婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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シュヴァリエ

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 疲れて眠ってしまったリュセを抱き上げ、部屋に連れて行く。
 何日も前から婚活パーティーの準備をしていたらしく、寝不足だったようだ。

 今回のパーティーの形式は、リュセが提案した少し変わったものだった。
 招待された客は、全員参加している。
 なにせ、国一番の美人であり、高嶺の花であるリュセの婚約者を決めるためのパーティーだ。

 既に相手が決まっている者ですら、招待状を求めて奔走するくらい注目されていた。
 招待状が届いた当初は、参加するつもりはなかった私ですら、リュセの姿を見たいがために足を運んでいた。

 成長したリュセを、遠くから一目見れたならそれでいい。

 そんな不純な気持ちで参加を決めたのだが……。
 年齢もあるが、明らかに場違いだった。

 だが、今は勇気を出してよかったと心から思いながら、リュセを寝台に寝かせる。
 去ろうとするが、リュセの手は私の服の袖を掴んでいた。
 離れたくないと言われているようで、こんなことをされてしまうと、私は朝までリュセの傍にいてしまいそうになる。

 実際に、三年前は一度として帰れたことはないのだが……。

 今は婚約の約束をした仲ではあるし、リュセの傍にいてもいいだろう。
 そう自分に言い聞かせた私は、愛らしい寝顔を眺めていた。
 見舞いに来ていた過去に戻ったような感覚になるが、私の心はあの時よりも断然温かい……。

 雪が降るように、ゆっくりと空から舞い降りたリュセ。
 目撃者は大勢いたが、その中でも私のもとへ落ちて来た時のことは、今も脳裏に焼き付いている。

 
 小さくノックの音がして振り返れば、エルヴィスさんが待っていた。

「シュヴァリエ様。公爵に会いに行こう。婚約するなら早い方がいいだろう?」
「……はい」
「ククッ。今頃、腰を抜かしているんじゃないか? どうせ噂になっているだろう」

 にたりと笑ったエルヴィスさんの背後には、親指を立てるオースティンさんもいた。
 待機している使用人たちにリュセを任せた私は、静かに部屋を後にする。


「さすがにコレは見せられなかったな」

 そう言って苦笑いするエルヴィスさんが手にしているのは、三年前にリュセが着ていた服と荷物だ。
 着古してはいるものの、見たこともない素材。
 飾り気がなくて着脱しやすいそうだが、リュセにしか似合わないだろう。

 そして肩から下げるタイプの小さな鞄には、薄い小型の箱が入っていた。
 ミラジュー王国にはない精密機器。
 リュセが異世界人だと証明するものだ。
 今は起動することはないが、そこには幼い頃のリュセの姿絵があったそうだ。

「あの時は本当にびっくりした。心が穏やかになるようなオルゴールの音が鳴ってさ……。リュセの絵が映し出されたんだ。それも、一緒にいるのがみんな揃いも揃って不細工で……。リュセは知らない人だって言っていたが、きっと異世界にいるリュセの家族だろう。全然似てなかったんだけどさ、今はなんとなくそう思う……」

 家族を見るような目ではなかったから気付かなかったそうだが、今思い返せば、リュセは寂しそうな目をしていたようにも見えたと語ったエルヴィスさんは、複雑な表情を浮かべていた。

「いつかリュセに渡すために、大切に保管していたんですね」
「ああ。だが、絵が動き出した時には、驚きすぎてぶん投げそうになったけどな? 異世界人ってのは、やっぱりスゲェよ」

 ニッと笑ったエルヴィスさんの言いたいことを察した私は、力強く頷いていた。





 彼らと共にライトニング公爵邸に行けば、招かれざる客が待っていた。

「遅いっ!! ブサイクの分際で僕を待たせるなんて、何様のつもり?!」

 唾を撒き散らす不遜な態度。
 私がこの世で一番嫌悪する相手。
 元婚約者のミイルズ・ブレイクだった。









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