「っ……嘘でしょ?! こんな醜男が相手にされるはずないっ!!」

 ぎょろりとした大きな目を見開くミイルズが、叫び声を上げる。
 彼の後ろに立つ三人も、驚愕していた。

「オイ。俺の愛する息子の想い人を侮辱するなら、許さねぇぞ」
「ヒィッ!!」

 エルヴィスさんに威圧され、真っ青になって逃げ出したミイルズ。
 彼の恋人たちも、慌てて去って行った。

 私を貶していたミイルズだが、彼も容姿は醜い。
 それでも子を宿すことが出来るため、偉そうな態度でも恋人は六人もいる。

「あんな態度の奴が許されるだなんてっ。ブレイク男爵家は出禁にしよう」
「……ありがとな、オースティン」

 普段は温厚なオースティンさんだが、相方のために憤慨していた。

 リュセの両親は元貴族だ。
 容姿が醜い故に不当な扱いを受け続け、後継者争いに敗れたふたり。
 特にエルヴィスさんは、弟が子を宿すことの出来る体だったため、どれだけ努力をしても報われることはなく、今は頭の弱い弟が家督を継いでいる。

 それが罷り通るのは、子を宿すことの出来る体で産まれてくる者が少なく、貴重な存在だからだ。
 つまり彼らは、選ぶ側の人間。
 重宝されて育つため、だいたいがミイルズに似たような感じの傲慢な性格だ。

 よって、美しさだけでなく、謙虚で人当たりの良いリュセは、圧倒的な人気を誇っている。
 それは王族よりもだ。

 いつかリュセも、私以外の者と恋仲になるのだろうか……。

 子孫を残すためという名目で、子を宿すことが出来る者の大半が重婚している。
 愛人の存在も許容されているため、私と婚約してもリュセは引くて数多だろう。

 それでも私はリュセと一番最初に婚約するのだから、嬉しいことには違いない。
 婚約するだけでも奇跡なんだ。
 独り占めするようなことをしてはバチが当たる。
 そう思うのに、リュセの隣に私以外の人間がいることを想像しただけで、胸が苦しくなっていた。

「あんな馬鹿は気にしなくていい」
「はい。いつものことですが……」

 声をかけてくれたオースティンさんは、私がミイルズのせいで気落ちしていると思っているらしい。

 ミイルズと婚約していたのは、学園に入学するまでの三年間。
 十年以上も前のことだ。
 向こうは金目当ての婚約だったし、お互い関係を持つつもりなんてこれっぽっちもなかった。
 顔を合わせる度に暴言を吐くミイルズのことなんて、どうだっていい。
 私の頭の中は、リュセのことしか考えていなかった。

「そろそろ弁えてもらわないといけませんね。リュセのために」
「っ、ああ、その意気だ!!」

 普段は無視を決め込む私の変化に、オースティンさんは黄金色の瞳を輝かせていた。

 私が下位貴族にも侮られたままでは、公爵夫人になるリュセにも影響してしまう。
 
「リュセなら私より上手くやれるとは思いますが……。それでも私は、リュセを守りたい……」
「ああ。俺たちも応援するからな!」

 ふたりに励まされて頷いたのだが、勝手に婚姻する気になっている自分に、心底呆れてしまう。

 今のところ、情けない一面しか見せられていないのだから、捨てられる確率の方が高いというのに……。

 いつもの癖で、すぐに最悪な事態を想定してしまうが、私を真っ直ぐに見つめるリュセの笑顔を思い出せば、自然と不安も解消されていた。





 気を取り直して応接室に向かえば、既に父が待っていた。
 茶髪に茶色の瞳の平凡な容姿だが、頭が切れる男──ジャスティン・ライトニング。


 私のせいで最愛の妻と離縁することになった、哀れな人だ。











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